第10話 真実の愛

 朝、ノンジがテントで目を覚ますと、パパはまだ眠っていた。


「パパ」


 そう呟くと、ステワニパパは小さく呻き、うっすらと目を開いた。


「……ん?」


 ノンジは焦りを悟られないように穏やかな口調で挨拶する。


「おはよう」

「おはよう。君は、あれ?」

「どうしたの? パパ」


 ステワニパパは起き上がり首を傾げた。


「いや、今一瞬記憶が混乱して、ノンジ君に見間違えたよ。でも、その本があるならお前はノンジ君じゃあないな」

「何をおかしなことを言っているの」

「いや、すまない。寝起きで頭が働かないようだ」


 パパは言いながら辺りを見回し、異変に気付く。


「あれ? そう言えばノンジ君はどこに?」

「今朝早くにノンジのお父さんが来て、ノンジを連れて行っちゃったんだ」

「彼のお父さん、帰ってきたのか。良かったなあ」

「急にいなくなったのは、仕事の都合でどうしても行かなきゃいけない所があって、それをノンジに言いそびれていたんだって。それで、今しがたようやく仕事が一区切りついたから戻ってきたんだけど、すぐに引っ越さなければいけなくて、ノンジを迎えに来たんだって」

「そうなのか。大変だな」

「パパが寝てたから、代わりにお礼を言っておいてと頼まれたよ。ノンジも、キャンプすごく楽しかったって」

「それは良かった。でもこれから寂しくなるな。彼がいないと」

「大丈夫。僕にはパパが居るから」


 微笑むノンジの頭にパパは手を乗せて優しく撫でた。


 ああ、愛されている。


 ノンジは大人になるまでこの愛を受け続ける事が出来るのだ。その幸福を考えると胸がいっぱいになった。

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