第32話 昼休み探検隊。

 急募。有意義な昼休み時間の過ごし方。


 考えつく有意義な昼休みというのは、美味しくご飯を食べることから始まる。

 しかし、それができない場合どうするべきなのか。

 誰か教えて下さい……。


 ……てか、事実上教室を追い出され、知らない女子にビンタされた時点で有意義ではないのでは?


 せめて普通に過ごしたいが、お弁当だけでなく財布や携帯電話も教室にあるなんて詰みゲーだ。

 もう行く場所もない。どうしよう。


 仕方なく、行く宛もなく、適当に歩く。

 やはり困ったときは適当に歩いてみるものである。



 考えてみると、普段は教室でお弁当を食べ、その後は読書か寝たフリをし過ごすため、こうして昼休みに校内を歩き回るのは初めてだ。

 まぁ、昼休みに教室を追い出されるのもビンタされるのも初めてだけど。


 改めて見てみるとこの学校は普通だなと思う。

 どこにでもありそうな特別変わったことのない校舎の作りに、イベントもよくあるものばかり。


 家から近いということしか良いところがない気がするが、それが一番大事なのではないのだろうか。



 そうこうしているうちに、走行しているうちに、なんだかワクワクしてきたのがわかった。


 こうやって一人での校内探検も青春っぽさがあるからだ。


 せっかくなら普段行ったことのない場所に行ってみようという気になった為、まずは屋上を目指すことにした。


 屋上こそ校内一番の青春スポットだろう。


 もしも良い感じの場所だったら、明日から昼休みはそこで過ごすことにしよう。

 そうすれば誰にも何も邪魔されることはない。



 そして一人、屋上へ続く階段を登っていく。


 階段を登るという行為は、先程の事件を思い出させるのに最適だった。


 柏木悠子。


 彼女はどうしてあんなに怒っていたのだろうか。

 普段から不機嫌なイメージだが、今日は特に酷かった。

 ぶっ殺すとまで言われた。


 もしかすると彼女はツンデレなのかもしれない。


 もしくは極度に嫌われているか。

 だとしたら嫌われる理由がわからない。


 ならやはりツンデレなのだろう。いや、ツンツンデレなのだろう。いやいや、ツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンツンデレくらいかもしれない。


 ……それはもはや嫌われているということだ。



 自分なりの解釈が自分都合でしかなくなりかけたが、なんとか正気取り戻し答えを出したころ、屋上までの道のりは階段を折り返すのみとなっていた。


 あと一歩で折り返し地点の踊り場に上がれるというところで、進むべき道の先から声が聞こえてきた。

 つまり屋上の扉の前に人がいるということだ。


 まずい。


 まだ誰がいるか見てはいないが、こういう所にいる人は大体ヤンキーかギャルの陽キャだ。


 経験上、陰キャは昼休みに教室から出ない。

 その最たる例が自分自身なのだから。



 困った困った困ったぞ。


「陰キャがこんなとこ来てんじゃねーよ!」とか。

「キモ!」とか。

「ここを通るなら通行料百万円になりまーす!!」とか。

「キショ!」とか。

 言われるかもしれない。


 しかし、他に行く場所もない。

 それにすぐどこかへ移動してくれるかもしれない。


 なので、ひとまずその場に待機することにした。

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俺も青春がしたい。 あたまおかし @atamaokashi

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