第17話 アサギリ

シンフジサービスエリアで1泊した。

今日は朝から結界維持施設でのメンテナンス作業だ。

ミオさんの報告通り、下り線に故障個所が見つかった。

現場はフジ川を渡って少し行った長いトンネルの中だ。

元の世界で異常に巻き込まれた辺りだな。

ハイウェイの下り線を通行止めにして工事車両で現場に向かう。

ここでも現場では20分ぐらいで作業を終えることができた。

さてこのまま下り線をシンシミズインターチェンジまで行く。

逆走するというわけにはいかないからね。

サービスエリアでUターンしてシンフジサービスエリアに戻ってきた。

結界維持施設で確認をして作業終了。

思った通り履歴から故障が起きたのは私がこちらに転移した災害が起きたと思われる時刻だった。

仕事が終わって戻ってくるとナツさんとユミさんは10時のおやつを食べていた。

餅入りの最中だ。


「おいしそうだね」

「はい、タカシさんの分」

「ありがとう」


私も貰った。

渋いお茶に合うね。

では出発するか。

ジャンクションを使って北方向のハイウェイへ入る。


「このニシフジハイウェイはトウメイハイウェイのフジインターチェンジとチュウオウハイウェイのミナミコウフを結んでいます。その途中に先程のシントウメイハイウェイのシンフジインターチェンジがあるわけです。車線は片側2車線ずつでモトスパーキングエリアまで続いておりそこまでは側道もあります。モトスサービスエリアからミナミコウフインターチェンジまでは片側1車線ずつでトンネルが多く側道も途切れ途切れです。途中のカミクパーキングエリアの近くにある集落は街道がなくシミズパーキングエリアの近くの集落と似たような状態です」


ミナミコウフって元の世界の甲府南かな。

カミクは上九一色か。

やはり町に出るのが大変な集落の交通手段を考えないといけないな。


フジノミヤパーキングエリアではミオさんの監察業務の後、昼食にした。


「ここでは『焼きそば』が名物ですよ」


ということで5人で『焼きそば』を食べる。

肉かすが入っているね。

前の世界にも富士宮に同じものがあったな。


食事を終え、再びハイウェイを北上。

牧場が見えてきた。


「あの牧場の四隅にある塔で牧場の副結界を維持しています」

「壊れたら大変ですね」

「はい、周囲には魔物が多いのですぐに家畜が餌食になってしまいます。ここでも特別の許可で畜舎と住居はハイウェイの副結界の中に建てられています」


見えるところに魔物が姿を現した。

しかし、家畜は何の反応も示さない。


「家畜も魔物の姿に慣れてきています。魔物の姿を見てもこちらに来れないことが分かっているので魔物を無視します。いざという時に困るのですが」



緩やかな登りも終わりいくつかのアップダウンを越えるとアサギリサービスエリアに到着した。

ここの集落も副結界の中にある。

その外側には副結界の塔で守られたいくつもの牧場が広がっている。


「のどかな風景ね」

「気持ちいがいいです」

「お二人ともお楽しみはこれからですよ」


メンテナンス作業の前にカフェに入った。

乳製品を使ったスイーツがいっぱいある。

ナツさんとユミさん、目がマジなのですけど。

お茶とスイーツを楽しんで、


「それでは私たちは作業を行います。皆さんはゆっくりとしてください」

「「ふぁーい」」


ナツさんもユミさんもケーキを口に入れたまま返事をしない。

あなた方はお姫様なのですから。


「タカシさんと一緒にいることで肩が力が抜けてきたのでしょう。公式の場所でなければよろしいのではないでしょうか」

「そうですね」


私とミオさんは少しだけスイーツを楽しんでから結界維持設備の向かったよ。

ここでも故障個所を見つけた。

場所はモトスパーキングエリアとカミクパーキングエリアの間だ。

ミオさんに結界維持設備に残ってもらい工事車両で作業員とともに現場に向かう。

北向きのハイウェイはモトスパーキングエリアとカミクパーキングエリアの間を通行止めにした。

それほど時間もかからず現場に到着することができた。

この世界に来てなだらかの地形を多く見てきたけどここは浸食でできた谷が険しい。

現場の作業も順調に終了し、カミクパーキングエリアに向かった。

パーキングエリアに着くと何か慌ただしいのに気が付いた。


「何があったのですか?」

「あ、代表のタカシ様ですね。集落の近くで魔物に襲われた住民がおり、怪我人が出て治療の薬を求めに来ています。在庫を全て渡しましたが代金が不足しているようです」

「わかりました。私も外部ゾーンに行きます」

何ができるかわからないけど、そのままにしてはおけないよ。



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