seasoning story~調味料物語

安里 新奈

調味料会の円卓会議

「ここに、2252回目となる調味料円卓会議を開く!」


今回の進行を担当する生真面目な性格の一味唐辛子が言った。


「今日はどんなどうでもいいお話をするんですか?」


腹黒い性格のみりんちゃんが、いつものように毒を吐きながら聞いた。


「正直どうでもいいんですけどー。ってかかったるいから帰っていい?」


「もう!グラニュー糖ちゃん!」


椅子をガタガタと揺らしながらそう言ったグラニュー糖に、隣に座っていた砂糖が小さく注意を入れた。


「姉貴は何でもかんでも硬いんだよ。そんなんだから取り出す時に固まっててイライラされるんだよ」


「自分がサラサラだからって酷いよぅ・・・」


「・・・そろそろ本題を話すぞ」


少しイライラしているのか一味唐辛子が怒気を孕ませた口調で喋り、静寂が生まれた。


「本日の議題は今後の調味料会を決める内容だ」


それを聞いてさっきとは違った、張り詰めた静寂が周囲を覆った。


「・・・では議題を発表する」


いつに無く重たい雰囲気の中で、一味唐辛子が言った。


「調味料会の中で頂点に立つべき調味料を決める」


その言葉で会場に大きなざわめきを起こした。


「ついにですか・・・」


「まぁ最近はずっと進行を交代制にしてたから必要性を感じなかったけどねぇ」


「しかし調味料会と言うくらいだ、会長の必要性は薄々感じていた」


「では会議の後、投票で調味料会の会長を決める!」


こうして調味料たちの絶対に負けられない戦いが始まった。


「こんなのは私一択だね!」


最初に声をあげたのは明るいのが取り柄の酢だった。


「私といえば中華よ!代表的なので酢豚とかによく使われるし、他にもピクルスとか漬物なんかにも使われるんだよ!」


そう言われると意外に酢の需要が多く、他の調味料は押し黙ってしまった。


そしてその気を逃さずにトドメの一言を言い放った。


「それに作者は餃子を食べる時に私だけで食べるのよ!」


作者が酢だけで餃子を食べるという、最強のカードを切り一気に酢のペースに飲まれるのかと思われた、その時だった。


「でも作者、餃子そんなに食べないじゃん」


「ぐはぁ!」


こうして酢は論破され、再び席に座った。


「そろそろ俺もアピールするかな」


そう言って立ち上がったのは五大調味料の一角を美担う、人呼んで「調味料界の俺様イケメン」の醤油だ。


「調味料と言ったらこの醤油サマ以外に誰がいるんだよ?」


「おっと、それは聞き捨てなりませんね」


「あ?俺に楯突くとはいい度胸だな」


そう言って立ち上がったのは、真正面に座っていた醤油の永遠のライバル。


醤油と同じく五大調味料の一角にして、人呼んで「調味料界のプリンス」の塩だ。


「別に楯突いていません。そもそも貴方なんて眼中にありませんから」


「俺の眼中にもねえから。お前なんて見てたら味が落ちるからな」


「味が落ちるなんて可哀想に・・・」


この二つの調味料が立ち上がったことによって、2人の戦いになった。


「お前との格の違いを教えてやるよ。一番人気のラーメンを知ってるか?」


しかしその答えを知っているであろう塩は取り乱さなかった。


「そうだよ!みんな大好きな醤油ラーメンさ!どっかの誰かさんよりも人気のな!」


そこ言葉に、塩こそはたじろがなかったものの投票における他の調味料への大きなアドバンテージになった。


「・・・ふっ」


「塩お前何笑ってるんだ?」


その塩の態度に、醤油はかなり苛立った。


「失礼、あまりにも話にならなくてな」


「てめぇもう一回言ってみろや!」


一触即発の雰囲気の中、塩も自分のアピールを始めた。


「醤油さんに本当の格の違いを教えてあげましょう。私は・・・大抵の料理に入ってます」


「「「「「なっ!?」」」」」


圧倒的だった。


醤油が自分と塩との差別化を狙ったが、塩は遥か先を行く「全ての調味料の頂点である証明」をしたのだった。


勝ち目がない。醤油もそして他の調味料までもがそう思った。


「・・・時間となった。これより投票を行う!」


そうして一人一人が隣の部屋にて投票をし、最も投票数が多い調味料が調味料会の会長となる。


こうして出席していた調味料全ての投票が終わった。


「・・・結果を発表する」


結果の発表は、今回完全な中立的立場にいた一味唐辛子だ。


「今回の投票は私を含めた欠席者2名以外の投票となるため反対や取り消しは行えない」


口上を述べた後、結果の発表になった。


「第2位からの発表となる、ちなみに2位は副会長、それより下は投票数順で会計、書記、庶務となる」


そう言い、一味唐辛子は3位より下の順位を張り出した。


3位は砂糖、4位に胡椒、5位に味噌と入っていたが、どの調味料も入っている票は少数だ。


「これで完全に俺たちの戦いだな」


「いいえ、私の一方的な勝ちなので戦いでも何でもありませんよ」


そして再び一味唐辛子が壇上に上がった。


「では第2位を発表する。・・・第2位!同率で塩と醤油!」


「「はぁ!?」」


思わず塩と醤油から塩と液体が飛び出した。


「おい一味!どういう事だ!」


「私は結果を言っただけだ。避難される覚えはないぞ」


「私たちより上がいるということですか・・・」


あまりの衝撃に塩は思わずフタをパカパカさせている。


「では発表に戻る。第1位!・・・マヨネーズ!」


「嘘だろ!?俺はあんなガキに負けたのか!?」


「・・・信じられません」


塩と醤油が他の調味料を見ると、調味料は口を揃えて言った。


「「「だって作者がマヨラーだし」」」


そうです。大抵のものはマヨネーズかければ美味しくなります。


「ちわーマヨネーズ遅れまし・・・あれ?みんなどうしたんすか?」


結論、マヨネーズマジ卍



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