第14話

彼と出会って2回目の夏休み


夜、いつもの時間に電話が鳴った。

こんなことあったんだぁとか、

昨日、何食べたの?とか

他愛ない話。

…けど、内容なんてどうでも良かった

声が聞きたかっただけ。


「去年、裕太、熱出したんだよね」

「もう、1年かぁ」

「ねぇねえ、あの時、裕太は私のことどう思ってたの?」

「べつにぃー」

「ふーん、そうなの?私はもう、好きだったかも」

「俺モテるからなぁ」

「ムカつくぅ、大事なこと言おうと思ったのにどうしよっかなぁー」

「何なに?」

「聞きたい?」

「まぁ、一応」

「一応ー?素直じゃないなぁ。

じゃ、一応言っとくね。

来週、美香、おばあちゃんと一緒に静岡の親戚の家に1週間行くの。

毎年恒例でね、向こうに同じ年頃のお友達もいるし、楽しみにしてる」

「そっかぁー」

「うん、会いたいー?」

「何だよ、今日はやたら絡むな」

「だって、裕太あんまり自分から会いたいーなんて言わないんだもん」

「そんなもん、いっつも思ってるわ」

「そうなのー?」

「いや、そうでも…ないかな

そうでもないことも…ないか」

「なぁーにモゴモゴ言ってるのよ」

「あーー、だから、すっげぇ、会いたいんだって」

「フフフ、私も会いたいよ」

「っんだよ、

じゃあ、どっか行こうか」

「何処に?」

「それは…任しとけって」



私達は子供のようにはしゃいで夏の計画をたてた


彼と初めての旅行

いつものように待ち合わせて出掛けた


でも、いつもと違うのは少し車を走らせたところで、彼が運転席、私が助手席に座ったこと


世の中の恋人が当たり前のようにしていることが私達にとってはすべてが新鮮で一つ一つが嬉しかった


海沿いのコテージに着く頃には日も暮れていた


波の音が聞こえるだけ

誰もいない

2人しか…



「薫、何突っ立ってんの?早くおいで」


「あっ、うん」




不安そうな顔をしてる薫の両手首を引っ張って膝の上に横向きに座らせた


「恥ずかしいよ」


彼女が首に手を回して顔を隠すように抱きついた。

鼻先が頰にあたって擽ったい



「照れてんの?耳真っ赤だよ」


「もうー、言わないで」


「なぁ、顔上げて」

「いやっ」

「なぁって」



回した手に力を入れて余計に見えないように抱きついてくる彼女



「ふーん、そうくるか」

彼女をそのまま抱き上げてベッドに下ろした


「…薫」

まだ、恥ずかしそうに目をそらす



「俺…見てよ」





彼の方をゆっくり見ると優しく微笑んで私の頰を撫でた

喉の奥が熱くなる。


裕太はTシャツを脱ぎ捨て逞しい腕で私を包み込んだ

汗ばんだ肌が唇に触れ、トクントクンと少し早くなる鼓動が響く



「俺…薫を抱く時、たまらなく幸せなんだ。けど、壊してしまいそうで怖くなる時があるんだ」


「裕太…」


「でも、それって、すごくすごく大事だからなんだって、思うんだ」


抱きしめた腕を緩め、顔の横に肘を置いて囁くように彼が言った



「薫……離さないから」



言葉を発した途端に重なった唇、

いつの間にか私も何も纏わない姿になり、彼の指と唇が全身を滑るように動く



「裕太…離さないでね。

ずっと…ずっと…」




三日月しか見ていない2人だけの夜


お互いの思いを通わせるように激しく求め合った




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