割れる

 脱衣所から出てきた僕に、アオイさんはにこにことして話しかけてくる。

「カケルさんカケルさん」

「どうしましたか」

「眼鏡って、体重をかけると割れてしまいますよね?」

「そうですね」

「だから愛し合う時も、いくら興奮したからって私に体重をあんまりかけちゃだめですよ? まあ、私を壊れるほど愛したいのであれば、受け入れますけど」

 またエロ方面の話だ。

 何度も繰り返されると嫌気がさしてくる。

「あの、アオイさん。どうしてそういう話ばかりするんですか。正直そういうの繰り返されると嫌な気分になるんですけど」

 するとアオイさんは、ごめんなさい、と謝った。

「眼鏡にはフレームがあります。ですから私は、型にはまるしかない女なんです」

「思ったより深刻な理由だったんですね……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る