第弐話「見知らぬ天井」

 1話とセットで考えてみるものの、実は完全に記憶頼りなので、さすがに本編を見たくなってきた。どうしようかなあ、一度本編を見たほうがいいだろうか、でもどちらかと言えばいまだに記憶に残ってる部分だけで語ったほうが面白いと思う。


 とはいうものの完全に忘れてる回もあるので、そこは見直したほうがいいだろうなあ。


 一話と言えば「にげちゃだめだ」というフレーズが有名だが。その前の一連の流れの方が大切で、どう考えても、ゲンドウがくそ親父である。理不尽な父親の象徴、部活動の先輩、会社の上司、そういうもののすべてのメタファーではないか。

 おぼれげな記憶で行くと


シ「このロボットに乗って、あのへんな奴と戦えっていうのかよ、僕に死ねっていうのかよ」

ゲ「そうだ、お前以外には無理だからな」

シ「ひどいよ、父さんは僕がいらないんじゃなかったの」

ゲ「必要だからよんだまでだ、できないのならば帰れ!」


 そして担架で、包帯でぐるぐる巻きにされた綾波レイが登場する。

 そのとき、建物が激しく揺れて、担架からレイが落ちる。シンジはそれを受け止めて、両腕の中で、レイが苦しそうに呻く。

 そして、こんな女の子が代わりにエヴァに乗るというので、仕方なくシンジがエヴァに乗ることになる。


 ―――ひでえ。

 逃げちゃダメとかいうより、この状況で断れるわけがない。詐欺師の手法とかブラック企業の手法である。断れない状況を作って自ら「乗ります」と宣言させるとか、極悪非道と言わざるを得ない。


 かわいそうだよお、シンジ君。むしろ逃げていいわ。

 むしろなぜ逃げない。

 これが現代アニメなら逃げる場面だよね。だけど当時の風潮としては理不尽なことに対して「逃げない」ことが美徳であった。

 それが20年たって「逃げるは恥だが役に立つ」にかわっていくのである。


 それにしてもこういう断らせないように選択をさせる手法って社会に満ち溢れてるよね。

 多いのが時間制限を用いた手法で、昔よくあった手(今もあるのかな)なんだけど、不動産屋が、顧客が入居を選んで悩んでる際に、違うスタッフが電話を受けて、同じ部屋の入居が決まりそうだとかいう偽情報を聞こえるように話して、客を焦らせるのである。

 今決めなければ、もう手に入らないという、強制的な一択をさせるってやつ。


 ただこのシンジVSゲンドウの構図で俺が感じたのは、「親による理不尽な強制一択」である。

 うちの親父なんて言うのは、まさにそれで、「○○高校以外はダメ。そうじゃなければ、自分で生活しろ!」

 それはもうその高校受けるしかないわけだ。

 実際どこまで本気だったか定かではないが、何とおれは私立高校を受験させてもらっていないのである。(落ちたらどうするつもりだったんだろうか)


 ここのシンジとゲンドウの対峙は、大人による子どもへの理不尽さを直接的に表現してる、メタファーですらない、まんまの表現だ。

 そしていま俺がこれを見ると、どうしても就職氷河期の俺ら世代が受ける理不尽さをゲンドウに重ねてしまうのである。おのれゲンドウめ、団塊め、バブル世代め!


 そしてろくなレクチャーもされず、シンジは「動くことだけを考えて」とか言われて、使徒に対峙させられるのだ。

 これってバブル世代が「ろくな教育もせずに」就職氷河期世代を、ただ馬鹿にして、会社で即戦力として使おうとしていたことに似ているな。

 とはいえまだエヴァが流れていた時に就職氷河期は訪れてなく、まさにこれから日本経済が闇に向かおうとする入り口の年だったのだ。

 

 そしてバブルと言えばジュリアナを思い出す人が多いだろうが、(今でこそバブリーダンスになったが)ジュリアナはバブル崩壊後の2,3年に流行ったものである。バブルの余熱によって最後に踊り散らして、目の前の現実から目を背ける行為、それこそがジュリアナあたりの狂騒曲の正体だった。


 エヴァの話に戻そう。

 一話ってどこで終わるのか忘れたんだけど、あれだっけ、サキエルに特攻するところで終わるんだっけ。


 そして、衝撃の二話。

 まさかの戦闘シーンの続きを書かずに、病院スタートする。

 そして

「しらない天井だ」って……シンジ君がぼそりと漏らすんだけど。


 なにそんな酔った勢いでやっちゃった女子大生みたいな演出してんのよ。ハイロック少年はわからなかったけど、まさにそれじゃんいま考えたら。


 新人女子大生が、大学の新歓コンパ(使徒戦)にほぼ強制で参加させられた結果、暴走して、気づいたら知らない部屋で、知らない男の隣で寝ていましたみたいな感じだな。

 全く社会ってやつは無知な人間に対してさも無慈悲なものかよ。


 そしてこの肝心な部分をすっ飛ばして、後のシーンを書くという手法を実は庵野は再び繰り返してることに気づいた。

 そう、破→Q である。観客はみな破の続きを楽しみにしたのに、そこを思い切りすっ飛ばしてしまったのである。ということなので次作は、その間を書くのだと思うのですが、どうですかね。


 そしてそんな衝撃の手法をもちろん当時のハイロック少年は初めて見たので、最初戸惑いながらも、またしてもとんでもないものを見せられたなあと思うのでした。


追記


うわーん、見直したら記憶と全然違うよー(´`:)

てっきり病院からスタートだと思ってたわ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る