最終章 もしも君が織姫だったとして
最終章 もしも君が織姫だったとして 1
「おにぃ。朝。起きてってば。早く」
「……んぁ」
乱暴に身体を
「おにぃ、なんか
「夢……?」
妹の言う
夢か。もしかして、夢見が悪いせいでこんなにも
思い出そうとするけれど、するすると
夢の内容が思い出せない。
「いやむしろ、いい夢を見ていたような……?」
「あっそ」
妹は
「……あ」
駅に向かって歩いていると、見知った背中を見かけてつい声が
まっすぐに
朝から彼女の姿を見ることができて、何だか得した気分になってしまう。といっても、今は同じクラスだから教室で見られるし、今も別に話すわけじゃないんだけども。
彼女とすれ
なぜか
改札を
前を歩いていた
定期。
あれはいつだったか。最近、そう、つい最近のことだ。
それでそのあと──。
そのあと……?
思い出せない。そんなこと、本当にあったのだろうか。
……いや、多分なかっただろう。そんな
何だろう、この
そこでハッとなった。
……彼女にこの定期を返さないと。人の定期を
「山吹さんっ」
「青葉くん。ええと、どうかしたの?」
当然ながら、彼女は
「これ。定期。落としたよ」
「え? ……あ、本当だ。ごめん、ありがと」
笑みを
行き先が同じなのだから、いっしょに行ってもおかしくはないのだけれど、
昔は仲が良かったけれど、それも本当に昔のことだ。過去のことだ。
「……ん?」
そこで何だか、自分がとても
「きゃっ」
がたん、と電車が大きく
彼女は
「す、すみませんっ」
彼女は
似たようなことを、以前ほかのだれかとやらなかっただろうか。
「あ、あの……?」
いや、よくあることじゃないか。電車の中でだれかにぶつかられるなんて。
──ありがとぉ
──よかった、これはセーフなのね
……そのだれかは一体だれだ。
「…………」
いや、
電車から降り、通学路を歩いていく。すると、見知った背中を見つけた。立ち止まって動かない背中。その人は家の
「ほらほら、おいでおいでー? こわくないにゃあ。お姉ちゃんはこわくないでちゅよー。なでなでしてあげるからおいでー?」
「おー、よしよしよしよし。かわいいでちゅねー、素直な子はお姉ちゃん大好きでちゅよー。ほら、ここが気持ちいいにゃ? この辺を
相変わらず
「おはよう、つばさ」
「おー、
しかし、油断しきっていた
「ごめん、
「いや、いい。朝に
強く
つばさと並んで学校へ向かっていく。
「つばさは本当に
「おう。家に
「飼わないの?」
「うーん。おれが今飼ったとして、将来独り暮らしをしたら連れていくわけだろ。家に
「い、意外と
彼女の
そこで
つばさが自分の
「……なんだお前。気持ち悪いぞ」
見られていることに気が付くと、つばさはドン引きしながら
「痛い。
「何言ってんだお前。おれは園児か? どこの世界に
「ん……、いやまぁ、そうなんだけどさ」
そういう人がいてもおかしくは……、いや、おかしいか。
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