第15話

何処でも、良かった

誰も知らない場所で2人だけ

他には何もいらない


空が明るみ出した頃、

隣に愛しい人がいるのが嬉しくて、しばらく、見つめてた


気持ちよさそうに眠る彼の唇を人差し指でそっとなぞった


「ぷっ、擽ったい、そんな見るなよ」


「え?起きてたの?」


「ハハハハぁー、起きてたよ」


「やだぁ、もう」


恥ずかしくてシーツに潜った私を彼はそのまま抱きしめた


「薫に食われるかと思ったよ」


「そんなこと、しないもん」


「だなっ、食うのは俺かな」


「あっ、そうだ!」

身を乗り出した彼の身体を制止した


「ずるいなぁー、誤魔化すなよ」


「ンンッ」

唇を塞がれたけど胸を叩いて押し返した



「裕太のお誕生日、12月だよね?」


「何だよ、そんなことかよ」


「そんなこと、じゃないわよ」


「そうだよ。去年、薫に気持ちを話せた夜の前日だったんだ。

俺にとっては1日遅れの最高のプレゼントだったよ」


「プレゼントって私?」


「そういうこと」


「今年はちゃんとお祝いしよ」


「してくれんの?」


「もちろん!」


「じゃ、とりあえず…」

「やっ…んーっ…」


再び抱き合った私達は気がつくとまた、眠っていた


そして、

遅い朝食をすませ、部屋を出ようとした時、

彼が焦ったように後ろから抱きしめ、弱々しい声で言った




「薫……このまま…2人で何処か…行ってしまいたい」



心が震えた



「裕太……

ごめんね、ごめん…ごめんなさい」


向きを変えて彼の胸に額を押し付けて言った


「裕太が普通の人と恋愛してれば、結婚して、幸せになってたのに。

私があなたの人生を狂わせたのかもしれないね」


「薫、俺は人生狂ったなんて、ただの一度も思ったことない。

俺が薫のことを勝手に好きになっただけだ」


涙を溜めて睨むように言った彼に背伸びしてキスをした


「俺の方こそ、ごめん。

こんなんじゃ、薫のことを守れないよな。

……帰ろう」



私の手をしっかりと握り歩くあなたの姿を斜め後ろから見上げてると、

私はこの人をほんとに幸せにしてるのだろうか?…と辛かった


包まれた大きな手をグッと握り返してた

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