クロスワード

俺が頼んだ『トロトロオムハンバーグ』で満腹になった。


「美味しかったですねぇ、あのハンバーグ!!」


「ゲプッ…そうだな…。」


結局あのハンバーグの3分の2は坂井が食べた。…育ち盛りかッ!


「遥さん…意外と小食なんですね…。」

「燃費悪いんだよ。」


「…同い年なのに…?」


「…え?」


いま、同い年って聞こえたんだけど…。


「…いえ、何でもありません。独り言です。…チッ。」


は?舌打ち?

「…遅くなりましたよ、帰りましょ。」

坂井はスタスタと歩き始めてしまった。


「ちょッ、待てってば!お前…」

俺が叫ぶと、坂井はピタっと止まった。


「はぁ…、同い年ですよ。短大卒なので。」


何だ、そう言う事か…。

俺は自分の体が冷たくなっていくのがわかった。

「同い年」「雅樹という名」…。

それだけで俺の心はきつく締めあげられていた。

『嘘であって欲しい』と願った…。


だって、2つもアイツとの共通点が見つかっちゃえば…今までの偶然が…全て必然に変わってしまう事を予知するから。


坂井の発言だって…






「…先輩、家変わってないんですね。」




「僕の事、覚えてないんですか?」




「相変わらず冷たいなぁ。」




「桜なら、もっと良いとこありますよ。」

全部…雅樹本人だと思えば…すべて合点がいく…。

でも、コイツの苗字がまず違うし、性格違うし…それに、アイツとはもう口は聞けないだろうし。


2

「僕がタメだと困るんですか?」

「え?…いや…そういうわけじゃ…ない。」


「じゃ…どうしてそんな苦い顔をしてるんですか?」


「…え?」


坂井は俺の頬にそっと手を当てた。

「ほら…、こんなに冷たい顔をして…。」


あ…ダメだ…今日の俺…弱い…。


でも…こんなダメな所…見せたくない…ッ!!


…何故か坂井には弱いところを見せたくなくなる。



パシッ

俺は坂井の手を払った。


「そういう馴れ馴れしいの…嫌いなんだよ。…気安く触るな。」


「…すみません…。」






俺らは帰るまで何も言葉を発さなかった。

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