第14話 出発

朝、インターネットで私のいた世界の記事を調べていて気が付いた。


「ない」


私が巻き込まれた災害の記事が存在しなかった。

災害が事故に訂正されたのではない。

初めから災害がなかった。

使者はいなかったが大きな事故があったということになっている。

インターネットで検索すれば訂正される前の災害を記した記事がヒットするはずだ。

それも出てこない。

立体映像の賢者様に見せられたニュースの映像も交通事故の映像になっている。

全く不自然さを感じない。

ETCの支払い記録を見ると手前のインターチェンジで下りた領収書を見つけることができた。

結界維持設備のメンテナンスをしていて感じたのは魔法ってコンピュータプログラムと似ているということだ。

これなら私でも魔道具を作れるのではないかという考えてしまった。

事象を操るプログラムが魔法の一部ではないか。

プログラムは書き換えができる。

そして・・・・・

「過去の事象の書き換え」・・・・・そんな言葉が頭をよぎる。

人々の記憶もすべて書き換えられているのか?

『賢者システム』とその関係機関の強大な力に恐ろしいものを感じる。

まあ、この中で生きていかなければならないのが今の私だ。

あまり波風は立てない方がいいだろう。

呼びたければ「へたれ」と呼んでくれ。


気を取り直して朝食に向かうことにした。

王女様二人はリビングにいた。

ユミさんも黙っていれば優雅だなあ。


「おはようございます」

「「おはようございます」」

「よく寝れましたか」

「はい、心地よい寝具でした」

「それはよかった」


一緒に食堂に向かった。

食堂ではミオさんとハルさんが待っていた。

私とナツさんはアメリカンブレックファースト。

ユミさんとミオさんとハルさんは和朝食。

今朝も美味しくいただきました。


朝食後荷物をまとめてシズオカサービスエリアを出発する。

出発した後忘れ物がないか不安になるのは性分だから仕方がない。

車は東に向かう。

運転はハルさんがしてくれている。

私は助手席に座らせてもらった。

少し大きな橋を渡りトンネルをいくつか抜けまた大きな橋を渡るとシンシズオカインターチェンジに着いた。

ここにはシンシズオカパーキングエリアがある。

ミオさんが事務所に行き書類の確認をしている。

彼女には『賢者システム』施設監察官という役職の仕事があるらしい。

車から降りてパーキングエリアの外を見ると南には街道沿いに集落があるのが確認できた。

川向こうの山の上から熊のような動物がこちらを見ている。


「牙熊という魔獣ですね。力が強いので厄介です」

「ここは大丈夫なのですよね」

「はい、心配ありません」


ハルさんに訊いたが距離も離れているから当たり前のことだよね。

ミオさんの業務も終わり、さらに車は東へ。

いくつかのトンネルを潜り

シンシミズジャンクションから南に向かう。

イハラインターチェンジのイハラパーキングエリアでミオさんの監察業務がある。


「すみませんね。1つ1つ止まることになって」

「いいえ、ミオさんはお仕事なのですから」

「次ではタカシさんにもメンテナンスのお仕事がありますから」

「はい」


イハラパーキングエリアを出てシミズジャンクションで西に向かう。

シミズインターチェンジに到着した。

10時40分だ。

ここにあるのはシミズサービスエリア。

結界維持設備もある。

ミオさんについて結界維持設備へ行く。

ナツさんとユミさんとハルさんにはカフェで休憩してもらうことにした。


何重ものセキュリティを通過してここでは地下200mにある結界維持設備へとエレベータで下りていく。

ここの結界維持設備は賢者のハイウェイだけでなくシミズ港からの外洋に向かう航路用副結界や岸から100km以内の海に強い魔物が近づかないようにしている結界も管理している。

簡単に挨拶をして管理者席に座りメンテナンス作業を行う。

ミオさんがいなくても一人で十分できるようになった。

途中からミオさんには監察業務に行ってもらった。

部品交換もなく無事にメンテナンスを終えることができた。

もし航路や海の結界に問題があり海の中での修理になると専用の潜水艇が出動するらしい。

ここは航路は海の結界があることから6人で管理しているということだ。

シズオカサービスエリアの倍だね。

ご苦労様。

作業が終わり施設のスタッフに挨拶をしてカフェに行った。

ちょうどミオさんも業務を終えた所だった。

時刻は12時10分。

昼食は自由都市国家シミズの首都シミズでということになった。

魚が美味しいらしいので楽しみだ。

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