第5話 別れ

幼い頃の記憶が蘇る。

ただひたすら愛を求めていたこと、自身の無さが、やり場のない怒りが暴力に向かう、さらに自分を追い詰め、己の自己固定を引き下げ、執着心へと


奪い、奪われる世界

大切なものは肌身離さず持っておきなさい

幼い頃から言われ続けてきた言葉だ


だから、その教えのように一度、手にした物は子どもなりに必死に守ろうと努力した




しかし、


歳を重ねていくうちにあることに気づいた


自分は一体何を、守っていたのか




宝物ように大切に胸に抱え込んでいた箱の中身は




空っぽだったのだ








なんだ、空っぽだったのか






いや、違う





空箱の隅に何かがへばりついているのが見える



ツンと鼻につく匂い


得体の知れない物体に


身体が拒絶反応をおこす





カビだ





これは

俺の


心のカビだ

 

    




頭をハンマーで殴られたかのような

衝撃だった





俺はこんなチンケな物を大事に守っていたのか


ばかじゃないか








分からなくなった





「隊長!隊長?」

ハッと意識が現実に引き戻される。

「あぁ、すまん。どうした?」

「◯◯の件なのですが、やはり・・・・・・・・・と・・・・・・・・・・・・・・・・・・』した方がいいのではないかと?」

「うん。そうだな。」

「では、先方にお伝えします。失礼致します。」

バタン(ドアの音)

兵士は去っていく。



夢を見た。



ルアと出会い、そして突然訪れた

別れから2年

受け入れられず時だけが流れていく。

あの日から止まったままの自分。

忘れようとがむしゃらに仕事に打ち込んでいる日々。


窓の外には、綺麗な夕陽

暖かいオレンジ色



懐かしく感じるも

憎らしく感じる。



部屋を後にする。






5年前新人隊員だった彼は、現在

国王軍第5番隊隊長に就任していた。




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sky story YUKA @yuka460

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