私まだ使えます‼︎頑張りますから‼︎だからどうか、捨てないでください。

ベームズ

影薄少女。

「だれもこっちみない。」


私は今、クラスのみんなから、まるでいない人みたいに無視されている。



ついこの間までみんな、私のこと可愛い可愛いって言ってくれてたのに、


突然私のこと、まるで見えないみたいに相手してくれなくなったし、みんな揃って私のことを無視するようになった。


なんでだろう。



考えてみる。



たしか、前までは、別の子が今の私みたいにみんなに無視されていて、可哀想に思って私からその子に話しかけたけたんだっけ、

それで、私の柄が綺麗って言ってくれたから柄をあげたんだ。


すると、


その子は次の日から学校来なくなったし、

その日から私は無視されるようになった。


……なるほど、


考えるまでもなかったようだ。


「……無視されるのって、思ったよりキツイな〜……」


学校に居場所がなくなった私は、

一人町へ出て、私のこと拾ってくれる人を待っている。


けど不思議。


だれも私のこと見えないみたいに、何もすることなく通り過ぎていく。


行き交う人々は皆、私より綺麗なコを連れていたり、私の方がマシなんじゃないかと思うほどにボロいコを連れていたりする。


後者にすら無視されるのはなんだか悔しい。


「冷たいな……」


今は6月の後半。


梅雨の季節だ。


シトシトと雨が降る町は、一人で座り込む私には優しくない。

なんだか、町にまでいない子みたいに扱われているみたいで、少し傷つく。



拾ってくれたら、何でもするつもりなのに、残念。


「……な〜んて。暇だな〜……」


たしかに、今なら一年で一番役に立つ自信はあるが、何でもできるほど、器用ではない。



「……誰にも見向きもされないなんて、私はそこらのゴミ以下ね……」


ゴミ以下になった私には、誰も見向きもしてくれないってことか。



みんな、もう相手がいるみたいだし、私はこのまま、誰にも見向きされないまま、朽ちて壊れるのを待つだけなのかな……


諦めて目を閉じ、そっと意識を手離そうとした。


その時。


「おい、おまえ、」



「えっ⁉︎」


無愛想に荒い声でこちらに向けて話しかける男の人の声がした。

思わず目を開けて、声がした方に顔を向けてしまう。

ポーッとする意識の中、ゆっくりと動いている私のことに苛立ったらしいその人は、


「おい、無視する気か?そっちがその気ならこっちもやる気だぞ?」


……間違いない


町も、町の人も、私には優しくないけど、そんな私に話掛けてくれる人が現れたのだ。



「おい……」


「この子、死にかけてる」


その人の傍には、豚マスクに赤いレインコートを着た、私と同い年くらいの女の子が。


その子に言われて私が死にかけてることに気がついたらしいその人は、慌ててしゃがんで私の顔を覗き込んでくる。


その顔は、どうやら今の雨に降られたらしい、びしょ濡れだ。


「おいまじか⁉︎まだ綺麗だろ⁈おいお前‼︎まだくたばるのは早いぞ、少なくとももう少し、役に立ってもらうからな」


死ぬならその後にしろ……


と、なかなか理不尽なことを言い散らしたその人は、


言うだけ言うと、私の腕を強引に掴んで、私をこの薄情な場所から連れ出してくれた。


「綺麗なんて……言ってくれた人……久しぶり」


つい、声に出してしまう私。

自分の人生を諦めて、自暴自棄に陥っていた私は、口もやけ気味に軽くなっていたみたいだ。

男の人には少し嫌味に聞こえてしまったらしい、少し不機嫌気味になり、


「黙れ、俺は物に対する評価は平等にする男だ。綺麗なものは綺麗だと言うし、ゴミはゴミだと言う」


頬が赤くなってるのを見ると、照れているみたいだ。


だから私は、もう少しだけ甘えてみる。



「私は……こんな私だけど……まだゴミじゃない?」

そう言う私の声は、その先の答えがわかっているから聞いたのに、もしかしたら勘違いかもしれないという、一連の不安からか、


この人に救われたいという、安心感からか、絞り出すかのように、震えていた。


そんな私の質問に、その人は、当たり前の事を聞くなとでも言いたげに、

「お前はまだゴミじゃない‼︎急に降ってきやがって困ってたんだ‼︎たとえゴミだと言っても使ってやるから覚悟しやがれ‼︎」


と、吐き捨てた、


「そう……」


こんな言い草だけど、この人は私の求める答えをくれた。


「ありがと」


なら、もう少しだけ、この人の為に生きよう……


そう思った瞬間だった。


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