小さい男子~矢間根時男ver.~

今日、一人の男子を営業先で助けた。…ネームプレートには「西島」と書いてあったから、「ニシジマ君」と以後呼ぶことにしよう。


顔を見ると、くまが出来て、真っ青だった。…けど、目は大きくて色白だった。


落ちたファイルを見ると、誰かが拾いにかかっていた。

拾いながらそいつは顔をあげて…威嚇とも取れる程のキツイ目つきをして、直ぐに目を逸らした。



…ほぉ…そう言う事か…。俺はどうやら面白い会社に来たみたいだ。


そいつと鉢合わせるのもなんだから、流れるようにその場から去って、陰で様子を伺うようにした。




「~~。」

「……。」


…何を話しているかは分からなかった。

でも男が去ってからニシジマ君が「はぁ…」と一つため息をついたことが分かって、


「ここがくっつけばいいのに…。」


と思った。


くっついてないって考えた訳?

そりゃ、あんなに嫉妬深そうな彼が、あの場で何も起こさないわけがない。


現に、ニシジマ君がため息をついたのも…くっついてない事を示している気がしたんだ。





…ところで、企画担当者って誰なんだろうな、あの天使が担当になれば…と内心ワクワクしながら客間へ向かった。


客間に通されてすぐにお茶が運ばれてきたものの、猫舌の俺にとっては全くもって飲めたもんじゃない。

しばらく室内を眺めていると、外からの軽快なノックの音が聞こえた。


「…はい。」

「失礼します、営業課の山口です。」


お?来た来た!!!!

さて、天使じゃなくても、せめて真面目なやつがいいな…ノリも良くないとな、うん。



「え~っ、この企画に参加するメンバーは、サイトウハルカに決まりました。」


…誰だそれ…。


「…どんなやつなんだ?」

「え?『西島』って書いて、サイトウというもので…、~~~。」


…これ来た、これ来たぞ!!!!!!


俺はにやける顔を必死に手で隠して、「…そうか。」とだけ返した。

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