6月28日 木曜日 日常の謎


 こんばんは。蒼山皆水です。

 今夜はT.M.Revolutionさんの『INVOKE -インヴォーク-』を聴きながら書いております。その声量がほしい……。


 本日は『日常の謎』についてお話します。

 日常の謎というのは、ミステリーの一部です。代表的な作品だと、米澤穂信さんの『氷菓』から始まる古典部シリーズ、三上延さんの『ビブリア古書堂の事件手帳』シリーズなどがありますね。


 よく、人の死なないミステリーなどと言い換えられます。その言葉の通り、ミステリーでありながら、殺人事件が起こったり、大きな館に閉じ込められたり、橋が切り落とされたり、雪が積もっていて足跡を付けずに逃走するのは不可能だったり……といった状況は出てきません。いや、出てくるのもあるかもしれないけど。


 コージーミステリーとも呼ばれます。少し定義が違ったりしますが……。こちらはイギリス発祥の呼称となっております。日本ではやはり日常の謎ですね。


 では日本でこれほどまでに広がっている日常の謎ですが、どのようにして流行ったのか。先駆者は直木賞作家の北村薫さんと言われています。『空飛ぶ馬』から始まる円紫さんと私シリーズで、日常の謎を日本中に広めたのですね。発売当時、私はまだこの世に存在していません。


 そして若竹七海さんや加納朋子さんらが続き、主に創元推理文庫で日常の謎が増えました。


 創元推理文庫! 一般的にはあまりメジャーではないレーベルですが、すごくいいですよ。今日はこの中から2つの日常の謎のシリーズについて紹介します。


 坂木司さんの引きこもり探偵シリーズ3部作。

『青空の卵』『仔羊の巣』『動物園の鳥』からなる、連作短編集です。坂木司さんは『和菓子のアン』シリーズで有名ですが、それだけじゃないんです!


 もしかすると、私が小説で初めて泣いた作品かもしれないです。引きこもった探偵が、ワトソン役の相棒から不思議な出来事を聞くだけで真相を推理する。いわゆる安楽椅子探偵ものですね。


 一つひとつの話も面白いんですけど、とにかく最後の最後が泣ける! ぜひ読んでみてください。


 米澤穂信さんの小市民シリーズ。

『春期限定いちごタルト事件』『夏期限定トロピカルパフェ事件』『秋期限定栗きんとん事件』が現在発売されています。


 冬期限定もそろそろ出るんじゃないかなぁ……と期待していますがどうでしょう。

 小市民を目指す小鳩くんと小佐内おさないさんのお話です。古典部シリーズもアニメ化したし、こっちももっと有名にな~れ! って3000年くらい前から思ってます。


 大崎梢さんや似鳥鶏さんについても書きたいのですが、とりあえずこんなところで。


 いや、でも人の死なないミステリーってしょぼくない? 殺人事件が起きないと盛り上がらないし……。なんて思う方もいらっしゃると思います。

 とんでもない! それは大きな間違いです!


 たしかに日常の謎では、殺人事件を扱うミステリーに比べて、規模は小さくなってしまいます。しかし、メリットもあるんです!

 では、日常の謎のメリットについて述べます。


 まずは動機の拡大。

 個人的にはこれが一番大きいメリットだと思います。殺人事件の動機って、何が思い浮かびますか? 物取り、口封じ、怨恨など……。いくつか出てくると思いますが、殺人ってハードルが高いんですよ。


 例えば「お前なんて一生独身だばーか」って言われたとき、その相手を殺しますか? 殺しませんよね。私はもしかすると殺してしまうかも……冗談です。


 しかし、日常の謎の場合。ちょっと腹いせに仕返しをしようとして、相手を困らせる、というようなストーリーができるのです。


 それだけではありません。殺人事件って、基本的に悲劇ですよね。悲しいですよね。日常の謎では、爽やかなミステリーを楽しむこともできるのです。


 売れない小説家に「あなたのファンです」というような手紙が届く。売れない小説家は書くのを諦めようとするが、そのファンレターを励みに頑張って書いてやがて売れ始める。しかし、手紙の差出人は不明。いったい誰が⁉ みたいな感じ。(辻村深月さんの某作品っぽい……)


 この場合、殺人でいう犯人が手紙の差出人となり、フーダニットとなる点は同じですが、悲劇ではないですよね。むしろ素敵な話です。後味も良いのではないでしょうか。


 それに、人が殺されてしまうミステリーは苦手だなぁという方も、日常の謎なら楽しめるかもしれないんです。これもかなり大きなメリットです。


 私も人の死なないミステリー長編を書いたときに、ミステリーは苦手だけどこの作品は楽しめた、というような感想をいただいて嬉しすぎて3回くらい昇天した経験があります。


 さらにさらに、時代の流れに乗れるというメリットもございます。

 通信機器やか科学捜査の発達で、殺人事件を扱ったミステリーがとてもやりにくくなりました。


 昔はちょっと山奥の館で電話線切れば外界との連絡が断てたのですが、今はそうはいきません。DNA鑑定もかなり精度が高くなっています。ミステリー作家さんはそこら辺のリアリティを出すのに苦労していることと思います。


 だから井上真偽さんや早坂吝さん、青崎有吾さんなど、殺人を扱った本格ミステリー書いてる方ってホントすごいなって思います。


 しかし、日常の謎はそんなことは関係ありません。むしろスマホを使ったりしてどんどん新しい謎が出てきます。すごい。


 とか書いてたらとっくに2000字超えてた! 語り足りないのでまたそのうち書くかもしれません。

 それでは、おやすみなさい。

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