忌まわしき白い闇に包まれて

岬士郎

 山間を抜ける国道は道が整備されているうえ、交通量が少なく、東へと向かう三台のバスは順調に距離を稼いでいた。

 今回の二年生の修学旅行でうちの高校が借り切ったバスはこの三台だ。一組のバスが先頭であり、おれたちのこのバスは二番手である。最後尾が三組のバスだ。

 おれの席は右側の窓際だった。前から五列目だから、この四十五人乗りの観光バスでは真ん中辺りである。

 隣に座るのは小倉宗佑おぐらそうすけだ。初日の発車直前になって「窓際がいい」などと宗佑はぼやいたが、おれは譲らなかった。せっかく獲得した窓際の席であるし、引率の教師の許可がなければ変えられない。もっとも、宗佑がわがままを口にするのもおれが頑として譲らないのも、小学生以来の昵懇の仲だからだ。

 三泊四日の修学旅行も、今日で三日目だ。明日は帰るだけであり、見て回るのは、実質、今日が最後である。しかも今日は、クラスごとに別ルートだ。

 岩手の山々はすでに赤く色づいていた。晴天の青とのコントラストに目を奪われる、などと言えば担任の真壁まかべに褒められるかもしれない。もっとも、あいにくと今のおれは景色に興味がなかった。普段からそうだよ、と突っ込まれたらそれまでだが、大半のクラスメートが同じ心境ではないだろうか。現に、二泊目の宿を発ってまだ一時間も経っていないのに、半数以上がバスに揺られながら寝ている。

 窓際の席になって喜んでいたおれは、延々と続く山が見たかったわけではない。おれの両親ならこの風景で満足するかもしれないが、高校生の多くが無意識に目を向けるとすれば、自然ではなく人工物だろう。特におれは、自分の住んでいる街以外の街並みが見たかったのだ。自分の住んでいる街から出たかったのかもしれない。もっとも、自分が求めていたのは開けた都会だった、ということに気づかされる修学旅行となってしまった。東北地方の街並みは、よほどの主要都市でない限り、おれの住んでいる関東北部と大して変わらず閑散としており、物寂しい風情に包まれていた。

 ふと見ると、宗佑がスマートフォンをいじっていた。

「おい、やめておけよ」

 おれは小声で窘めた。この修学旅行では携帯電話の類いは持参が禁じられている。

 何食わぬ顔でスマートフォンをいじっている宗佑だが、これでも学級委員長なのだ。いざとなれば頼りになる彼であることは、おれだけでなく、ほとんどのクラスメートはもちろん、担任の真壁でさえも認めている。

「いいじゃん」宗佑も小声だった。「ニッタだって持ってきているんだろう?」

 新野拓也にいのたくやというおれの名を、宗佑は小学生の頃からニッタと略して呼んでいる。新田にったと勘違いされるからやめろよ、とおれが反駁したのは、小学生のときだけだった。今ではどうでもよくなっている。諦めの境地だ。

 宗佑は横目でおれを見るなり、にやりと口を歪めた。

「でもさ」おれは口を尖らせた。「電源は切ってあるよ」

 負け惜しみではある。ただしそのスマートフォンは、いつでも取り出せるように、スクールブレザーの内ポケットに入れておいた。

「だったら持ってきたって意味ねーし」

 呆れたように言う宗佑は、どうやらSNSを閲覧しているらしい。

「修学旅行中に、何か写真を投稿したのか?」

 おれが尋ねると、宗佑は画面を見ながら首を横に振った。

「なかなか撮れないじゃん、マッキーが目を光らせているし」

 マッキーとは、このクラスの担任、若手教員の真壁輝明てるあきのことだ。ドラマに登場するような熱血教師ではないが、気さくで面倒見がよく、おれはそれなりに信頼している。また、ルックスのよさも相俟って、女子たちからの支持は特に厚い。真壁は左側の先頭、バスガイドのすぐ後ろに着いていた。

 宗佑は続ける。

「でも、一組の佐々木ささきとかは、結構、写真を上げているぞ。えーと、どれだっけ……」

 一組の佐々木というのは女子だ。そんな呼び方で通しているものの、宗佑はその佐々木秀美ひでみと付き合っている。要するに、照れ隠しなのだ。それでも、帰国子女で語学堪能な恋人を、宗佑は「おれにはできすぎた恋人だ」と控えめに自慢している。

「あーっ、いけないんだあ」

 不意に声をかけられ、おれと宗佑は同時に顔を上げた。

 おれの正面、前席のヘッドレストの上から、水野澪みずのみおが顔を出していた。彼女はセミロングヘアの似合う愛らしい子だが、誰かと付き合っている様子はない。

「しーっ」

 おれは自分の口の前に人差し指を立てた。

「だから、静かに言っているでしょっ」

 確かにボリュームは控えめだ。

 その直後、水野の横に、もう一つの顔が現れた。

「何かと思えば」

 ショートヘアでボーイッシュな外見の彼女は、前期の委員長だった早瀬亜希はやせあきだ。見た目に違わずドライな性格の女子である。

「小倉くん、秀美ちゃんのことも考えたほうがいいよ。あんたがスマホを取り上げられたら、連鎖的に秀美ちゃんも、っていうことがありえるんだからね」

 佐々木と交友関係にある早瀬は、眉を寄せてそう言った。一応、小声ではある。

「なーんで一組の佐々木のスマホまで取り上げられるんだよ」

 口を尖らせつつ、宗佑は早瀬を睨んだ。

「その画面を開いたまま取り上げられたら、秀美ちゃんの撮った写真、先生に見られてもおかしくないじゃん」

 おそらくおれと宗佑との会話が早瀬の耳にも届いていたのだろう。状況を察して、忠告してくれたわけだ。

「早瀬の言うことを聞いたほうがいいって」

 おれがだめ押しをすると、ようやく、宗佑はスマートフォンの電源を切った。

「わかったよ。おまえらの厚き友情に感謝する」

 肩をすくめた宗佑は、スマートフォンをズボンのポケットに入れた。

 しかめ面のまま、早瀬は正面に向き直った。顔立ちはきれいだが、この性格のためか、彼女にも恋人のいる様子はない。

「一件落着う」

 おどけた調子で、水野も顔を引っ込める。いつものことだが、ネジが一本抜けたような口調だ。

「ああ、暇だ。寝るしかねーじゃん」

 ふてくされた様子で、宗佑は座席にふんぞり返った。

「遠慮しないで寝ていろよ」

 暇なのはおれも同じだ。できればたわいない雑談に興じたいところだが、愚痴だけは聞きたくなかった。

「とか言っても」宗佑は上半身を起こした。「そうそう眠れるわけでもないし」

「なんだよそれ」

 わずかにうざったさを感じた。起きているか寝ているか、どちらかにしてほしい。

「ニッタはゆうべの、どうだった?」

 なんの前触れもなく、宗佑は話題を変えた。しかも、さらに声を抑えている。

「旅館での夕食か?」

 おれもさらに声を抑えた。ほぼ、囁いている状態だ。

「違うよ。消灯後に同室の連中とやったあれだよ」

「怪談かよ」

 夜更けまで暗い部屋で怪談を語り合う――というより、誰の話が一番怖いかを競い合う一種のゲームのことだ。だが大半の話は明らかに即興であり、筋立てが未熟なら語りも未熟なのだ。怖いどころか、かえって疲れてしまう、という粗末な結果だった。そう感じたおれ自身も、テレビの怪奇映像特集で見たくだらないネタしか出せなかった。無論、テレビからの転用であることはすぐにばれてしまった。おそらく、おれのその話が場を一番しらけさせた、と思う。

「おれさ」宗佑は言った。「ゆうべは出さなかったけど、ネタがもう一つあるんだ」

「まさか、暇つぶしに今から話すんじゃないだろうな?」

 ゆうべの宗佑の話もおれの話に負けず劣らずの駄作だった。程度の低い怪談もどきなど、わざわざバスの中で聞く必要があるのだろうか。

「暇つぶしとかじゃないよ。この話をニッタはどう思うのか、それを知りたかったんだ」

「どのくらい怖いのか、とか?」

「怖くはないと思う」

 宗佑は歯がゆそうに答えた。ふざけている様子ではない。

「でも怪談、なんだろう?」

 おれがそう尋ねると、宗佑は神妙な顔でわずかに首を傾げた。

「怪談ではないかな……怪談というより、腑に落ちない話」

 そんなキャッチコピーをつけられると、俄然興味が湧いてしまう。ゆうべの宗佑にはなかったセンスだ。

「じゃあ、聞いてやるよ」

 また負け惜しみをしてしまった。負けず嫌いではないと自分では思っていたが、どうやらそうでもないらしい。

「じゃあ、話してやるよ」

 真顔でそう返されると喧嘩を売られたふうでもあるが、十年も付き合っているおれは、これが彼なりのジョークであるのを承知している。

「やまちゃんのことだよ」

 やまちゃんとは副担任、山田浩一やまだこういちのことだ。急に体調を崩したとかで、この修学旅行には参加していない。

「やまちゃんが、どうしたんだよ?」

「先週の水曜日、やまちゃんとマッキーが放課後に理科室で口論していたんだ」

「口論……あの二人が?」

 おれは懐疑の声を漏らした。山田と真壁は特に親しい間柄ではないようだが、犬猿の仲でもない。二十代半ばで経験の浅い真壁を五十過ぎで熟練の山田が支える、という関係であるはずだ。

「おれが理科室の前を通りかかったとき、言い争う声が中から聞こえたから、思わずドアに耳を当てて聞いてみたんだよ」

「口論の内容、聞き取れたのか?」

「ああ」宗佑は頷いた。「今回の修学旅行のことだ。というより、今日のクラス別のルートについてだよ」

「どういうこと?」

 まだ話は見えていない。おれは宗佑の横顔を凝視した。

「おれたちのクラスのルートは、マッキーが決めたらしい。ていうか、口論の内容からして、やまちゃんは反対していたみたいだな」

「マッキーの独断専行ということ? でもさ、今回のルートは一カ月も前に決定していたことじゃん。それを今さらほじくり返すだなんて」

 確かに山田も真壁も、らしくない。とはいえ、腑に落ちないほどの要因ではないように思えた。

「あのな、話はまだ途中だぞ」

 宗佑は横目でおれを睨んだ。

「そうか、ごめん。続けてくれよ」

「じゃあ」と頷いて、宗佑は続ける。「やまちゃんはマッキーにこんなことを言っていた。君は一人の女性にそそのかされてそのルートにしたのか? ってな」

「はあ?」

 思わずボリュームを上げてしまった。幸いにも、前の二人は会話にいそしんでおり、おれの奇声に気づかなかったようだ。周囲のほかの生徒たちも同様らしい。

「おいおい」

 宗佑は眉を寄せた。

「すまん」

 両手を顔の前で合わせて謝罪した。

「山田は一人の女性、って言っていたんだ」宗佑は再び、小声で言った。「女性、だぞ」

 思い当たる節は、一つしかない。

古賀こがちゃんか?」

「やっぱりニッタもそう思うよな」

 古賀優美ゆうみ――一組の担任であり、聡明な美人だ。もっとも、少々きつい性格であり、一部の生徒からは「魔女」などと呼ばれている。彼女と真壁は付き合っている、という噂は、校内で知らぬ者はいない。おそらく、教師の間でも周知の事実だろう。

「古賀ちゃんに言われるまま、マッキーはこのルートにした……っていうことかよ?」

「そういうことだろうな。考えてみりゃ、一組のルートと二組のルートじゃ、差がありすぎる」

 それはおれも感じていたことだ。実際に愚痴をこぼしたクラスメートは二、三人だが、それ以外の者も同じく感じているはずだ。

「一組のルートは温泉街だったな。土産屋はあるし、足湯に浸かるとかもあるし。それに、三組なんかは観光牧場だ」

 おれが言うと、宗佑は肩をすくめた。

「対しておれたち二組は、あけぼの鉱山資料館の見学だぞ。そして、各ルートの中間地点にあるドライブインで、全クラスが合流しての昼飯だ」

 鉱山資料館の見学には、鉱山施設跡の見学も付随する。鉱山づくしだ。

 おれは苦笑した。

「まあ、昼飯に差がないだけいいかも」

「どこがいいんだよ」宗佑は、笑って済ませられないようだ。「鉱山資料館には売店があるらしいけど、売っているものなんて、たかが知れているだろう」

「まあ、そうだな」

 土産なんてはなから買うつもりなどなかったおれは、苦笑し続けるしかない。

「ルートに関してもそうだけど、先月辺りから、あの二人、なんかおかしくね? 古賀ちゃんがマッキーを突き放しているような気がする」

 宗佑の言葉を受けて、おれは想起した。そして言う。

「そういや最近は、二人が会話するところ、見ていないな」

「この修学旅行の間もそうだ。なんだかお互いに避けているような感じだろう」

「ほかの教員に注意されたんじゃないのか。生徒らの前でいちゃいちゃするな、ってさ」

 おれのその意見に宗佑は首をひねる。

「それは前に聞いたことがあるよ。でも夏休以前のことだぜ」

「じゃあ、あれか……二人の間に亀裂が入った、とか」

「おそらくな」

「それで古賀ちゃんは、自分のクラスのルートを温泉街に設定して、マッキーにはあけぼの鉱山を押しつけた」

「うーん」と宗佑はまたしても首をひねった。

 どうにも埒があかない。おれは宗佑を睨んだ。

「何が納得いかないんだよ」

「古賀ちゃんに押しつけられたとしても、マッキーはそれを受け入れなくたってよかったわけだ。ルートを少しずらせば、民話とか妖怪で有名な観光地だってあるし……そっちのほうが鉱山資料館よりは生徒たちにはウケそうじゃん」

「宗佑が腑に落ちないのは、そこんところ?」

「そうだよ。なんで古賀ちゃんの押しつけたのがあけぼの鉱山なのか、そして、なんでマッキーは古賀ちゃんの言いなりになったのか、だよ」

 宗佑の疑問は当然かもしれない。だが、一方の疑問の答えは予想がつく。

「マッキーが言いなりになったことに関しては、あれだ……古賀ちゃんに何か弱みを握られている可能性がある、ってな」

「例えば、子供を下ろさなきゃならなくなったことを恨まれて、とか?」

「そこまでは言っていないよ」

 さすがにおれは逡巡した。ただの可能性を示唆しただけなのだから。

「とにかく、ニッタの言うとおりだ。マッキーは弱みを握られている可能性がある」

「一組の佐々木にも言ったのか?」

「ああ」宗佑は認めた。「そうしたら、そんなゴシップは広めないほうがいいよ、だなんて注意されちまった。誰かが傷つくだけなんだと。だから、ゆうべはこの話を出せなかったんだ」

「へえ」と感嘆の声を上げてしまった。佐々木の言葉は正しいだろう。他人の事情を拡散させても、幸せになれるはずなどない。

「でもさ、宗佑はおれに言ってしまった」

「ニッタを信用しているんだよ」

 すぐにそう返され、おれはこそばゆさを感じた。

「そうか。なら……しっかりしないとな」

 前を向き、おれは口を閉じた。

 宗佑も静かになった。


 宿を発って一時間が経過した頃、山が開け、平野部に差しかかった。田畑や草地が広がっており、遠くには市街地が見える。

 観光牧場へと向かう三組のバスが、右折して隊列から離脱した。さらに三十分ほど走った辺りで、この二組のバスも右折する。

 農家らしき民家が点在する田園風景だ。市街地は丘陵の陰に入ってしまい、もう見えない。右に再び山並みが迫ってきた。

 マイクの電源が入った。

「間もなく、あけぼの鉱山資料館に到着します。心地よい眠りについている人もいるようですが、そろそろ目を覚まして、気持ちを切り替えておきましょうね」

 アナウンスしたのは、里村静枝さとむらしずえというバスガイドだ。最後の部分はまるで弟や妹を諭しているかのようだが、年はおれたちよりはるかに上だろう。

 真壁が立ち上がり、振り向いた。

「ほら、みんな目を覚ませよ」そして左右の座席の背もたれを頼りながら、後方へと歩き出す。「しつこいようだが、貴重品だけを持って出るようにな。売店での買いものは、鉱山施設跡を見学してからだ。それからこれもくどく言うが、スマホをいじっているのを見つけたら、没収だぞ」

「へーい」だの「ういーっす」だのと返事が上がる中、おれたちの横に差しかかった真壁が、宗佑の肩を軽く揺すった。

「リーダー、今日も頼むな」

「真壁先生の頼みじゃしょうがねーな。三十九人の生徒に対して引率が一人っていうのも大変だしね」

 宗佑は大仰そうに言うと、口を尖らせつつ横目で真壁を見上げた。

「いい答えだ」

 そう言って苦笑した真壁が、後方の生徒たちの様子を確認し、自分の席へと戻った。

 気づくと、空一面に薄い雲が広がっていた。

「雨、降らねーよな?」

 おれは空模様に目を馳せながら独りごちた。

「天気予報じゃ、晴れのはずだったよ」

 そう告げた宗佑も窓の外に目を向けていた。

「資料館だけじゃなくて、屋外も歩くじゃん」おれは宗佑を見て言った。「折りたたみ傘はバッグに入っているけど、持ち歩くのもなあ」

「おれは折りたたみ傘さえ持ってこなかったよ。ここ一週間は雨は降らない、という予報を、心の底から支持したいね」

 至って真面目な顔だった。どうでもよいことである、という意思表示である。

「まあ、そうだな」

 おれは宗佑の意思を支持した。

「大変お疲れ様でした」里村のアナウンスが入った。「あけぼの鉱山資料館に到着しました。バスが完全に停車するまでは、まだ立ち上がらないでくださいね」

 バスが徐行で進入したのは、だだっ広い駐車場だった。普通車なら百台は停められるだろうか。もっとも、このバス以外に車は一台も見当たらない。

「なんだか閑散としているなあ」

 そんな宗佑のつぶやきを耳にしながら、駐車場の先にある建物を見た。鉄筋コンクリートらしき平屋の建物だ。そちらの横には職員のものと思われる車が数台駐車してある。

 バスは建物の近くでエンジンを切った。

 真壁の「みんな降りるぞ」という合図で、おれたちは立ち上がった。


 真壁を先頭とするおれたち二組の集団は、里村に見送られて資料館の建物へと移動した。

 資料館の背後には山並みがあった。その斜面の一角に林の切り開かれた箇所があり、何棟かの建物が見える。

 振り向けば、周囲は山ばかりだった。街並みはおろか、民家の一軒も見えない。

 玄関ホールは六畳ほどの広さで、その片隅の受付に作業着姿の男がいた。無愛想な中年の男だ。

 受付を過ぎて自動ドアをくぐると、玄関ホールの四、五倍はある広いロビーであり、三十歳前後の男が待ち受けていた。やはり作業着姿である。溝内みぞうち、と名乗ったその男が資料館の案内を担当するらしい。慣れていないのか、言葉も笑顔もぎこちなかった。

 ロビーの隅に棚が並んでおり、土産らしき品が陳列してあった。レジにはすでに女性店員が着いている。目つきが悪いというか、やはり愛想のない、そんな表情の中年の女だ。

 館内を見学する前に、あけぼの鉱山の概要が溝内によって説明された。

 明治時代に開坑したあけぼの鉱山は、主に鉄を産出し、そして平成元年に採掘は終了したという。

 最初の展示物は、あけぼの鉱山の年表だった。壁に貼られた年表に群がっているのは成績上位の生徒ばかりである。おれと宗佑は群れの後方で呆然と突っ立っているだけだ。

「宗佑、おまえ、学級委員長なんだから、前に行けよ」

 おれは半ば冗談で言った。

「委員長だからこそ、後ろでみんなを見張っていないと」

 速攻で返され、おれは肩をすくめた。

「褒めてあげたいところだが」

 後ろから声をかけられた。宗佑と揃って振り向くと、真壁が立っていた。

「あいつらをほうっておくようでは、いまいちだな」

 そう言いながら、真壁は群れの外に視線を移した。

 壁に寄りかかる三人の男子がいた。下卑た笑みを浮かべ、何やら小声で話している。須藤すどう小林こばやし高部たかべの三人だ。

 須藤を中核とする三人は、紛れもなく不良の類いだ。特に前期は放埒三昧であり、いじめもしていた。そんな三人を黙らせたのが宗佑である。

「あいつら」

 嘆息もあらわに、宗佑は三人に近寄った。

 気づいた三人は壁から体を離すが、宗佑は須藤の鼻先に人差し指を突きつけた。声は聞こえないが、宗佑が説教しているのは明らかだ。そして宗佑がおれの隣に戻ると、三人は群れの端に移動した。

「さすがだな」

 真壁は簡明に褒めると、須藤たち三人の後ろに立って年表を眺め始めた。

「宗佑ほど委員長に適役なやつはいないかも」

 冗談で言ったわけではない。だが宗佑は、憂鬱そうな色を呈した。

「委員長になってまだ一カ月だぜ。あと五カ月もこんなことをやらされるなんて、うんざりだよ」

 それも冗談ではないらしい。だが、おれと同じく部活をしていないのだから、精神的にも時間的にも余裕はあるはずだ。

 宗佑は自校は言うに及ばず、近隣の学校の不良からも一目置かれるほどの腕っ節の強い男だ。とはいえ、肩で風を切るような性格ではない。その人柄のよさや、前期の英雄ぶりが認められ、本人の意思とは関係なく、学級委員長の座に押し上げられてしまったのだ。

「では、館内を自由に見学してください。それから、撮影禁止の表示がある展示物は、文化保護のため、撮影を禁止しています。ご協力お願いします」

 溝内がそう結び、年表の解説が終了した。撮影禁止に関しては、スマートフォンが使えないのだから、あえてそれを犯す者は、いないはずだ。この修学旅行ではデジタルカメラの持参は許可されているが、それを使ってまで展示物を撮影するような鉱物好きがいるとも思えない。

「さっと見学したら、外へ出ようぜ」

 展示ケースに収められたさまざまな色の鉱石を見ながら、宗佑は言った。

「いいのか、みんなを見張らなくて」

 とりあえず意見してみたが、宗佑は口元に笑みを浮かべた。

「早めに外に出るやつのほうこそ、監視が必要だろう?」

「ああ、なるほど」

 おれは首肯した。

 展示ケースの間を進んでいくと、一人の女子が展示ケースの前でノートにメモを取っていた。三つ編みに眼鏡――須藤から一番遠いところにいそうな彼女は、副委員長の松井七海まついななみだ。

「やっぱり松井は勉強熱心だな」

 宗佑が声をかけると、松井は顔を上げて頬を赤らめた。

「小倉くん……茶化さないでよ」

 彼女が前にする展示ケースには、板チョコのようなものが並んでいた。「銑鉄」と表示されている。

 松井は須藤にいじめられていたうちの一人だ。金銭をせびられたこともある。もっとも、須藤に渡った金の全額は、宗佑の働きによって松井に返還された。

「悪いな。おれら、先に外に出ているから」

 宗佑が言うと、松井は不安そうな表情を浮かべた。

「え……もう出ちゃうの? 新野くんも?」

 おれに向けられた瞳が、眼鏡の奥で潤んでいる――ような気がしたが、どうやら錯覚だったらしい。彼女の憂慮は、須藤たちから守ってくれる宗佑が離れてしまうこと、であるはずだ。

「松井よう、おれはあいつらを見張らなきゃならないんだ」

 宗佑が正面玄関のほうを顎でしゃくった。

 見れば、須藤たち三人が出ていくところだった。

「ニッタ」宗佑は言った。「おれは先に行っているから、ゆっくりしていろよ」

 おそらく宗佑はおれの気持ちに気づいているはずだ。しかし当のおれは、まだ躊躇していた。松井の気持ちがまだわからないのだ。

「おれも出るよ。バスに酔ったみたいで、外の空気に当たりたいんだ」

「ふーん、じゃあ、しょうがねーな」

 歩き出した宗佑に、おれは続いた。

「松井、お先」

 去り際に、おれは声をかけた。

 松井が片手を振っておれたちを見送ってくれた。

 この地上に天使が存在するとすれば、それはまさしく松井だ。

 本気でそう思った。


「ばかだなあ、せっかくのチャンスだったのに」

 資料館から出るなり、おれは宗佑から罵られた。

「チャンスって、なんのこと?」

 宗佑の目を見ることができず、おれは足元のコンクリートのタイルを見つめた。

「ニッタは松井に気があるんだろう?」

「え、何それ?」

「とぼけんのもいい加減にしろよ。おれはニッタと小学生のときから付き合っているんだぜ。気づかないわけねーじゃん」

 宗佑はそう言うと、アプローチの端にあるコンクリート製のベンチに腰を下ろした。

「うーん」

 うなったおれも、宗佑の隣に腰を下ろした。

「おれさ」宗佑は言った。「松井に頼まれたんだよ。新野くんと二人きりになれるようにお膳立てしてほしい、ってさ」

「なんだよそれ?」

 胸が高鳴った。聞き返したが、宗佑の言葉の意味は、なんとなく想像できる。

「もうわかるだろう。おまえら二人は、互いに好き合っているんだよ」

 口調は明らかに面倒くさそうだった。しかしおれは、天にも昇る気持ちである。

「まさか、松井がおれを? それって冗談だったりして」

 念には念を入れた。宗佑の言うことなのだ。悪い冗談という可能性もある。

「いくらなんでも、こんなことを冗談で言うのはまずいだろう」

 宗佑はかぶりを振った。かなり呆れているようだ。

「わかった、信じる」

 ようやくその気になれた。頷いて誠意を示す。

「でもさ」気になっていることはあった。それだけは確かめたい。「松井は宗佑に助けられたじゃん。宗佑に惹かれて当然かと、おれは思うわけだ」

 もっとも、佐々木という恋人のいる宗佑にその気がないのは、十分に承知している。

「恩義は感じているみたいだけど、それとこれは別だろう。自分の好みは変わらないんじゃないのか。松井はな、ずっと前からニッタのことが好きだったらしいんだ」

「そうだったんだ」

 ここのところ、滅入ることばかりが続いていた。そんな中での、思いもよらぬ幸運である。すべての不幸が彼方に吹き飛んでしまったかのようだ。

「この前」宗佑は遠い目をした。「松井が眼鏡を外したところを、たまたま見たんだ。おれさ、今まで気づかなかったんだけど、めちゃくちゃ可愛いじゃないか。ニッタはついているぜ。ていうか、お目が高いのかな?」

 そんなことを言われたら、ますます気分が高揚してしまう。

「だったら、今度こそ、機会を逃さずに話しかけてみる」

 どうにか自分を落ち着かせて、宣言した。

「よし、そんな前向きなニッタなら、おれも協力するぜ」

 心強い言葉だった。

「それにしても」宗佑は声のトーンを下げた。「あいつら、また何をしているんだか」

 見れば、バスの乗降口の前で、須藤たち三人がバスガイドの里村と談笑していた。トイレにでも行ったのか、運転席に運転手の姿は見えない。

「軟派しているつもりなのかも」

 おれが言うと、宗佑は笑った。

「そんなところだろうよ。飢えてんだな」

 宗佑によって粛正されて以来、須藤たち三人は校内の女子たちからほぼ相手にされなくなった。自業自得だが、哀れと言えば哀れである。

「まあ、年増もそれなりにいいんじゃん」

 本気とも冗談ともつかぬ言葉を耳にして、おれは宗佑の顔を見た。

「マジ?」

「おれは間に合っているからいいけどよ」

「だよな」

 でなければ佐々木の立場がないだろう。

 いつの間にか、駐車場で談笑する四人の姿が、なんとなくかすんでいた。バスも同様である。遠くの山並みに至っては、まったく見えない。

「霧が出てきたな」

 周囲を見渡しながら、宗佑はつぶやいた。

「施設跡の見学って、このあと、すぐだろう?」

 尋ねつつ、おれも周囲に目を走らせた。

「そうだよ。霧が深くならないといいな」

 答えた宗佑が、資料館の出入り口に視線を移した。

 真壁が数人の生徒とともに出てきたところだった。

「小倉、そこにいたか」おれたちに顔を向け、真壁は言った。「霧が出てきたから、少し早めに鉱山施設跡に行くことにする」

 おれと宗佑は立ち上がった。

「そうだね」宗佑は真壁に頷いた。「おれもそのほうがいいと思う」

 頷き返した真壁は、霧が深くなりつつある駐車場に向かって両手を大きく振る。

「おーい須藤! 次に行くぞ! 早く来い!」

 不承不承といった感じで三人がこちらへと歩き出した。里村が手を振って見送っている。

「真壁先生、施設跡ってどの辺にあるの?」

 おれは尋ねた。

「この資料館の裏のほうだよ。歩いて五分前後かな。山の斜面だ」

 との説明を受け、おれは資料館の裏のほうを覗いた。霧の先に山らしきシルエットが浮かんでいるが、確認できるのはそれだけだ。おそらく、資料館に入る前に見えた建物の群れが、鉱山施設跡だったのだろう。

「先生よう」ようやくたどり着いた須藤が、口を開いた。「バス、大丈夫なの?」

「どうした?」

 真壁が須藤を見た。

「静枝ちゃんから聞いたんだけど、運ちゃんの大越おおこしさんっていうおっちゃん、腹の具合が悪そうなんだ。資料館のトイレに行ったきり、まだ戻ってこないし」

 いつの間にか「静枝ちゃん」呼ばわりだ。

「心配するな。出発までにまだ時間がある」

 苦笑しつつ、真壁は言った。

「そうなんだけど、嫌だぜ、走っている最中に腹痛を起こして、それが原因での事故なんてさ」

「じゃあ、おまえだけ、次の宿まで歩いて行くか?」

「冗談っしょ?」

 肩をすくめ、須藤は口を閉ざした。

 ぞろぞろと出てくる生徒たちの中に、松井の姿があった。

 おれは彼女を一顧し、すぐに目を逸らした。

「まだだ。今はだめだぞ」

 宗佑がおれに耳打ちした。

「当たり前だ」

 揶揄されてもそれほど気にはならなかった。

「先生、全員が揃いました」

 松井が真壁に報告した。

「よし。じゃあ、鉱山施設跡に行くぞ」

 号令をかけた真壁を先頭に、二組の一同が歩き出した。

 霧はますます深くなっていた。

 振り向くと、白い闇の中にバスが沈んでいた。


 山の斜面、と真壁は言ったが、それほどきつい上りではなかった。道はアスファルトが敷かれ、乗用車が擦れ違える程度の幅があり、歩くのにも適している。

 もっとも、この霧の濃さには閉口せざるをえない。おれと宗佑は並んで最後尾を歩いていたが、先頭についているはずの真壁の姿がまったく見えないほどだ。視界は十メートル以下だろう。

 おれたちの前に、松井と早瀬、水野ら三人を含む七人の女子が固まって歩いていた。早瀬と水野が一緒では、松井の地味な印象が際立ってしまう。それ以前に、話しかけるチャンスが見つからない。

 宗佑がおれの腕を引きつつ歩調を緩めた。前の七人との差がわずかに開く。

「宗佑、どうした?」

「よく見ろよ」

 宗佑は顎で前方を指した。

 霧の中に溶け込みかかっている七人の後ろ姿を、おれは見つめた。

 ときおり、松井が後ろの様子を窺うように横顔を見せている。

「松井なりにタイミングを見計らっているんだよ」

 前の三人に届かない程度の声で宗佑は言った。

「そうなのか?」

 おれが首を傾げると、宗佑は深くうなだれた。

「ニッタは本当に鈍いなあ」

「そんな言い方ってないじゃん」

 多少の憤りはあるが、おれも声を抑えた。

「いいか」宗佑は言った。「ニッタはこのままの距離を保って歩くんだ。おれは少し前に出て、松井に合図する。おそらく、松井はそっとペースを落としてほかの六人から離れるだろう。おれは、おまえらと前の女子たちとの間に入る。あとは、ニッタと松井が一緒に歩けばいい。見学の集団からできるだけ離れて、二人きりの時間を満喫しろ。おれが誰にも邪魔させねーから」

 状況に応じた作戦をその場で組み立てるのは、宗佑の才能である。今回も、おれは舌を巻くしかなかった。

「わかった」

 いきなり到来したチャンスだ。これを逃す手はない。

 宗佑がおれの前に出かかったときだった。

「よう、委員長」

 背後から声が聞こえた。

 おれと宗佑は立ち止まり、振り向いた。

 須藤だった。後ろに小林と高部を従えている。三人はおれたちよりずっと前のほうを歩いていたはずだが、この霧を利用して待ち伏せていたようだ。

「霧の中から現れるなんて、なんだか、かっこいいな」

 宗佑の声に焦りは感じられなかった。

「おれは冗談を言い合うためにここで待っていたわけじゃねーんだぜ」

 あからさまな威嚇を放った須藤は、首を傾げつつ、顔をしかめていた。

「へえ、そうだったんだ。残念」

 宗佑はそう切り返すと、不敵な笑みを浮かべた。

 まずい、と悟ったときは遅かった。

 素早く踏み込んだ須藤は、宗佑の胸ぐらを左手で締め上げた。

「なあ小倉」須藤は言った。「我慢にも限界ってものがあんのよ」

「おまえが我慢していたようには、見えなかったなあ」

 宗佑は口調を変えなかった。手も足も、反撃に出る気配を見せない。

 たまらず、須藤がしているように、おれは須藤の胸ぐらを右手で締め上げた。

「やめろよ須藤。おまえらはただでさえ教師たちに目をつけられているんだ。問題を起こせば、職員会議ものだぞ」

 だが、須藤は宗佑の胸ぐらを解放しなかった。

「そんなのは承知のうえだ。少なくとも、この霧なら小倉をぶっ飛ばしても誰にも気づかれない。ぶっ飛ばせるんなら、あとはどうなろうとかまいやしない」

「おれがいる。そんなことはさせねえ」

 と啖呵を切ったものの、動き出した小林と高部を見て、唇を嚙み締めた。一対二では、さすがに須藤から引き剝がされてしまうだろう。

「ニッタ、余計なことはするな」

 須藤から目を離さずに、宗佑は言った。

 小林と高部が足を止めた。宗佑の声は落ち着いていたが、それなりにこの二人を威圧したのだろう。

「ニッタ、早く離れな」

「宗佑……」

 おれはまだ須藤の胸ぐらを締め上げていた。

「こいつらは停学なり退学なり、処分されてもいいと思っているんだ。だったら、殴らせてやろうじゃん」

「わかってんのか、小倉。おまえはおれたち三人にぼこぼこにされるんだぞ。一発や二発で済むわけねーだろう。詫びを入れるんなら、今のうちだ」

 須藤の鼻息が荒くなった。今にも宗佑を殴りそうだ。

「なるほど」宗佑は失笑した。「おれが弱腰になるのを待っているわけだ。両手を突いて謝れば、おまえらは大満足だろう。そういう流れなら、処罰を受けなくて済むしな」

「なんだと?」

 見透かされたのだろう。須藤の顔は、茹で上がったかのように真っ赤になった。

 笑みを消した宗佑が、口を開く。

「でも残念ながら、おれは謝らない。かといって、委員長だから手も足も出さない。三人で自由に殴ったり蹴ったりすればいい。ただし、ニッタをひどい目に遭わせたら、あとで三人とも……必ず殺す」

「てめえええ!」

 一声上げた須藤は、いとも簡単におれを振り飛ばした。

 転倒しそうになったおれは、すぐに踏ん張り、振り上げられた須藤の右腕に飛びつこうとした。

 小林と高部が宗佑の左右に回り込もうとした、そのときだった。

 すぐ近くで、タオルでも振りさばくかのような音が連続した。

 そして次の瞬間、太いロープのような何かが、須藤の腰に巻きついた。

「うっ」と声を漏らした須藤が、一瞬にして後方に吹き飛んだ。いや、そのロープ状の何か――よじれた触手にも見える何かによって連れ去られたのだ。

 宗佑も小林も高部もおれも、須藤の体が飛んでいったほうに目を向けた。しかし、深い霧があるばかりで、須藤の姿を認めることはできない。

 妙な音は、やんでいた。

「何が起きたんだ……」

 おれはつぶやいた。

「おい須藤、ふざけてんじゃねーぞ」

 言いながら、高部がそちらへと歩き出した。

「待て高部」宗佑が高部を呼び止めた。「様子がおかしい」

「なんだよ、文句あんのか」

 高部は眉を寄せた。

「高部、小倉の言うとおりだ」小林が割って入った。「見ただろう。須藤の腰に巻きついたやつ。あれが須藤を連れ去ったんだ」

「ばか言ってんじゃねーよ。そんなことあるわけ――」

 言いさした高部が、視線を上げた。

 頭上の霧の中から、ゆったりと連続する音が聞こえた。音質は今しがたの妙な音と似ている。鳥の羽音に似ているが、鳥ならば、この音からするに、かなりの巨体であるはずだ。しかも音の発生源は、複数存在するらしい。

「早くみんなと合流しよう」

 頭上の霧を見上げながら、宗佑は言った。

「それよか、バスに戻ったほうがいいんじゃないか」

 高部が意見した。

「須藤が吹き飛んだ方向に行くことになるんだぞ」

 すかさず反論したのは、小林だった。

「だったら、なおさら――」

「あれが人間業だと思うのか?」宗佑は高部の言葉に被せた。「いずれにしても、マッキーに報告したほうがいい。上にいるやつも、普通じゃないようだし」

 宗佑が頭上を指さすと、高部は弱々しく頷いた。

 そしておれたち四人は、鉱山施設跡のほうへと走り出した。

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