第3話.類洞なる運命との邂逅

俺たちが孤児院にきて1ヶ月が過ぎたある日。

みんなで朝食をとっていると、

「みんな少しいいかしら。実は今日、新しいお友達が来るの。

 みんな仲良くしてくだいね。」

〈俺は新しくやってくる仲間とうまくやっていけるだろうか〉

そんなことを考えながら周りを見回してみると、

ほかのみんなは慣れているようで、誰かな?男のかな?女の子かな?

といった声が聞こえている。

意外とよくあることなのかと思いながら俺は食事を続けた。


食事も終わり、食器を片づけて部屋に戻ろうとしていると、

仁さんが、少し時間あるか?と声をかけてきた。

特にすることはなかったので、ついて来いという仁さんについていくことにした。

天音も呼ぼうとしたが、2人だけで話がしたいというので、先に戻ってもらった。

何か文句を言っていたみたいだが、聞こえないふりをし、後についていった。

着いた場所は屋上だった。

「いきなりごめんな」

「特に何かあったわけではないので気にしないでください。」

ならよかった、と仁さんは言い、続けて何か言いたそうだが、言葉が出ないようだ。

おそらくは、今日やってくる仲間のことで話があるとは思うが、

なぜ俺に話があるのかわからなかったが、一旦話を聞いてみることにした。

「で、新しく来るやつがどうかしたんですか?」

「実は、今日来るやつらは、真人と天音と同じ兄弟らしい。」

兄弟か、なら意外と話が合うかもな。

「そうなんですか。でもなんで俺だけに教えてくれたんですか。

 今の内容だったら別に天音がいてもよかったと思うんですけど。」

「いや、たしかに今までのことなら天音にも教えてよかったんだがな...」

この先?

どういうことだ?まだ何かあるのか?

「新しく来る兄弟は何かあるんですか?」

「...その、なんていえばいいか」

「そこまで言ったんなら、最後まで行ってください!

 このままじゃもやもやして歓迎なんて出来ません!」

「そうだな、すまん。ここまで話したんだ、全部話そう。

 実は今日来る兄弟は、お前たちと同じ境遇の奴らなんだ。」

同じ境遇だって!?

それって、まさか...

「気付いたみたいだな。そう、その兄弟は親を魔族に殺されて、

 ここに来くるらしいんだ」

正直、驚いてどんな反応をすれば良いかわからなかった。

何故、そこまて驚いたかと言うと、孤児院にやってきた理由はいろいろあるが、

親を魔族に殺された奴は俺たち兄妹と仁さんだけだったからだ。

「仁さんが天音を呼ばなかったのは、まだあいつが立ち直れていない事を

 気づいてたんですね」

「まあな、俺もお前たちと同じだからな。でもお前には言っときたかったんだ」

「正直言うと、このことを俺一人で抱えるのはきつかったんだ」

「そうだったんですね。俺なんかでよければ頼ってください。

 何かできるわけではないけど、話すだけでも楽になると思いますから。」

「すまねーな。ありがとよ」

「で、これから俺はどうすればいいですか?」

「そうだな、何かするってわけじゃないが、そいつらはまだ立ち直れてないらしい、

 だからそこのとこ気を付けてやってくれるか?」

「そんなことぐらいでいいなら、任せてください!」

「おう!頼んだぜ!」


話を済ませ部屋に戻ると、

「私抜きにしていったい何の話だったのよ!」

と頬を膨らませて不満そうな顔をした天音が待っていた。

男同士の秘密だと誤魔化し、今日来るやつらが俺たちと同じ兄弟だと教えると、

ふーん、と興味のない返事をしていたが、顔を覗くと少しうれしそうだった。

俺が笑うと、なによ///、と顔を真っ赤にし照れていた。


夕方になり、噂の2人が到着したようで2人で顔を見に行くことにした。

俺はてっきり、男兄弟だと思っていたが、まさか兄と妹の兄弟で、

そこまで俺たちと同じなのかと少し驚いた。

兄貴のほうはなんだか機嫌が悪そうで、孤児院の子供たちはすこし怖がっていた。

そして妹のほうを見た瞬間、

「きれいだ」

まずいっ!つい声が出てしまった。

この言葉を聞いて天音が、

そうかしら、そこまででもないんじゃない。

なんて少しすねていた。

でも、本当にかわいいと思ってしまったんだから仕方がない。

黒く艶があり、腰まであるきれいな髪

深い憂いを湛えた蒼く美しい瞳

雪のように透き通った白い肌

その姿はとても儚げで、今にも消えてしまいそうなほど美しかった。

その子を見てから、ドキドキと胸の鼓動が早くなっていくのを感じた。

〈やばい。これってやっぱりあれか?一目惚れってやつか?

 こんな時どうすればいいんだ?天音に相談するか?

 いや、さすがに妹に相談するのは恥ずかしい。

 でもほかにあてがあるわけじゃないし...〉

そんなことを考えていると、後ろから突然仁さんが声をかけてきた。

「よう真人!天音!」

「うおっ、いきなり声をかけるのはやめてくださいよ、

 びっくりするじゃないですか!」

「すまんすまん、で、どおだった?兄貴は生意気な感じだったけど、

 妹のほうはかなりかわいかったとおもわないか?」

「そうですね、なんていえばいいか」

「そうかしら、確かにかわいいとは思うけど、そこまで絶賛するほどかしら?」

「なんだ、すねてるのか?心配するなよ、天音もあの子と同じくらいかわいいぜ。

 ただ、お前の魅力とあの子の魅力は別ってだけだよ」

「ふんっ!そういうことにしといてあげるわ///」

「なんだ照れたのか?ホントかわいいな」

「うるさい//黙れ///」


夕食時に2人の紹介があり、短い自己紹介があった。

「【神滅 秋也シンメツ シュウヤ】だ。」

「兄さん...あ、あの【奏恵カナエ】です。

 みなさんこれから宜しくお願いします。」

奏恵っていうのか、名前もかわいいな。

兄貴のほうは秋也っていうのか、仲よくして聴けたらいいな。

明日、話しかけてみよう。

そんなことを考えながら、眠りについた。

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