第5話 沖縄攻防戦

 新幹線の車内。

 新幹線のぞみ号のグリーン車にいる乗客は少なく自分を含めて十人くらいしかいない。

 窓の外を見ながらコーヒーを飲む博。

 車内に入ってくる車掌。

 「お客様。切符を拝見します」

 振り向く博。

 「ダニエル。芸達者だね」

 切符を出す博。

 この前はタクシー運転手で今回は新幹線の車掌である。さすが時空管理局だ。

 「サブ・サンは自分のいた世界に帰ったがその代わりに「侵入者」と呼ばれる者がサブ・サンと同じ世界からやってきた」

 ダニエルは隣りに座ると似顔絵や服装を書いた紙を渡した。

 「名前はネピュラ。ダナエといる。ダナエの甥は周主席といて、バロックもダナエと一緒にいる」

 ダニエルは説明する。

 「君ねえ。またトラブルを持ち込まないでくれないか」

 腕を組む博。

 「我々も監視している。巧妙に穴を作ってやってくる」

 ダニエルは答える。

 「大連の空飛ぶ空母にいたのは中央ザイード軍とカメレオンだった。ダナエは改造兵を造ったね」

 「ダナエの一族は千年前にアナベルの一族と別れた後、時空遺物を求めて異世界から異世界へ渡り歩いて侵略と虐殺を繰り返している。虐殺の理由はどこも人口増加と食糧難に悩んでいるから住民を半分にしてしまえばその問題もなくなるのがモットーだそうだ」

 「最悪な一族だ」

 「ある意味、サブ・サンより性質が悪い。

「侵略者」もサブ・サンと同じように全時空に自分の種族の名前を行き渡らせるのがモットーでどっちにしても最悪だ。「侵略者」よりもダナエの一族は侵略と虐殺を繰り返して時空遺物を奪う。団結しなければこの星だけでなく宇宙も滅びる。そして異星人の特命チームも動いている。ダナエの一族の何人かは地球外にいる。そこでも虐殺と侵略をして支配するから結成されている。そのチームの何人かが近いうちに行くかもしれない」

 ダニエルは切符とUSBを渡す。

 「わかった」

 博はしぶしぶうなづく。

 ダニエルはグリーン車から出て行った。


 

東京湾。

 羽田沖に五隻の巡視船が近づく。

 すぐそこは羽田空港がある。パンサーアイメンバーはサルインのアッシジ大統領夫妻とフェデリコ国王夫妻と一緒に昨日帰国した。

 「アナベルは残ったみたいだな。でも安土桃山時代と江戸時代に特命チームが結成されたかの調査は継続されている」

 朝倉は飛び去る旅客機を見ながら言う。

 「でもそれとは入れ替わりにスレイグがさっきエアフォースワンに乗って横田基地に来日している」

 三神が話を切り出す。

 二日前の夜に空母「ロナルド・レーガン」は横須賀を出て黄海に向かっているがサラトガ達は横須賀にいる。ニュースで米空母が出航した後にスレイグ大統領が急遽来日する事に決まった。まだ中国がミサイルを発射するかもしれない時にやってくる。

 「ゴルフは取りやめになったみたいね」

 大浦がしれっと言う。

 「当然かな。有事法制は解かれたけどまだ何も解決していない」

 沢本が答える。

 「昨日、周永平は温州基地と青島基地を強化するような事を言っている。サブ・サンは帰ったけど別の時空侵略者が侵入してきてダナエといる。アメリカが本腰を入れてその対策を話し合うのかしら」

 三島が疑問をぶつける。

 「そうじゃなさそうだな。スレイグは大統領になる前の選挙演説で日本と韓国は核兵器持っていいとか沖縄の在日米軍基地の撤退の命令を出せば二四時間で完了するとか言っていた。来日の目的も武器や兵器の取引と中国と北朝鮮問題と貿易赤字だそうだ」

 沢本が答える。

 「中国の問題の何を話し合う?」

 不満をぶつける三神。

 中国の問題はいろいろある。一般世論もしらけあきれているといった風潮だろう。新聞でもTVでも専門家もあまり触れないしあきらかにあきれた顔だった。

 「明日には帰るそうだ」

 沢本が言った。


 その頃。国会図書館

 国立国会図書館は、日本の国会議員の調査研究、行政、ならびに日本国民のために奉仕する図書館である。また、納本制度に基づいて、日本国内で出版されたすべての出版物を収集・保存する日本唯一の法定納本図書館である。

国立国会図書館は、日本の立法府である国会に属する国の機関であり、国会の立法行為を補佐することを第一の目的とする議会図書館である。同時に、納本図書館として日本で唯一の国立図書館としての機能を兼ねており、

行政・司法の各部門および日本国民に対するサービスも行っている。

 

 「アナベルは帰らないのか?」

 館内の書棚を見ながら翔太は口を開いた。

 「フィンとエンリコとヴィドが残ったし学校も智仁が通う学習院になったし、大使館もあるから大丈夫よ」

 アナベルは振り向く。

 「そうなんだ」

 うなづく翔太。

 フィンとエンリコはアナベルのSPでもありヴィドは執事でありながら邪神ハンターでもある。そして智仁に周囲には皇宮警護官がそばにいる。よってこの館内や外にも一般人や警備員の格好をした警護官がいる。

 「日本語って難しい」

 ミゲルはアラブ語でつぶやく。

 「蔵書はたくさんあるな。特命チームに関係する物はあるのかな・・・」

 智仁は難しい顔をする。

 「探すしかないか」

 翔太が書棚を見上げる。

 ここには日本で出版された本がすべて集まっているうえに歴史書も収められている。

 「今日、スレイグが来ているね」

 ミゲルがふと思い出す。

 「確か日米首脳会談は延期になったのに急遽来る事になったね。それも三宅首相が記者会見後に」

 智仁が新聞を見せた。

 ロナルド・レーガンが黄海に向けて出航した後に速報が入ってきた。でもサラトガ達は横須賀にいるし、ロルフとラルゴもいる。

 「でも議題は北朝鮮問題と経済問題、中国についても話し合うとか言っていたけど大半は武器や兵器の取引に来るそうだよ

 翔太が新聞記事を見せる。

 記事にはF-35やトマホークミサイルやイージスアショアや弾道ミサイルといったリストである。

 イージスアショアとは陸上型のイージスシステムである。F-35はステルス性を有する戦闘機で二十機を自衛隊は保有し、「あかぎ」や「かが」に搭載している。垂直離着陸できるタイプだ。二年半前の尖閣諸島の戦いで「かが」から発進したF-35は空母「鄭和」を撃沈して戦闘機も撃墜した実績もあり、青島基地攻撃でもそのステルス性を発揮して攻撃に成功している。

 「ただ武器を売りたいだけじゃん」

 アナベルとミゲルがあきれる。

 「北朝鮮問題じゃなくて今は中国の問題と中央ザイードの問題だと思う。他人ごとだね」

 翔太が本音を言う。

 拉致問題や弾道ミサイルも大事だが今ある危機は中国とダナエとカメレオンである。日本はその最前線になっている。

 「織田信長と豊臣秀吉と徳川家康の時代の歴史書の中に特命チームの話があったよ」

 フィンがわりこんだ。

 「え?」

 「天正地震と慶長地震関連の文献にある」

 エンリコが数十冊の本を見せた。

 「天正地震?}

 聞き返す翔太達。

 「天正地震は、天正十三年十一月二九日(一五八六年一月十八日)に日本の中部で

発生した巨大地震である。天正大地震あるいは天正の大地震とも呼ばれる。また、各地の被害から長浜大地震、白山大地震、木舟大地震、天酉地震とも呼ばれる。『東寺執行日記』、『多聞院日記』など多くの古記録に記載され、『梵舜日記』には約十二日間にわたる余震が記録されている。豊臣秀吉はその頃、朝鮮出兵をしていたけど、この地震の影響で野望は潰えたとも言われている」

 智仁は説明した。

 「そんな大地震があったんだ」

 「天正地震の震度分布被害地域の記録が日本海の若狭湾から太平洋の三河湾に及ぶ歴史上例のない大地震であるため、震源域もマグニチュードもはっきりした定説はなく、いくつかの調査が行われているが震央位置も判明

していない。なお、十一月二七日に前震と考えられる地震と十一月三〇日に誘発地震と考えられる地震が発生した。戦国時代末期の豊臣秀吉による東日本支配が完了していない時期であったため、統治機構の混乱から文献による歴史資料が残り難い時代背景であった。しかし、三河にいた松平家忠の日記によると、地震は二十二時頃に発生し翌日の二時頃

にも大規模な余震が発生。その後も余震は続き、翌月二十三日まで一日を除いて地震があったことが記載されている」

 智仁は部屋を歩き回りながら説明する。

 「そんなのがあったんだ」

 感心するミゲルとアナベル。

 翔太はおもむろに龍の置物を出した。ジエンからもらったものだ。自分の耳にだけ泣き声が聞こえて置物の目から光が出てある書物を指さした。彼は古文書を出した。

 「ルイス・フロイス。影の日本史」

 翔太は口を開いた。

 「興味深いですね」

 ヴィドがわりこむ。

 「いたんだ」

 驚く翔太とミゲル。

 「ルイス・フロイスって誰?」

 アナベルが聞いた。

 「ルイス・フロイス(一五三二年 - 一五九七年七月八日)は、ポルトガルのカトリック司祭、宣教師。イエズス会士として戦国時代の日本で宣教し、織田信長や豊臣秀吉らと会見。戦国時代研究の貴重な資料となる『日本史』を記したことで有名な神父だよ」

 智仁が説明する。

 「歴史ロマン」

 ミゲルと翔太が声をそろえる。

 「当時の神父は・・・イエズス会の真の目的は、布教活動をしつつ、その国のことを調査し、やがてその国を侵略することであるからだが別の目的もあった。邪神ハンターでもあった彼らは時空異変や時空の揺らぎが出現していないかを監視する役目があった」

 それを言ったのはヴィドである。

 「レオナルド・ダ・ヴィンチが邪神ハンターでもあり特命チームメンバーでルネサンス期のイタリアを駆け抜けた。彼らのおかげで騒ぎは収まった。でも今度は日本だった」

 智仁が古文書を見ながら説明する。

 「なんで知っているの?」

 フィンが聞いた。

 「天皇家は代々その歴史を聞かされてきたし、世界の王室も敵に絶対に渡してはいけない時空遺物を保管している。特命チームメンバー達は・・・先人達はそれを名画や世界遺産、オブジェにして隠した。時空の王錫が敵に渡ってしまえば自在に時間、物質、魂、宇宙、時空を操る。代償も大きい」

 智仁は重い口を開く。

 「ごめん・・・知らなくて」

 翔太はあやまる。

 「ティムールの呪いの棺って知っている?」

 智仁が聞いた。

 「バラエティ番組で見た」

 翔太とミゲルが声をそろえる。

 「呪いの棺って何?」

 アナベルが聞いた。

 「ティムール(一三三六年四月八日ー一四〇五年二月十八日)は、中央アジアのモンゴル=テュルク系軍事指導者で、ティムール朝の建国者(在位 一三七〇年四月一〇日 ー 一四〇五年二月十八日)。中世アジアを代表する軍事的天才と評価され、中央アジアから西アジアにかけてかつてのモンゴル帝国の半分に匹敵する帝国を建設した。しばしば征服した都市で大規模な破壊と虐殺を行う一方、首都のサマルカンドと故郷のキシュで建設事業を行う二面性を持ち合わせていた」

 ヴィドが説明する。

 「一九四一年にソ連の考古学者たちがティムールの遺体の調査を行った。ティムールの棺には「私が死の眠りから起きた時、世界は恐怖に見舞われるだろう」という言葉が刻まれていた。それでも、調査が実施された。調査で棺の内側に文章を発見し、解読した結果「墓を暴いた者は、私よりも恐ろしい侵略者を解き放つ」という言葉が現れた。調査から二日後、ナチス・ドイツがバルバロッサ作戦を開始し、ソ連に侵入した。一九四二年11月の

スターリングラード攻防戦でのソ連軍の反撃の直前に、ティムールの遺体はイスラム教式の丁重な葬礼で再埋葬された。そして、ソ連がモスクワ防衛戦に勝利した。これは呪いなのか、それども単なる偶然か?信じるか信じないかは君次第かな」

 智仁が歩き回りながら説明した。

 「それと戦国時代がつながるの?」

 アナベルが聞いた。

 「ウズベキスタン政府が管理している博物館にその棺はある。それが三日前に何者かに開けられた。政府も魔術師協会もハンター協会も大騒ぎになっている」

 智仁はタブレット端末を出して動画を見せる。そこには開けられた棺が映る。周囲で警報が鳴りハンター達と政府関係者達が忙しく動き回っている。

 翔太が持っていた唐突に龍の置物が鳴き声を上げた。脳裏にジェームズ・ボンドと中国大陸がよぎり、沖縄に艦隊が押し寄せるという映像だった。

 「大変だ。佐久間さん達に知らせないと」

 翔太はあっと声を上げる。

 「なんで?」

 首をひねる智仁達。

 「中国軍がスパイを沖縄に送り込んだ。たぶん田宮議員みたいなスパイのせいで中国軍がやってくる」

 翔太が訴えるように言う。

 なんでそう思ったのかわからないがダナエならやるだろう。

 「智仁さま」

 女性司書が近づいてきた。

 「はい」

 智仁が振り向く。

 「この八人が図書館内に入ってきました」

 女性司書はタブレット端末で監視カメラの映像を見せた。そこにはサラトガ達が映っていたがあのイージス艦のミュータントがいなかった。

 「葛城さん。ルイス・フロイスの影の日本史と三浦按針の陰の日本史を特別に貸し出しの許可を与えます。レプリカはありますので」

 女性司書は許可証を渡した。

 「ここの本は貸し出しはしてないけどいいの?」

 疑問をぶつける翔太。

 「この星の危機だからよ。追手が来ているから案内するわ」

 女性司書は言った。



 沖縄那覇市

 市内にある県庁の知事室に三人の男女がソファに座っていた。

 「那賀根知事。あなたは長年沖縄の米軍基地問題に取り組んでおられました」

 黒人男性は口を開いた。

 「今日、スレイグ大統領が来日しています」

 白人女性が新聞を出した。

 新聞記事にはスレイグ大統領と三宅首相が握手をしている写真が写る。

 「アーネストさん。ルフェさんのご尽力のおかげです」

 那賀根知事はうなづく。

 これまで沖縄のために米軍基地の縮小や辺野古基地の反対を訴えてきた。しかし辺野古基地は米軍と自衛隊の共同使用になってしまったし、沖縄は長年、米軍基地に苦しめられてきた。それがスレイグ大統領が就任して在日米軍基地の削減を発表した。発表してこの十一ヶ月で基地から荷物の搬出や人員の削減があり、基地用地の返還も進んだ。長年に渡って取り組んだ成果である。

 「井之頭教授。あなたのご協力に感謝します。七十五%基地が集中していたのを四〇%になりました。持つべきは政府に近い有力な方々だ」

 目を輝かせる那賀根。

 アーネストはジョコンダ議員の秘書でルフェはアメリカ系ユダヤ人で「アジア協会」の理事である。井之頭教授は中国史を教える大学教授である。ジョコンダ議員にはゼクという秘書もいるが彼はSPでもある。アーネストは彼女の手足となって動いている。

 「大統領は明日の夜に帰国します。着こしたら住民達の前で発表をお願いします」

 井之頭教授は笑みを浮かべた。



 横須賀基地。

 ロビーに入ってくる翔太達。

 振り向く佐久間と青山、山下、広瀬。

 「間村さん達は?」

 翔太が聞いた。

 「佐世保基地よ」

 答える佐久間。

 「僕達は安土桃山時代と江戸時代に特命チームが結成されたのか調べていたんです」

 翔太はルイス・フロイスと三浦安針の二つの「影の日本史」を出した。

 「これって一番ここにあっちゃいけない本ですね」

 あっと声を上げる広瀬と青山。

 「国会図書館は貸し出しができないし、ここにあるのバレたらヤバイ」

 山下が周囲を見回す。

 「女性司書さんが特別に貸し出ししてくれたんです。レプリカはあるみたいです」

 戸惑う智仁。

 「殺害されたサルインの随行員が「影の世界史」を持っていた。その中味は時空侵略者から見た歴史と時空の穴や時空異変の歴史で特命チームはその度に結成された。織田信長や豊臣秀吉、徳川家康の時代にもあったのね」

 佐久間は察する。

 「この基地の門の外にサラトガ達がうろついています」

 フィンがわりこむ。

 「いつもよ」

 答える佐久間。

 「サラトガ達は国会図書館でも追いかけてきた。一度、皇居に戻ってヘリコプターでここに来た」

 智仁が答える。

 「今、スレイグが首相官邸にいるし、CIAだってどこかにいるわね」

 佐久間が周囲を見回す。

 「佐久間さん。「ティムールの呪いの棺」を知っていますか?」

 智仁は話を切り替える。

 「知っている。ハンターはみな授業で習うからね」

 佐久間がうなづく。

 「三日前にその棺が開けられてウズベキスタン政府と魔術師協会、邪神ハンター協会から注意喚起が来ているの」

 不安な顔の広瀬。

 「知っているんだ」

 声をそろえるアナベルとミゲル、翔太。

 「官邸には二日前のアジア有志連合の記者会見後にウズベキスタン政府から警告が来ているの」

 佐久間が答える。

 「僕はこの置物の影響なんだろうけど”ビジョン”が見えた。中国人のスパイが沖縄に入っていて、中国軍が押し寄せてくるという映像だった」

 ジエンからもらった龍の置物を見せながら説明する翔太。

 「その置物は今そこにある危機を知らせる能力がありますね」

 山下はじっとながめる。

 「わかるの?」

 アナベルが聞いた。

 「先人達は願いをこめて造ってますね。未知の機械が埋め込まれている」

 山下は分析する。

 「沖縄には米軍がいたよね。知らせなくていいの?」

 翔太が聞いた。

 「スレイグが大統領に就任してまずやったのは在留米軍の削減だった。まず沖縄から段階的にやって七十五%から四十%に削減した。そして次に在韓米軍をやった。だからTフォースと魔術師協会と邪神ハンター協会は米軍基地跡地をいくつか使っている」

 佐久間が答えた。

 「スレイグが来た理由も基地削減に成功したという自慢と武器と兵器の取引よ。兵器にしても日本はアメリカにとってはいいお客さんだし、日本はその最前線だからね」

 青山が説明する。

 「つまりアメリカはお金と武器と兵器は提供するだけ。また不介入」

 しゃらっと言う山下。

 「なんのための日米同盟かわからないね。カメレオンが米軍を襲わないとは限らない。日本がやられてしまえば次はアメリカだよ」

 翔太があきれる。

 「そのアメリカがアテにならない事がわかったからアジア各国は有志連合を作った」

 佐久間が言う。

 「それにしてもこの本は鍵がかかってるね」

 ヴィドは古文書の鍵穴をのぞく。

 「構造も南京錠と一緒だが専用の鍵がないと開かない」

 エンリコが分析する。

 「これかな?」

 智仁は寄木細工を出した。箱を振ると何か入っている音がする。彼は手馴れた手つきでパズルのような寄木を動かして開けた。

 「すごい・・・どうなっている?」

 アナベルとミゲルは寄木細工を手にとってながめる。

 智仁は古文書の鍵を開けた。

 「三浦按針って誰ですか?」

 ミゲルとアナベルが聞いた。

 「三浦按針は徳川家康に仕えた外国人で本名はウィリアム・アダムス」

 タブレット端末を見せる佐久間。

 江戸時代初期に徳川家康に外交顧問として仕えたイングランド人航海士・水先案内人・貿易家。

 徳川家康がウィリアム・アダムスを外交顧問として雇用した理由は、自領の関東浦賀湊

にスペイン人鉱夫を招聘し、スペイン領メキシコで行われている画期的な金銀製錬法アマルガム法を導入するためであり、その交渉にアダムスをあたらせたという新説を提唱している。その理由として、アダムスは家康と謁見した際、日本との通商を請うたにもかかわらず、オランダとの通商が成立したのはアダムスの日本来航から九年後の慶長十四年(一六〇九年)七月、アダムスの母国イギリスとは慶長十八年(一六一三年)八月であり、しかも、スペインのように家康からの働きかけではなく、両国の東インド会社の使節が派遣されアダムスの斡旋により成立した、いわば家康にとっては受け身であること、家康が浦賀湊の入港を指定したのはスペイン商船のみであること、そのために三浦郡浦賀邸と逸見村の采地を与えたことなどを挙げている。浦賀湊にスペイン商船が入港する都度、西国から商人が浦賀に急行し、浦賀は国際貿易港として賑わい世界にその名を轟かせた。ウィリアム・アダムスのマニラ(スペイン領)交渉により浦賀フランシスコ修道院が建立され、江戸の修道院とともに関東におけるキリスト教伝播の起点となった。


 「ルイス・フロイスやザビエル、三浦按針が日本に来た理由は時空異変が続いていたからよ」

 佐久間は影の日本史を見ながら言う。

 「教科書や歴史書にはないよ」

 ミゲルとアナベル、翔太、智仁が首を振る。

 「歴史は勝者側から作られるし、知らなくてもいい事もあるの」

 佐久間は声を低める。

 「織田信長や豊臣秀吉、徳川家康は異変に気づいていた記述がある」

 広瀬がルイス・フロイスの影の日本史をのぞいて指摘する。

 「日本でも都市の幻影や白い動物が頻繁に現れていたみたいですね」

 山下がわりこむ。

 「戦国時代に特命チームが作られてようですね。天正地震や時空異変の原因が赤鬼、青鬼になっているけど風貌はエイリアンですね。空飛ぶ物体に乗っていて身の丈は二間。一間は一・八だから約三メートル」

 分析する青山。

 影の日本史に書かれているエイリアンの風貌を見せた。

 「ダーラムが変身した姿にそっくり」

 あっと声を上げるアナベル。

 「むしろダーラムの一族はもともと異世界からやってきたエイリアンですね」

 フィンが分析する。

 「環境の違いで進化したと言える」

 エンリコがわりこむ。

 「千年前に君の一族は穏健派と強硬派に別れた。別れた後、ダーラムの一族は異世界を渡り歩きながら侵略と虐殺を繰り返して破壊しながら戻ってきた」

 翔太は少し考えながら言う。

 確証はないけどそうなる。ダーラムの行動を見ればそうだろう。リベルタの大統領になってサルインに侵攻して時空遺物を奪おうとした。タイムスリップ装置を造って部隊を呼ぼうとしたがパンサーアイによって阻止され彼は時空管理局に連行された。

 「この古文書によると織田信長、豊臣秀吉は特命チームの結成を呼びかけて特殊能力者がやってきた。アイヌ民族もいて町民や農民からも能力者が集まり、ルイス・フロイスが連れてきたハンターや帆船のミュータントも何人か入った。そしてエイリアンを追い出して事件は収まる。次の異変は徳川家康の時代に慶長地震が発生。そして都市の幻影や虹色の綿毛が隅田川や利根川に大量に流れ着いた」

 佐久間は説明を読んだ。

 「慶長地震?」

 聞き返す翔太達。

 「慶長地震は、江戸時代初期の慶長七年十二月十六日(一六〇五年二月三日)に起こった地震である。震源については諸説があり、南海沖単独地震説と南海沖と房総沖の連動地震説、遠地地震説など。津波被害による溺死者は約五〇〇〇人(一万人という説もある)

だが、地震による陸地の揺れが小さいのが特徴である。また震源や被害規模も不明な点が多い。津波は夕方から夜にかけて、犬吠埼から九州に至る太平洋岸に押し寄せた。津波襲来の範囲は宝永地震に匹敵するが、後の元禄地震津波や宝永地震津波によって多くの史料が流失したものと推定され、また紀州徳川家や土佐山内家らが移封される前後であったなどの世情から、現存が確認される歴史記録は乏しい」

佐久間は日本地図の太平洋岸を指揮棒で指さしながら説明した。

「原因は鬼や大百足を多数引き連れた異邦人である。「侵略者」は紫色の帽子に、瞳は紫色。髪に紫色のメッシュが入っている。変身すると紫色のまだら模様のある魔物に変身する。褐色の肌の男は鹿のような角を生やした桃色の肌の鎧武者に変身する」

フィンが分析する。

「この帽子はどう見てもターバンだし、褐色はたぶん黒人ね。ダーラムの一族の誰かと時空侵略者がやってきた。サブ・サンの代わりにやってきた時空侵略者は「侵略者」よ」

推測する佐久間。

「じゃあ知らせないと」

アナベルがあっと声を上げる。

「たぶんお父さんが官邸に教えている。時空管理局と接触している」

それを言ったのは翔太である。

「都市伝説だと思った」

広瀬、山下、青山が声をそろえる。

「それは後で考えるとして慶長地震の原因は時空侵略者である事を知った徳川家康は特別チームを召集した。特殊能力を持つアイヌ人や琉球から王朝関係者、三浦按針、武士、農民、商人が集まった。時空侵略者を追い出した彼らは時空の王錫をバラバラにした。その一つを琉球から来た女が持っていった」

佐久間が説明する。

「沖縄に行こう」

翔太は言った。


 

 中国の中南海

 「ミサイルは撃ち落されたならじゃあ何で攻撃する」

 周主席は声を荒げた。

 大連基地は使用不能で北海艦隊も艦船がほぼ沈没か大破で修理しないとダメで湾内も空飛ぶ空母の残骸や沈船の残骸で機能は完全にマヒしている。上海のサイバー部隊が入ったビルも襲撃されてコンピュータウイルスで使い物にならない。ミサイルもTフォースによって撃墜されて世界に恥をさらしている。

 「沖縄の米軍基地は削減政策で人員も武器も半分です」

 紀英州がピラトと一緒に紫色のターバンの男と一緒に入ってきた。

 「誰だね?」

 指をさす李遜花首相。

 「時空侵略者だ」

 程府公安部長が気づいた。

 「ネピュラ」

 紫色の瞳に黒髪に紫色のメッシュが入った男は名乗る。

 「私は三百年前の日本に来ているんだ。でもね追い出されているんだ。ダナエ様のモットーはそこに住む住民達を半分にすれば支配しやすくなる。沖縄にスパイと協力者がいる」

 部屋内を歩き回るネピュラ。

 「沖縄には中国人スパイと協力者がいる」

 程府が口をはさむ。

 「おたくのスパイをフル活用させていただきます。明日にはスレイグは帰る。明後日の朝に沖縄知事は独立を視野にいれた宣言をする。それを合図に一気に攻め込む」

 ネピュラが自信ありげに説明する。

 「簡単に言うな」

 ジャスミン茶を飲む周主席。

 「日中中間線にあるガス田をテレポートアンカーに改造して送り込む。時空の揺らぎを一時的に造ってしまうのです」

 ピラトが答える。

 「タイムラインがどうのとか言わないよね」

 李遜花首相が声を低める。

 黙ってしまうネピュラ。

 「タイムラインを使い尽くしたらこの国から出て行ってもらう」

 周主席はドスの利いた声で言った。



 第三管区横浜保安部

 二階の会議室に入ってくる沢本、三神、朝倉、大浦、三島の五人。

 部屋にアレックス、リドリー、キム、ぺク、李紫明、李鵜と烏来がいた

 「帰ったんじゃないの?」

 大浦が聞いた。

 「また中国軍に動きがあるんだ。波王艦隊が動き出した。南シナ海にいる海警船も北上していて温州基地に向かっている」

 李鵜が中国沿岸の地図を出した。

 「中央ザイード軍の艦船も他の船舶に偽装してそこに向かっている」

 アレックスが衛星写真を出す。写真には大型コンテナ船とタンカーが映っている。

 「那覇海上保安部に集まる事になる」

 更科教官が口を開く。

 「沖縄の米軍基地はどうするのですか?」

 三神が聞いた。

 「スレイグが大統領に就任してまずやったのは在日米軍の削減だ。七十五%集中しているのを四十%に削減を本当にやって基地用地の返還もやっているが普天間、嘉手納基地、辺野古基地といった重要な場所は手放さない」

 更科は沖縄の地図を出す。

 「ある意味、沖縄は米軍基地に悩んできたから削減されて喜んでいる」

 沢本が推測する。

 「一番喜んでいるのは那賀根知事でスレイグが帰国したら広場で集まって歓迎パーティをやると言っている」

 李紫雨があきれかえる。

 「でも沖縄には中国人スパイや協力者がけっこういるのよ」

 烏来が声を低める。

 「なんか嫌な予感」

 朝倉がわりこむ。

 「逮捕された田宮議員はダナエのスパイだけど協力者の仲介で来た。協力した関係者には大物議員や経済界に影響のある人物や芸能人も挙がっていてみんな一緒に刑務所行きになった」

 三島は新聞を出した。

 新聞にはよくTVに映る議員や芸能人が映っている。

 「逮捕者が増えそうだな」

 しれっと言う三神。

 紙面を見ると野党議員だけでなく地方議員や芸能人、経済界に影響力のある人物まで逮捕されている。沖縄にはもっといそうだ。

 「それとTフォース本部からなんだけどサブ・サンは帰ったけど別の時空侵略者がダナエといるそうよ。その甥のピラトが北京にいて時空侵略者を連れてきたそうよ」

 リドリーが声を低める。

 「冗談だろ」

 沢本達が声をそろえる。

 「北朝鮮の大使が中国の中南海へ行ったらピラトが別のエイリアンを連れてきたのを目撃している。そいつは紫のターバンに黒髪に紫色のメッシュがはいっていて瞳は紫色よ。手首には宝石が三個はまった銀の篭手をはめているそうよ」

 リドリーは似顔絵を出した。

 「なかなかのイケメンね」

 李紫雨がしれっと言う。

 「パンサーアイメンバーが言うにはダナエは金の篭手を持っていて宝石が五個はまっているそうよ」

 リドリーが篭手の概略図を書いた。

 「中国政府は国連安保理の要請をあまり聞かないそうよ。それもそうよね。ダナエやピラトを追い出さないと話にならないかも」

 大浦が腕を組む。

 「ダナエの一族は内戦や紛争地に介入して住民の虐殺や破壊をかならずするそうよ。ダーラムやダナエの一族のモットーはどこも人口問題と食糧難を抱えているから住民を半分殺せば支配や統制するのは楽チンになると言っているそうよ」

 リドリーがため息をつく。

 「そんな論理が通用するわけがない」

 ぺクが声を上げる。

 「いずれにしても沖縄にいかないとダメね」

 大浦が言った。



 その頃、首相官邸

 会議室に自衛隊の幹部、閣僚達が顔をそろえ、向かいの席に台湾代表部の代表、ロシア大使、サルイン大使、フランス大使が顔をそろえていた。

 「リューコフ大使。ロシアの立場はわかっています」

 三宅首相は口を開いた。

 北方領土の話に来たわけではないのは知っている。

 「サブ・サンは帰ったが新たな時空侵略者が入ってきたというのを北朝鮮の大使から聞いた。サブ・サンの同じ世界からやって来て

「侵略者」のネピュラ」

 身体的特徴や似顔絵を出すリューコフ大使。

 端正な顔立ちに紫のターバン。紫の瞳に黒髪に紫色のメッシュが入る。ピッタリフィットした紫色の戦闘スーツに銀色の篭手をはめている。

 「ダナエと一緒にいるそうです」

 フランスのエミル大使が口をはさむ。

 「古文書によるとダナエの一族はフェデリコ国王の一族と別れた後、異世界から異世界に渡り歩き虐殺や破壊をしながら時空遺物を求めて戻ってきた事になります。彼女の一族達が虐殺して破壊して住民を半分にする理由はどこも人口問題と食糧難を抱えていたからその悩みを解消させてあげた。解消して食料も行き届くようになり統制しやすくなったから感謝されている・・・だそうです」

 サルインのミミル大使は古文書のレプリカを見せた。

 「一番最悪な一族だ」

 小野官房長官が口を開く。

 「ヒトラーがやらない事をやったね」

 三宅は腕を組んだ。

 「ここには三百年前の日本で時空異変が続出して織田信長、豊臣秀吉の時代、徳川家康の時代に特命チームが結成された記述があります。種子島に来たザビエルは時空の異変を察知して来日しています。そしてルイス・フロイスは特命チームに参加して「影の日本史」を書いています。徳川家康に仕えた三浦按針は邪神ハンターで特命チームに参加して彼も

「影の日本史」を書いています」

 ミミル大使は説明した。

 どよめく閣僚達。

 「初耳だ」

 石崎防衛大臣が口を開く。

 「どこで見つけたのですか?」

 三宅が身を乗り出す。

 「葛城長官の息子さんと智仁さま、アナベルさまとミゲル王子です。国会図書館で見つけたそうです」

 ミミル大使が答える。

 「それによると織田信長、豊臣秀吉の時代にやってきたのは赤鬼、青鬼の軍勢で徳川家康の時代にやってきたのが親玉と黒鬼と獅子の軍団」

 台湾の鮫峰邦代表が指摘する。

 古文書の解説と絵を見せる。

 そこには雄牛のような角を生やし赤肌のエイリアンと青い肌のエイリアンである。どれも身の丈が三メートルある。なんとなく二体はダーラムの変身した姿に似ている。そして親玉の方は紫色のターバンに紫の瞳、端正な顔立ちに篭手をはめている。その配下は二本の角を生やした暗褐色の皮膚に軽装備の鎧を着用している。獅子は饕餮に似ていた。

 「江戸時代にダーラムの一族の誰かが来て特命チームに倒されたようですね」

 楠木統合幕僚長がわりこむ。

 「スレイグが来日していますね。有志連合に加わるというような話はないですね」

 鮫峰邦代表は声を低める。

 「彼は武器を売りに来たと思っている。一番にやった政策は米軍基地の削減をすごい自慢していた。政権の運営と国内政策がうまくいっていないじゃそうなるね」

 外務大臣があきれる。

 「そして自衛隊と特命チーム、パンサーアイチームが回収した粒子砲や中央ザイード軍の軍艦と兵士の情報がほしい。ジョコンダとスレイグのほしいものが重なっています」

 石崎大臣がうーんとうなる。

 「あれはTフォース本部が全部持っていった事を話したらすごい残念がっていた。情報が入手できなくて困っているみたいだね」

 外務大臣が推測する。

 「ある意味成功だね」

 石崎大臣がうなづく。

 「中国軍に動きがあり温州基地に波王艦隊とカメレオンの海警船が集結しています。沖縄周辺をカメレオンの中国漁船がうろついている」

 TVモニターに衛星画像を出した。そこには光る模様がついた大型漁船と空母「波王」と海警船が北上している映像だ。

 「次はどうやら沖縄ですね。中国は数年前から沖縄は中国のものと言っているし、中国人スパイや中国人協力者を入れている。那賀根知事はすっかりスパイのハニートラップにはまり中国の親派になっている。国会議員にも親中派はいますね。それにスレイグが帰国したら明後日の朝は広場で歓迎パーティをやろうと言っている」

 三宅は沖縄の地図を出した。

 中国は政策的に中国人スパイや協力者を他国に侵入させて懐柔させる。そして最後は乗っ取り中国にしてしまう。最終目標は全世界を中国にしてしまう事だから野望を叶えるためにスパイ達は日夜活動している。

 「ウワサではそこで独立宣言をするらしいですね」

 国土交通大臣がふと思い出す。

 「やるならやれば。我々はそのバカ騒ぎの間に準備をするだけです」

 眼光が鋭く光る三宅。

 「我々としても南シナ海にいるカメレオンと南海艦隊、中央ザイード軍をなんとかしたい。どこかに司令部と中継基地があります」

 鮫峰邦代表はうなづく。

 「ここで団結しなければダナエの一族による虐殺が始まる。協力する」

 リューコフ大使は言った。



 その頃、警視庁魔物対策課

 資料を整理する名取。

 報告書を書いている五十嵐課長

 部屋に入ってくるカルルとフラム。

 資料を見ていた田代、羽生、エリックと和泉が振り向いた。

 「帰ったのはないのですか?」

 驚きの声を上げる名取達。

 「羽田空港から引き返してきたの。本国のセントラルプライム署からメールが送られてきてこいつが日本に入国している」

 カルルはタブレット端末を見せた。

 「この人はアジア協会の理事ヌーガン・ルフェ。この人はジョコンダの秘書でアーネスト・ロウですね」

 名取は指摘する。

 「それとこの人にも注意というのがTフォースから来ている。井之頭松治教授。中央ザイードのピラトと北京で接触している」

 フラムは息を整えて写真を見せた。

 「ジョコンダ議員にはゼクという秘書がいるけどもう一人いるの?」

 田代が聞いた。

 「ゼクは時空魔術師でSP。アーネストは小間使いの秘書」

 カルルが答える。

 「アジア協会って?」

 エリックが聞いた。

 「中国政府のフロント企業。表向きは中国人の仕事の斡旋だけど裏はスパイやハニートラップをする。中央ザイードのダナエとつながっている」

 フラムが指摘する。

 「井之頭教授は中国の協力者を増やす事。那賀根知事は米軍を削減を言い続けてきた。スレイグの選挙公約の一つが在留米軍の削減で就任すると真っ先に沖縄の在日米軍を削減して七十五%を四十%にした。でも嘉手納やキャンプシュワブ、辺野古基地といった重要な所は手放してない」

 沖縄の地図を出して説明するカルル。

 「スレイグが明日には帰るから広場で米軍の削減成功の歓迎どんちゃんパーティをやるみたいなんだ」

 フラムが沖縄県庁のHPを出した。

 「パーティをやるのは勝手だけどスパイを逮捕しないとダメね。沖縄に行きましょ」

 田代がうなづく。

 「Tフォースからなんだけどカメレオンクイーンの空母「波王」と空母打撃群と海警船が温州基地に集結していて沖縄近海にカメレオンの漁船が出没しているという注意喚起が来ている」

 五十嵐課長がノートPCを見せる。

 「魔弾銃を持っていかないとダメだな」

 羽生は言った。



 海上自衛隊佐世保基地

 立神岸壁に護衛艦「かが」が停泊している。

 ミーティングルームに十二人の男女の自衛官が入ってきた。

 「本田艦長。間村隊長。宇都宮駐屯地から来ました佐々しのぶです。陸上総隊から特命チームにくわわるように言われました」

 女性自衛官が名乗った。

 「小松基地から来た守屋明美です。航空総隊から同じく来ました」

 女性パイロットは名乗った。

 「君らは特命チーム混成機動団としてここにはいない青山、山下、広瀬、佐久間と一緒に別の行動を取ることになる」

 本田艦長は口を開いた。

 「防衛出動になるのですか?」

 佐々がたずねた。

 「まだ出てはいない。敵もスレイグ大統領がいたら襲ってこない」

 間村が答える。

 「沖縄近海にカメレオンの漁船が出没していて中国の温州基地に波王艦隊と海警船が終結しているのは本当ですか?」

 守屋がたずねた。

 「それは本当だ。アメリカも衛星で察知しているハズだが何も言って来ない。武器を売りに来たと思っている。日本には米軍のような大兵力はない。集結する前に各個撃破しないと防衛は無理だろう。遼寧と蘭州がいるミュータントの空母打撃群の足止めをする。ミュータントの海警船は沿岸警備隊チームメンバーが攻撃する。月夜の花チームは中央ザイードがつれて来る魔物を退治する」

 本田は沖縄の地図を出して説明する。

 「沖縄本島は誰が?」

 佐々が聞いた。

 「特命チームと俺達と海保のミュータント達がなんとかする」

 間村が答える。

 「中国政府がまともに考える頭があれば国連決議を受け入れる。周永平もすっかりダナエのとりこだろうな」

 室戸が腕を組む。

 「沖縄には米軍基地がありますね。あの四人は?」

 守屋がふと思い出す。

 「すでに不介入と決めているなら米軍だって情報を得ているから二四時間以内に退去するだろうな」

 霧島が言う。

 「なんのための日米同盟かわからないですね。前回も不介入で今回も不介入ですね」

 「ただの居候ですね」

 佐々と守屋が声をそろえる。

 「それも俺達だって思っている。アメリカがアテにならないなら日本がやるしかない。俺達は準備に入る」

 間村は声を低める。

 守屋達は深くうなづいた。



 首相官邸

 三宅首相、小野官房長官、石崎防衛大臣、外務大臣と自衛隊の幹部が顔をそろえ、向かいの席にスレイグ大統領、ドーソン国務長官、ブレガー国防長官、外務大臣、米軍の将校が顔をそろえていた。

 海外メディアと国内メディアは追い出されて部屋にはいない。

 「大統領。アメリカは最終的に不介入ですね。今日来たのは貿易問題と武器を売りに来た。そして中央ザイード軍の情報がほしいから来たんですね」

 三宅首相は鋭い質問をした。

 ムッとするスレイグ。

 「そう言う事になるだろう」

 ややあって答えたのはブレガーである。

 「ブレガー長官。あなたは若い頃、Tフォースからオファーが入って、葛城茂元長官や勝元長官と一緒に戦った事があるからわかりますよね。Tフォースが回収していくのを」

 たたみかけるように聞く石崎大臣。

 深くうなづくブレガー。

 「それとまたこの四人と二両の戦車とこの二人を使って智仁さま達を皇居や日光東照宮や国会図書館で尾行して横須賀基地の周りをウロつく。まるでストーカーですね」

 外務大臣が声を低める。

 「太平洋艦隊司令部のバリン司令官まで連れてきたのですね。Tフォースにお問い合わせすればいいじゃないですか」

 楠木統合幕僚長が口をはさむ。

 「おたくの海保の巡視船は我々が中国軍をわざと入れたという濡れ衣を着せたから私が来たんだ」

 バリン司令官は口を開いた。

 「おたくの空母は急ぎ足で横須賀をお供をつれて北上しましたね。それと入れ違うように遼寧達がやってきた」

 石崎大臣は地図を出して説明する。

 「それにインド軍とロシア軍の空母も口の聞き方が汚いね」

 マーク司令官がわりこむ。

 「それは我々のせいではありません」

 三宅が否定する。

 「インド政府とロシア政府に抗議した」

 米側の外務大臣がしれっと言う。

 「相手にされなかったようですね」

 小野官房長官がわりこむ。

 「沖縄近海にカメレオンの漁船が出没していますし、中国の温州基地に波王艦隊と海警船がいてバロックやネピュラ、ピラトがいる。沖縄にやってくれば沖縄にいる米軍も巻き込まれますね。我々も自国民を守るのが精一杯だから米軍基地まで手が回りません」

 三宅はスクリーンに沖縄の地図を出して説明する。

 「衛星で見て知っているのにまたダンマリですか」

 石崎大臣がわりこむ。

 歯切りするマークとバリン。

 「情報では沖縄の那賀根知事は米軍削減を祝って歓迎パーティをやるそうじゃないか。そこで独立宣言をするがどうする?」

 スレイグが聞いた。

 「そんなのは勝手にやってください。独立したら我々は面倒は見ません」

 はっきり言う三宅。

 どよめくアメリカ側の閣僚達。

 「沖縄を切り捨てるのですか?」

 バリン司令官が声を低める。

 「独立したいならね。今は忙しいから面倒は見れません」

 たたみかけるように言う石崎大臣。

 「今、ほしいのはあのサラトガ達です。彼らを貸してくれませんか?」

 結論を言う楠木統合幕僚長。

 難しい顔をするバリン司令官。

 「日米同盟と日米地位協定をまたよく考えた方がいいですね」

 三宅が資料を出した。

 「日米同盟の深化じゃなくて考え直すのと日米地位協定の改定案。誰のおかげでここまで経済発展できたと思っている。我々のおかげではないか」

 目を吊り上げるスレイグ。

 「今、直面している問題はカメレオンとダナエの問題ですぞ!!ダナエとどんな条約をかわされたのですか」

 顔を朱に染めて机をたたく三宅。彼はスクリーンにダナエと握手をしている写真と宝石に囲まれて笑うスレイグの写真を出した。

 「・・・」

 急に黙ってしまうスレイグ。

 「いったん休憩してまた考えましょう」

 ややあって小野官房長官は言った。



 夕方。那覇空港

 出国ゲートからロビーに出てくる翔太、アナベル、ミゲル、智仁、ヴィド、フィン、エンリコ、佐久間、広瀬、青山、山下。

 「やあ」

 ロビーにいたクリス、アイリス、レジーとレイスが声をかけた。

 「うそつき空母」

 開口一番アナベルは指さした。

 「黙れよ」

 ドスの利いた声のクリス。

 「幹部候補生がいてハンター見習いなんて特命チームに入れてどうするの?」

 わざと言うアイリス。

 ムッとする広瀬、青山、山下。

 「役に立ちそうにないね」

 レジーとレイスがはやしたてる。

 「金魚のウンコ」

 広瀬は指さした。

 「黙れよ」

 クリスがわりこむ。

 「アイリス。君はハンター失格だね。ハンターの宣誓を破ると刑務所行きだね」

 翔太は指摘する。

 「米軍は不介入だね。がっかりだね」

 ミゲルが口をはさむ。

 黙ったままのアイリス。

 「ここでは魔術は使えないわね。あんた達がほしい物はないわ」

 はっきり言う佐久間。

 「波王艦隊がやってくればここは戦場になる。帰れば」

 青山が指摘する。

 「なら力づくで」

 目を吊り上げるクリス。

 「警視庁です」

 「インターポールです」

 「魔術師協会です」

 いきなりわりこむ羽生、田代、カルル、フラム、エリックと和泉。

 「なんでいる?」

 驚くのレジーとレイス。

 「捜査の一環。留置場に行きますか?」

 羽生は警察手帳を見せる。

 「なにも問題も起きていない。帰るぞ」

 クリスは舌打ちしてアイリス達と一緒に去っていった。

 


 「速報が入ってきました。日米協議は物別れに終わった模様です」

 女性アナウンサーが口を開いた。

 「日本政府関係者によると会議が荒れたようですね。彼が来た理由も特命チームとパンサーアイメンバー、Tフォースが中央ザイード軍の残骸を持っていった事に怒っているいるようですね」

 専門家が説明する。

 「一度、首脳会談が中止になったのを急遽来日する理由はなんでしょうか?」

 くだんのアナウンサーが聞いた。

 「時空遺物がからんでいるようですね。大統領が若い頃、邪神ハンターでしたが厳しい訓練に耐えられず違法なハンターになり魔術師協会やハンター協会から破門されています。彼自身が古代遺物のコレクターでもあります。今回来日した理由はアメリカが参戦ではなく武器を売りに来ただけですね」

 専門家が困惑する。

 「それだけですか?」

 「参戦するとは言っていないのでトマホークミサイルやF-35戦闘機、武器をこの後、受け取る事になっているようです」

 「なんでアメリカは参戦しないのでしょうか?」

 「アジアだけで起こっているという認識ですね。パンサーアイが結成されたのもアフリカのサルインとリベルタの戦争でカメレオンの地上部隊が確認されダーラム大統領は時空侵略者の部隊を呼ぼうとしていたのを阻止しました。アフリカだけの問題では片付けられない問題になっています」

 「今回もアジアだけの問題だと思っているのでしょうか?」

 「自分の国に危機が及ばないと本腰は入れないと思いますね」

 専門家は答えた。

 「新たな速報が入ってきました。隅田川、荒川、利根川、多摩川、京都の鴨川で虹色の綿毛が大量に流れてきたとの情報が入ってきました」

 くだんのアナウンサーが口を開く。

 画面が切り替わり、直径十センチのフワフワの七色の綿毛が浮きながら流れていく映像が映される。

 「どこかで時空の揺らぎか時間の穴が出現しているようですね」

 男性アナウンサーがわりこむ。

 「警察、魔術師協会、ハンター協会、Tフォースからの注意勧告が来ています。虹色の綿毛には絶対に触らないでください」

 女性アナウンサーは注意する。

 「また速報が入ってきました。台湾、韓国、ロシア、モンゴルで戒厳令が出されています。理由は中国の温州基地にカメレオンクイーンである波王の空母打撃群、海警船が集結している模様です」

 男性アナウンサーは言った。

 

 

 那覇市内にあるTフォース事務所

 「佐久間さん。古文書と同じ事が起きています」

 智仁がTVを指さした。

 「大変だわ。どこかに時空の揺らぎがあるか、穴がある」

 広瀬が指摘する。

 TVニュースに多摩川、利根川、荒川、隅田川、京都の鴨川に大量の綿毛がフワフワ浮きながら流れていく様子が映る。河川敷や橋には多くの野次馬がいた。規制線をはる警官やハンター達がゴミ袋を持って一生懸命回収しているが続々やってくる。

 翔太が持っている龍の置物が鳴いた。脳裏にフッと入ってくる映像。海がそばの基地や上海、香港といった都市にテレポートアンカーがあるという映像だった。

 「たぶんテレポートアンカーの送信装置のせいだと思います」

 中国の地図を出す翔太。

 「テレポートアンカーのそばには発電所があるわね。膨大なエネルギーを消費するから発電所が必要なのね」

 佐久間は地図をのぞく。

 「青島、寧波、温州、上海」

 青山があっと声を上げる。

 「大連基地と北海艦隊はどうやら使用不能と壊滅に近いから稼動してないですね」

 山下が指摘する。

 大連でパンサーアイと特命チームは大暴れしてビックガンがバロックと戦って基地の建物を半壊させて間村隊長達が大多数の艦船と戦闘機をミュータントもろとも撃沈か撃墜させて他の船舶と周辺の建造物もかなり破壊して空飛ぶ空母も沈めたから北海艦隊は来ないと見ている。

 「あんなに大量の綿毛は初めてだけど時空の揺らぎの実験をしていると思う。それをたぶん沖縄に使おうとしている」

 それを言ったのはアナベルである。

 「それはまずいな」

 顔がくもる羽生とエリック。

 「たぶん、スレイグが帰ったら襲ってくるわね」

 カルルがうなづく。

 「沖縄県庁に行こう。那賀根知事に言ってパーティをやめさせよう」

 翔太がうなづく。 

 「素直に受け入れるといいけどね」

 心配する和泉。

 「那賀根知事は県庁みたいです」

 ミゲルはホームページを見せた。


 三十分後。沖縄県庁

 「誰だね。入れたのは?」

 腕を組む那賀根知事

 「警視庁です」

 「インターポールです」

 「魔術師協会です」

 羽生、田代、カルル、フラム、エリック、和泉は手帳を見せた。

 「君は?」

 不機嫌な那賀根知事

 「海上自衛隊の佐久間、青山、山下、広瀬です」

 佐久間は答えた。

 「そこの人は葛城長官の息子さんとミゲル王子、アナベル王女、智仁さまと付き人」

 那賀根知事が声を低める。

 「知事。この人達を知っていますね」

 羽生は写真を見せた。

 「アーネストさんとルフェ理事、井之頭教授ですね。朝、会いました」

 那賀根知事は答えた。

 「アーネストはジョコンダの小間使い秘書でルフェは中国のスパイでダナエと関係があり、井之頭教授は中国の協力者です」

 田代は説明する。

 「中国のスパイと協力者をたくさん入れましたね」

 青山が詰め寄る。

 「沖縄は長年、米軍基地に苦しめられてきた。太平洋戦争の敗戦で米軍に占領され数十年後に日本に復帰した。米軍基地の七十五%は沖縄だ。彼らは基地の削減に尽力してくれた。Tフォースは何もしなかったね。茂元長官も勝元長官も何もしなかったし君のお父さんも何もしない」

 那賀根知事は身を乗り出す。

 ムッとする翔太。

 「やっと削減がかなった。だからパーティをするんだ」

 何か吹っ切れたように言う那賀根。

 「国際通りの隣接している広場でどんちゃん騒ぎをやって独立宣言する事ですか?」

 フィンがわりこむ。

 「中国の言いなりですね。ジョコンダ議員とどんな取引したのですか?カメレオンや時空侵略者はかならず裏切りますよ」

 ビシッと指をさす佐久間。

 「失礼じゃないか!!日本政府に自衛隊基地の削減を訴えてやる。米軍削減がかなったのにTフォースと魔術師協会とハンター協会、陸海空自衛隊が入ってきた。だからそれも追い出してやる」

 目を吊り上げる那賀根。

 「本気で言っていますか?基地削減して代わりにディズニーランドやUSJを入れるんですか?」

 智仁が指摘する。

 「宮内庁にクレームを入れるし、サルイン政府とサウジ政府にも自衛隊にも苦情を入れるし失礼すぎる」

 机をバンバンたたく那賀根。

 「今、どういう状況か理解できていますか。中国軍はあきらめてません」

 食い下がる青山と広瀬。

 「不審者はここですか?」

 警備員が十人入ってきた。

 「あっ、中国人スパイだ」

 アナベル、ミゲル、智仁、翔太は警備員達を指さした。

 羽生は警備員の腕をねじ上げてナイフを取り上げた。

 「警視庁です。公務執行妨害で逮捕です」

 田代は警察手帳を見せる。

 目が泳ぐ警備員達。

 「出て行きなさい!!」

 那賀根は声を荒げた。

 

 

 那覇海上保安部

 「沢本さん達だけじゃなく秋山さん達もここに来ているんですね」

 翔太は驚きの声を上げた。

 普段は福岡海上保安部にいるミュータント達が那覇にいるのはよっぽどの事である。

 「俺達は那賀根知事に歓迎パーティをやめるように通告する所だったんだ」

 三神は口を開く。

 「それは無理かもよ。那賀根知事はすっかり中国のとりこだし、県庁職員や市役所の職員の半分は中国のスパイか協力者だよ」

 青山はさじを投げた医者のように言う。

 「リストも図鑑並みになりそうだ」

 しれっと言う羽生。

 「それにTフォース本部からだけど温州基地に波王艦隊と海警船が集結している。そして寧波、青島、温州、上海にテレポートアンカーと発電所がある」

 佐久間が中国の地図を見せた。

 「破壊に行かないと」

 三神と朝倉が声をそろえる。

 「それは自衛隊がやる。中央ザイードの艦船のミュータントも合流するかもしれない。合流したら時空の揺らぎを海上や上空に出現させて一気にやってくる。敵は基地がある場所を攻撃してくる」

 佐久間は地図を指さしながら説明する。

 「だから尖閣専従部隊の連中まで呼ばれたのか」

 納得する沢本。

 「私達四人は特命チーム混成部隊として「かが」にいる他の自衛官と別働隊として動く事になっている。戦いが始まればパニックが予想される」

 佐久間は声を低める。

 「僕達は時空の王錫の手がかりを求めて沖縄に来ました」

 智仁が口を開く。

 「それは後ね。もうすぐ防衛出動になる。あなた方は本土に戻りなさい。那覇空港はスレイグが日本を離れると同時に閉鎖され、フェリーも閉鎖される」

 佐久間は言い聞かせるように言う。

 「スレイグが日本を離れて知事の独立宣言が出れば敵は攻撃してくる。周辺国も戒厳令が出ている」

 山下は念を押す。

 「Tフォースのオスプレイを出すわ。行き先は福岡海上保安部になる」

 佐久間は言った。



 翌日の午後。首相官邸

 会議室に閣僚達が顔をそろえていた。

 「大統領は予定よりも五時間早い帰国ですね。沖縄の米軍にも動きがあります」

 楠木幕僚長はスクリーンを出した。

 監視カメラに映るのはあわてて荷物を運び出す米兵達の姿である。

 「日米共同声明は出したとたんに動き出しましたね」

 あきれる三宅。

 日米共同声明は出した。でもこれまでどおりに日米同盟はそのままと言ったがアメリカが参戦する話はまったく出てない。会見室では海外メディアや国内メディアが集まってきている。

 部屋に秘書が入ってきてメモを出した。

 三宅はTVをつけた。

 「速報が入ってきました。那賀根沖縄県知事の会見が始まります。

 会見室に那賀根知事が入ってくる。

 「沖縄は長年米軍基地に悩まされてきました。削減を呼びかけようやくそれがかなったのです」

 那賀根知事は丸い目を大きく開けてTVモニターをつけた。そこにはたくさんの米軍機とオスプレイと輸送機が飛び去っていく姿が映っている。

 記者達がざわついた。

 「米軍基地を削減したのに代わりに自衛隊とTフォース、魔術師協会、ハンター協会が入ってきたのでそれも追い出す運動をしているのです。そこで沖縄は日本から独立をしたいと思います。みんなで広場で歓迎パーティを開こうと思っています」

 目を輝かせながら言う那賀根知事。

 「知事。台湾、ロシア、韓国、モンゴルで戒厳令が出ています」

 「Tフォースから中国の温州基地に波王艦隊と海警船が集結しているとの通告がありましたが?」

 「独立してどうされますか?」

 記者達が矢継ぎ早に質問する。

 チッチと人差し指をゆらす那賀根

 「カメレオンクイーンである波王と話し合いをするのです。話し合いができるということを日本政府にわからせてやるのです」

 もったいぶるように言う那賀根。

 「時空侵略者やカメレオンはかならず裏切りますよ」

 「中国政府に時空侵略者が入っているから国連決議に応じませんが」

 「だから戦いになるのでは?敵を沖縄に入れるのですか?」

 記者達が驚きの声を上げる。

 「そんなものはフェイクニュースだ。Tフォースにもそうじゃないと見せてやるのです。みなさん広場に行くのです」

 那賀根はドヤ顔でビシッと指をさした。

 記者達はしらけていた。

 

 「すっかり知事は中国にすっかり丸め込まれているね」

 あきれる小野官房長官。

 「インターポールや警視庁の話だと県庁や市役所、警察の半分は中国のスパイか協力者だそうです。市民の半分は中国の協力者と見ています」

 石崎大臣が分厚いリストを出した。

 「本当にどんちゃん騒ぎをやろうとしている。こっちはこっちで迎撃準備に移らせてもらうだけです」

 冷静な三宅。

 中国政府の最終目的は全世界を中国にしてしまう事。沖縄はそのスパイ達の基地にもなっている。この機会だから全部炙り出すチャンスだ。

 「会見室に多くのメディアが集まっているので顔をだします」

 小野官房長官は退室した。


 「中国の温州基地にカメレオンが多数集結中との情報ですが?」

 「沖縄の米軍基地から多数の米軍輸送機が飛び立ちました」

 「アメリカは今回も不介入ですね」

 「寧波、青島、上海、温州に発電所と一緒にテレポートアンカーあるのは本当ですか?」

 「沖縄の那賀根知事は独立宣言を出しましたがどう思われますか?」

 「沖縄が独立したいならすればいいじゃないですか。独立したら自分の身は自分で守ってください。Jアラートも外しますし、自衛隊基地も引き上げますよ」

 質問に答える小野官房長官。

 「え?」

 「沖縄を見捨てるのですか?」

 「いいえ?知事は独立宣言を出したんでしょ。独立するなら自分の身は守れという事です。当然でしょ」

 しゃらっと答える小野官房長官。

 「えええええ!!」

 驚きの声を上げる記者達。

 「今回もアメリカは不参加です。自分の国に危機が及んでませんからね。それに時空侵略者の恐ろしさをわかっていませんね。アジア有志連合ができておもしろくないのかもしれませんね」

 小野官房長官はしれっと言う。

 「武器を売りに来ただけ?」

 「そうですね。簡単に言うとそうなりますし、中央ザイードの情報がほしかったようですがあれはTフォースが持っていったのでここにはありませんと答えたら残念がっていました」

 「上海、寧波、青島、温州にテレポートアンカーがあるのは情報に入っています」

 どよめく記者達。

 「韓国は何も言ってこないですが?」

 「韓国はほっとけばいいじゃないですか」

 どっと失笑がもれる。

 記者団から多数の手が挙がる。

 すると秘書が部屋に入ってきてメモを渡す。

 「ただいま緊急安全保障会議が召集されました。私も出席しなければならなりません。おって会議の結果はのちほど発表します。陸海空自衛隊はすでに緊急警備体制に入っている事を申し述べておきます」

 そう言うと小野官房長官は足早に去っていった。

 数十分後、記者団は首相官邸の玄関口に陸海空の三総監が到着したのを見た。自衛隊の車両に制服姿である。

 このあとすぐの午後の時間帯にはどのTV局も特番を組んだ。

 「目下、首相官邸で安全保障会議が開かれております。動きがあり次第、報道します」

 「さきほどから那覇空港、沖縄に向かうフェリー及び。沖縄から出るフェリーは全便欠航で港は閉鎖されました」

 アナウンサーは全国の視聴者に向けて告げた。

 前回の尖閣諸島の戦いでは戦後初めて中国軍とカメレオンを追い出した。二回目はパンサーアイと特命チームと自衛隊で中国軍と中央ザイード軍を追い出した。しかしまた中国軍はやってくる。これで三回目である。その背景には新たな時空侵略者が中国政府に入り込んでいる事を国民は嗅ぎ取っている。

 早くも七十二年前の泥沼の戦いを危惧する国民も少なくない。

 与党や野党議員からも

 「沖縄を見捨てるなんてありえない」

 という声が相次いでるが

 「話し合いで」

 という声は少なくなっていた。



 政府の方針は決定している。会議の内容も今から方針を決定するといった能天気なものではない。

 「三自衛隊は今朝より臨戦即応体勢に入るとともに、防衛省には統合作戦司令部設置の準備を進めております」

 石崎防衛大臣の説明に列席している三人の総監は深くうなづいた。

 「敵は沖縄にやってくると思われます。太平洋沿岸から侵入しようとした敵はパンサーアイや特命チームによって阻止されています。従って米軍基地が削減が進んだ沖縄にやってくると思います。さっき知事が独立宣言を出したのを機に寧波、青島、上海、温州上空で高エネルギーが観測されその数値は沖縄上空のエネルギー値は同じです」

 石崎大臣は説明した。

 事態はどう展開するか。懸念はある。それは自分達だけでなく国民すべてに共通していた。


 那覇上空。

 広場に集まる市民達。

 壇上に上がる那賀根知事。

 何社かのメディアも来ている。

 咳払いする那賀根知事。

 「沖縄は独立するぞ!!その歓迎パーティだ」

 那賀根知事は声を張り上げた。

 その時である。雷鳴が轟き、上空に暗雲がたれこめ、それが渦を巻いた。黄金色のドーナツのような渦巻きに変わる。

 「時空の揺らぎだ!!」

 市民の誰かが叫んだ。

 ドーナツ状の揺らぎから大型の四角形の物体が落ちてきた。上空で何かにぶつかり閃光とともに爆発した。爆風にひっくりかえる市民達。

 「なにが起きている?」

 那賀根は跳ね起きた。

 近くの基地から対空砲が聞こえた。

 市民達が逃げ出した。


 同時刻、那覇港

 港湾部に間村、室戸、霧島と特命チームメンバー。隣りに沢本達、海保のミュータント達がそろっている。そして護岸やターミナルビルのあっちこっちに土塁が築かれハンター達と自衛官達が銃口を向けている。

 那覇港から数十キロ離れた海域上空にドーナツ状の渦巻きが出現してその中から多数の艦影と船影が姿を現した。船体にからくさ模様の光る模様がある。ほとんどカメレオンである。その中に模様のない艦船が交じっている。その船は米軍のワスプ級強襲艦にそっくりであるが米軍でも中国軍でもない。中央ザイードである。強襲艦の側面ドアが開いた。

 そこから飛び出す黒人部隊と黒鬼軍団。

黒鬼に見えたのは二本の角を生やし、般若のような顔。口にはサメのような牙。皮膚が暗褐色で軽装備の鎧を着用しているからそう見えていた。

 彼らは海上すれすれを飛んで那覇港に殺到した。防波堤の手前にある青い透明なバリアににそのまま突っ込む。無理矢理突っ込み通り抜けるとバラバラになって海に落下した。

 「あれは?」

 三神が聞いた。

 「フォーアイズからもらった技術の中にはシールドがあった。それを沖縄に使った」

 空母ヴァルキリーに変身しているオルビスが答えた。

 「効果はあったね。でも力づくで通ろうとするね」

 大浦が指摘する。

 「奴らそれは構わないようだ」

 三神が指摘する。

 仲間がバラバラになって落ちているのにそれすら助けずに次々と兵士を投入してくる。それにあのシールドは昔からある魔物を防ぐ結界の拡大強化版だろう。効果はあった。

 「こちら月夜の花。嘉手納でも同じ事が起きている」

 無線に飛鳥Ⅱの声が聞こえた。

 敵はここだけでなく嘉手納にも現れている。

 接近してくる空母「波王」とイージス艦「旅洋」そして大型海警船3901と3902、3903と大小の海警船。

 大型漁船がシールドに沿って走り出す。

 「反対側に回り込まれるとヤバイ」

 心配する沢本。

 「こちらイスラ。奴らは反対側に回り込もうとしている」

 無線にわりこむイスラ。

 「那覇基地。二十二番ゲートと嘉手納四十番ゲートを開けろ」

 間村は指示を出した。

 「了解」

 ややあって別の防潮堤からシールドの入り口が開いた。とたんに中央ザイード軍兵士と黒鬼軍団と海警船がなだれ込んでくる。

 「行くぞ!!」

 間村が叫んだ。

 いっせいに三神達は走り出した。

 岸壁や埠頭から高射砲が火を吹く。

 空を飛ぶ兵士や黒鬼達は撃墜されていく。

 三神が動いた。

 小型海警船にはその動きは見えなかった。気がつくと大きな傷口が開いている。三神の鎖にいくつものコアが握られている。

 海警船はののしると爆発した。

 沢本は二つの錨で襲ってきた何隻かの小型海警船の船体をなぎ払いえぐる。

 朝倉は間隙を縫うように走ると泡を投げていく。泡がくっついて振り払う何隻もの中型海警船。船内の表示板が文字化けした。せつな、「あきつしま」「りゅうきゅう」「きそ」は錨でえぐりコアをえぐった。

 「トルネド」

 三島は呪文を唱えた。

 そこにいた何十隻もの海警船と黒鬼、兵士もろとも竜巻の中に巻き込んだ。

 大浦は炎の呪文を唱えた。三島が作った竜巻に炎が流し込まれ巻き込まれた者達は一瞬にして黒こげになった。

 シールドから飛び出すオルビスとリンガム。

 リンガムは鎖を引っかけ何隻もの潜水艦を吊り上げる。その潜水艦の船体には光る模様があった。四対の金属ドリルでコアをえぐる。

 波王の甲板から何個もの砲台が飛び出して赤い光線を放射した。

 オルビスはスピードを上げてジグザグに航行してかわす。彼はミサイルを発射した。青く光るミサイルは波王に命中した。

 上空を舞う戦闘機。全部ミュータントである。F-2やF-15が中国軍の戦闘機を撃墜していくのが見えた。

 掃海艇や漁船のコアをえぐりながらシールドの外に出る間村、室戸、霧島。

 「沈底魚雷機動」

 霧島はつぶやいた。

 四隻の強襲艦に身震いするような振動と轟音が響き火柱が上がり二つに折れて沈没した。

 黒煙からぬうっと姿を現す大型駆逐艦。姿といい容姿は米軍のアーレィバーク型にそっくりだ。艦番号は76で船体側面にビッシリペイズリー模様が入っている。インド織物に特に頻繁に出てくる模様で、ヨーロッパでは「松かさ形」である。その模様が赤色に輝く。

 「あいつ、翔太達を東京駅で追い回していたミュータントだ。仲間だったんだ」

 霧島が気づいた。

 「あいつを何とかしてマークやバリンに聞いてみないとダメだな」

 間村は声を低める。

 「全方位からミサイル」

 室戸が報告する。

 どこからともなくミサイルが飛んできた。

 間村、室戸、霧島はミサイルを撃ち、二十ミリ機関砲を連射。ミサイルの破片が周辺に散らばり、あとの半分のミサイルはシールドの手前で爆発した。

 「神には計画がある。ダナエ様の大きな愛を教えてやっているんだ」

 そのイージス艦は口を開く。

 「他国を攻撃して略奪するのが?」

 間村が聞いた。

 「俺はイゾルテ。おまえも代弁者になれよ」

 そのイージス艦が名乗る。

 「代弁者が聞いてあきれる」

 霧島が声を荒げる。

 黒煙からもう一隻の戦闘艦が現れた。沿岸戦闘艦タイプだが見かけはMEKO型フリゲート艦に似ている。

 「従えばいいんだ。日本をダナエ様にお供え物にしてくれてやるんだ」

 女性の声で言うフリゲート艦。

 「おまえ誰?」

 室戸が聞いた。

 「デミトリ」

 名乗るフリゲート艦。船体側面に先端が尖った糸杉をモチーフとした模様がビッシリ描かれている。糸杉模様はイスラムでは「生命の樹」とも扱われ、インド更紗では頻繁に出てくる模様だ。

 「そのマストをもぎ取って部屋に飾る」

 イゾルテは二対の錨を出した。せつな、虚空から黒い球体が出現して三人が変身する「あまぎり」「むらさめ」「みょうこう」の船体に何個もくっついた。

 「動けない」

 「印が結べない」

 「竜骨が折れる」

 くぐくもった声を上げる三隻。

 「時空遺物の手がかりはどこだ?」

 イゾルテが聞いた。

 「知らない。探せば」

 しゃらっと言う間村。

 「もうすぐ重力でペチャンコだよ」

 ささやくように言うイゾルテ。

 いくつもの黒い球体がまたくっつく。万力で締め上げられるような痛みにもがく三隻。船体にヒビが入った。うめき声を出す間村達。

 「じゃあコアを黒こげにして標本にしてバラバラにしてやる」

 デミトリは船体から六対の鎖と二対の錨を出した。先端部が赤熱して輝く。彼女の周りの海水が沸騰して水蒸気が上がる。彼女は三隻の真ん中に入ると八対の鎖で突き刺した。

 くぐくもった声を上げのけぞる間村達。船体の穴から黒煙が上がり焼け焦げる匂いが周囲に漂う。

 「コアおいしそう」

 イゾルテがクスクス笑う。

 「・・・・」

 しばらく暴れていたがやがて目を剥いて動かなくなる。

 体当たりする「やまぎり」

 大きく揺れるイゾルテ。

 「やまぎり」は二対の錨をムチのようにしならせ巻きつけなぎ払うように投げた。シールドの壁に激突するイゾルテ。

 デミトリの気がそれた。

 三神は槍の間隙を縫ってデミトリの船体を何回もえぐって離れた。

 朝倉は泡を傷口に投げた。船体の穴から黒煙が上がる。

 くぐくもった声を上げるデミトリ。

 「四谷さん。この二隻は米軍の船にそっくりだ」

 三神が声を低める。

 「私もそう思うわ」

 「やまぎり」は女性の声で答える。

 間村、室戸、霧島を縛っていた力が消えて自由になる。目を剥いたまま横倒しになる。

 三神と朝倉、四谷とイゾルテとデミトリは遠巻きににじり寄った。

 


 東シナ海海域にいる「あかぎ」艦隊に入電があったのは沖縄で特命チームが波王達と戦っている時である。それを二機のP-3Cが追跡し続けていた。二機のうち一機のコクピットに二つの光が灯っている。中国軍の潜水艦でミュータントでもカメレオンでもない普通の潜水艦である。

 「撃沈せよ」

 佐世保からの指令がくる。

 先島諸島を離れる潜水艦「おやしお」「うずしお」

 原潜以外は騒音の激しいディーゼルエンジンでこれが通常型潜水艦と呼ばれる。日本の潜水艦は通常型でも極めて静粛性と隠密性に優れている。まさに海の忍者だが居場所を知られてしまうと弱い。

 敵の音紋はすでにロックオンしている。「おやしお」「うずしお」は魚雷を発射した。

 十秒、二十秒、三十秒・・命中

 連続して二度の爆発音を確認した。



 同時刻。温州沖に接近する護衛艦「あしがら」「あさひ」「あきづき」多用途支援船「ひうち」

 「なんでここにおまえたちがいる?」

 近づいてくる五隻の海警船。誰だか知っている。金流芯達である。

 「散歩」

 しゃらっと答える「あしがら」こと佐久間。

 「散歩なんてありえない」

 馬可西と馬何進が声をそろえる。

 「たった四隻で見習いハンターと幹部候補生よ。やってしまうのよ」

 箔麗花が叫ぶ。

 「名前がわかるの?」

 「あさひ」が聞いた。

 「そいつが・・・」

 「艦名と名前が言えないのかよ」

 「あきづき」が口調を強める。

 「佐久間で広瀬、青山で「ひうち」が山下」

 夏謳歌が指さしながら答えた。

 「ご名答」

 山下はスイッチを入れた。海面にプカプカ浮かんでいたひし形の板が金流芯達が変身する海警船の船体にくっついた。せつな、くぐくもった声を上げて横倒しに倒れた。

 佐久間は二対の鎖を金流芯が変身する海警船の船内をまさぐって何枚かの作戦指令書を出した。

 「輸送船団を護送せよ」

 「輸送船団がいたんだ」

 少し驚く広瀬。

 「遼寧艦隊は先島諸島にテレポートアンカーを設置する事」

 青山がのぞいた。

 「こちら「かが」にいる貝原。遼寧達が先島諸島に接近。通信電波の頻度が多くなっている」

 貝原の声が聞こえた。

 「そう言う事ね」

 納得する佐久間。

 「あのテレポートアンカーにロックオン」

 佐久間は指示を出す。

 佐久間、広瀬、青山はミサイルを発射。

 基地の隣りにあったタワーに正確に命中。タワーは折れて倒れた。



 先島諸島。

 宮古島に接近する遼寧と蘭州。

 「ガラ空きだな。海保しかいない」

 遼寧の甲板に着地する殲20。コクピットに二つの光が輝く。

 宮古島や近くの石垣島にも自衛隊の基地があるのは知っているし、尖閣諸島にもレーダーサイトがある。もちろん寧波からテレポートして近づいた。

 「テレポートは成功だな」

 喜ぶ蘭州。

 テレポートしてくる数十隻の駆逐艦とフリゲート艦。いずれも艦橋の窓に二つの光が灯っている。

 「まず下地島と宮古島をいただきだ!!」

 遼寧は叫んだ。

 「沈底魚雷機動」

 「え?」

 駆逐艦とフリゲート艦に身震いするような轟音と揺れが襲い真っ二つに折れて沈没した。

 「な・・・!」

 驚く遼寧と蘭州。

 テレポートしてくる佐久間、青山、広瀬と山下。

 「ディスペル」

 佐久間は呪文を唱えた。力ある言葉に応えた陽炎のように風景が揺らいでカーテンがはぎとられるように数十隻の輸送船と強襲艦とフリゲート艦が現れた。

 

 

 

宮古島の海岸に上陸する五〇両の水陸両用戦闘車。

 防波堤に一〇式戦車が一両現れた。その上空をAH-64Dアパッチが現れる。しかしコクピットに二つの光が灯る。

 中国軍の戦闘車から三人の兵士が顔を出す。

 隊長らしい兵士が指示を出した。せつな、彼が乗る戦闘車の真下の地面が陥没して吸い込まれ、穴のふたが塞がる。黒煙が上がり爆発した。

 驚く中国兵達。

 二番目と三番目の戦闘車が穴に吸い込まれ爆発した。

 別の穴から飛び出す陸自の16式機動戦闘車。運転席の窓に二つの光が灯る。二対の鎖を車体から出すとそこにあった直径十センチもの石を真上に投げた。

 一〇式戦車の車体から二対の鎖が出て先端が怪しい赤色に輝いた。せつな石が大型ダンプサイズの大岩にみるみる大きくなって六台の中国軍の戦闘車に直撃。爆発した。

 空を舞うアパッチ。二対の鎖を機体から出すと無数の長さ五〇センチの金属針が数台の戦車に突き刺さった。針が光って爆発した。

 陸自の水陸両用強襲車が一台接近する。運転席に二つの光が灯る。

 中国兵は機関砲を連射する。

 側面の装甲に銃弾は跳ね返った。彼は二対の鎖を車体から出して水をつかみ雑巾をしぼるようなしぐさをした。

 残りの中国軍の戦闘車はいきなり発生した渦潮に巻き込まれ吸い込まれた。無数の泡が出て溺死した中国兵達が浮いた。

 

 石垣島沖に接近する中国軍の元型潜水艦

 海中の大きな岩礁のそばを中国軍の潜水艦が通過した。艦尾のプロペラに巻きつく海藻。

 元型潜水艦は船体から二対の鎖を出して海藻をつかんだ。せつな岩礁から銛が突き刺さり、目を剥いて沈んだ。

 岩礁が消えて海自の「やちしお」が現れた。

 中国軍の商型潜水艦が近づいた。

 海水が揺らいで海自の潜水艦「えんりゅう」が現れた。商型潜水艦が振り向いた。せつな、銛がいくつも「えんりゅう」から飛んできて突き刺さる。「えんりゅう」はコアをえぐった。中国軍の潜水艦は爆発した。

 三隻の中国軍の潜水艦が爆発を聞きつけて接近してくる。

 発令所で中国人艦長は部下達に指示を出す。

 「目の前に何かがいます」

 ソナーマンが叫んだ。

 「日本軍の潜水艦です」

 別のソナーマンが声を荒げる。

 「魚雷発射」

 艦長は指示を出す。

 魚雷が発射されるがそこには何もなくあさって方向へ魚雷は飛んでいく。

 「どうなっているんだ?」

 艦長が聞いた。

 「わかりません」

 艦長がいる潜水艦の隣にいた元型潜水艦は船体から二対の鎖を出して伸ばした。しかし何もいなかった。

 「いない?」

 「そこだ!!」

 漢型潜水艦は四対の鎖を出して先端から炎の塊を投げた。しかし何も起こらなかった。

 海中からぬうっと現れる「くろしお」

 「潜水艦は姿を現したら負けなんだ」

 「そのマストを部屋に飾ってやる」

 元型潜水艦と漢型潜水艦は笑い出すと中国語で呪文を唱えた。

 「くろしお」の分身が「くろしお」自身から噴き出すように三十隻現れて周囲を泳ぎ回り魚雷を発射。

 二隻の潜水艦は中国語で叫びながら駆け出し八対の鎖で魚雷をはたき落とす。とたんに銛が一〇本も突き刺さり目を剥いて沈んでいった。

 「どうなった?」

 艦長は聞いた。

 「魚雷です」

 ソナーマンが青ざめる。

 魚雷が命中して爆発した。


 遼寧と蘭州はミサイルを発射。

 F-2とF-35は間隙を縫うようにかわして十隻の輸送船に接近した。

 そばにいたフリゲート艦からミサイルが発射。しかしそれもかわした。

 対艦ミサイルを発射する二機。

 数隻の輸送船とフリゲート艦に命中した。

 対艦ミサイルを発射する佐久間、青山、広瀬の三人。別の輸送船と強襲艦に命中。火柱が上がり傾いて沈んでいく。

 「どうするの?」

 山下が聞いた。

 「バカなぁ」

 声をそろえる遼寧と蘭州。

 「今度会ったらコアをえぐるって言ったよね。金流芯達は気絶して海に浮かんでいるし温州基地のタワーは壊した」

 佐久間はドスの利いた声で迫る。

 「降伏しろよ」

 「降伏しなさいよ」

 強い口調の青山と広瀬。

 「俺達を殺しておいた方がリスクとツケは少ないよ」

 遼寧は食い下がる。

 「ツケとリスクってなんの?」

 山下がわりこむ。

 「中国をなめるなよ。ちっぽけな島国にやられるわけがないんだ。今度は核ミサイルで東京は黒こげだ」

 強い口調の蘭州。

 「たぶんそのミサイルもミッドコースで撃ち落せます」

 山下が答えた。

 「周永平に言えば失敗しましたって」

 ピシャリと言う佐久間。

 「ちくしょう!!」

 遼寧と蘭州は捨てセリフを吐いて生き残った艦船と一緒に逃げていった。



 石垣島と宮古島に接近していた空母「遼寧」空母打撃群と輸送船部隊の阻止に成功を聞き東シナ海上にいた「あかぎ」から一〇機のF-35Jが飛び立った。寧波まで三〇〇キロである。

 F-35は高度なステルス性を備えている。高高度を飛んで目標近くで急降下して攻撃するなり再び高高度を上昇してすぐに離れる。奇襲で一番リスクの少ないやり方である。

 すでに沖縄に波王艦隊と中央ザイード軍と特命チーム、月夜の花チームが交戦している。敵基地を攻撃するのは専守防衛の範囲内である。

 寧波周辺は曇っていた。

 一〇機のF-35は雲の中からいっせいに急降下してレーダー誘導爆弾を基地に投下して同時に対艦ミサイルで発電所とテレポートアンカーに命中させた。基地とタワーから次々に黒煙と火柱が上がり飛び去った。



 中国の中南海

 「核だ!核ミサイルだ!!」

 一連の報告を聞いて周主席は叫んだ。

 「主席。大変です。中国とロシアの国境にロシア軍が集結しています」

 程府公安部長が飛び込んできた。

 「何ィ!!」

 「台湾軍が日中中間線にあるガス田リグを破壊すると言っています」

 李遜花首相があわてて入ってくる。

 幹部達が忙しく行き交う。

 「主席。TVをつけてください」

 あわてて入ってくる紀英州。

 周主席はTVをつけた。

 「わが合衆国は、日本の同盟国であり、中国は重要な戦略パートナーであると認識しております」

 ホワイトハウスの会見室でスレイグ大統領はゆっくりと語りかけた。

 「したがって合衆国大統領として私は、日本と中国の双方に、ただちに交戦状態を停止することを呼びかけます。もし交戦状態がいま以上に拡大されるなら、合衆国は日本との安全保障条約の適用を考慮せざるおえません」

 「ば・・バカなぁぁ」

 がく然とする周主席。

 舌打ちするピラトとネピュラ。

 「ロシア軍が国境を超えたらやばいです」

 紀英州が念を押すように言う。

 「主席。大変です。チベットとウイグルで武装蜂起です。香港と上海で暴動です。青島にあるテレポートアンカーが日本人スパイによって爆破されました。先島諸島の上陸部隊も壊滅です」

 幹部があわてて入ってくる。

 ピラトとネピュラはそそくさと出て行った。

 「アメリカの参戦はまずい。まず停戦だ。そこから考えよう」

 周主席はがっくりと肩を落とした。



 黄金色の渦巻きは雷鳴を轟かせながらかき消えるように消えていく。

 生き残った海警船や中国軍の艦船、中央ザイードの艦船はその渦巻きの中に飛び込んでいく。

 「波王。残念だね。負けて」

 身構えるオルビスとリンガム。

 「まだ終わってない。かならず戻るからな」

 波王はそう言うとどこかにテレポートしていく。

 イゾルテとデミトリの艦主砲をジグザグに航行にしながらかわす三神、朝倉と四谷。

 三神が動いた。その動きは他の海警船達には見えなかったがイゾルテが変身するイージス艦の艦首が自分に向くのが見えた。三神はとっさにイゾルテの錨をかわした。

 デミトリとイゾルテはミサイルを発射。全方向からやってくる。

 四谷は二対の錨を出した。海水が盛り上がり壁となる。水の壁にミサイルが命中して爆発した。

 デミトリとイゾルテは周囲を見回した。

 「どうした?」

 三神、朝倉、四谷が声をそろえる。

 「中国の北京から通信電波だよ」

 オルビスがわりこんだ。

 デミトリとイゾルテがテレポートしていく。

 「国連決議で停戦を受け入れるみたいね」

 オルビスが分析する。

 「中国政府がまともに考えられればいいけどね」

 三神が言う。

 講和を受け入れるのは難しいかもしれない。それにまだ南シナ海の基地と南海艦隊は健在で、中央ザイードが背後にいる。

 「オルビス。リンガム。三人を運ぶのを手伝って」

 四谷は横倒しになったままの「あまぎり」「むらさめ」「みょうこう」に視線をうつす。

 「了解」

 オルビスとリンガムは答えた。



 首相官邸

 「やはり適用するではなく考慮ですか」

 小野官房長官は口をへの字に曲げる。

 「これでもブレガー国防長官とTフォースのベクシル司令官、魔術師協会のフランシス理事ががんばってくれたのです。フランシス理事とベクシル司令官は日露戦争や第一次世界大戦、太平洋戦争で葛城庵元長官や茂元長官のもとで一緒に戦っていたし、ブレガー長官は若い頃、Tフォースからオファーが来て魔物と戦っていた事があります。それもあってホワイトハウスに強力に働きかけてくれました」

 外務大臣が口をはさむ。

 「ともかく沖縄は占領されずに済みました」

 三宅は表情を引き締める。

 「中国の暴走は食い止められそうですね。核ミサイルは飛んでこないと思われます」

 石崎防衛大臣が言う。

 「ロシアと中国の国境にロシア軍が集結。そして台湾軍が石油リグの攻撃とミサイル基地の攻撃を通告してきた。ロシアが動いたのは周主席にとっても予想外でアメリカより効果てき面でしたね」

 三宅が地図を出した。

 中国とロシアは昔から仲がいいわけではなく何度も領土をめぐっての戦争をしている。今では石油パイプラインやロシア製の武器や兵器を購入するほど密接な関係にある。でも南シナ海の基地は手放すとは言っていない。

 「南シナ海にはカメレオンの巣と中央ザイードの司令部があると思っています。ベトナムやタイ、フィリピンといった国々から特命チームやパンサーアイチームにオファーが来ています」

 石崎大臣は地図を指さす。

 「アメリカが参戦してくれれば物事はすごいスムーズに進みそうですがそれは遠そうですね」

 三宅は言った。



 翌日のニュースで

 

 特命チーム、月夜の花チーム、自衛隊、志願したハンター達で連携して沖縄を守り抜く。

 遼寧艦隊による先島諸島上陸は自衛隊の特命チーム混成部隊によって壊滅する

 上海と青島にあったテレポートアンカーはスパイによって爆破される。

 「寧波、温州のテレポートアンカーは「あかぎ」艦隊によって破壊される


 戦果は伝えられた。

 国民は浮かれていなかった。

 もちろん

 大勝利を祝う声は全国のあっちこっちで聞かれた。

 だが、

 「これでひと安心だけど「時間の穴」はまだあるよ」

 「スーパーで買いだめしなくてすんだけど来年は桜もアジサイも元の色で花は咲くのだろうか」

 「でも中国はあきらめてないね」

 町や職場で家庭で言う者があれば大半の人達はそう思っていた。

 午後になりTV局はお昼のニュースを流し始めた。

 護衛艦隊が東シナ海に遊弋し、E767や

P-3Cが上空を飛び、潜水艦も出動している映像を見て多くの国民がホッとする。

 大きな見出しで

 那賀根知事、逮捕される。

 内容に中国のスパイや協力者、中央ザイードのスパイを入れた過程がつづられる。中国のスパイと中央ザイードのスパイは刑務所行きになり協力者は監視付きになった

 アジア協会のルフェ理事、関係者。逮捕される。

 インターポールがアーネスト・ロウを指名手配。

 国連安保理の停戦合意を周主席はしぶしぶ受け入れる。

 自衛隊入隊志願者、Tフォース入隊志願者、魔術師協会やハンター協会に志願者増える

 「また?」

 「今頃ですか?」

 首をかしげ声をもらした。

 第七艦隊所属の空母ロナルド・レーガンが横須賀に戻ってくる。

 一時的に嘉手納、普天間、辺野古からいなくなっていた米軍兵士と輸送機、ヘリコプター、戦闘機が戻ってくる

 「何をいまさら」

 「アメリカさんは三回目も嵐が過ぎ去ってからやってきた」

 揶揄するのもしかたなかった。目に見える所にアメリカのアの字も出てこなかったからである。でも米軍が戻ってきたことによって何かしらの安心感は覚えた。



 ホワイトハウス

 執務室でスレイグは不満な顔をする。

 テーブルにはロイター通信、共同通信社、ニューヨークタイムズ、ワシントンポストといった有名新聞社や日系人が見る新聞まで置いてある。


 サムライ達がまたまた世界を驚かせる。

 自衛隊の特命チーム混成部隊、先島諸島にせまる遼寧艦隊と上陸部隊を阻止する。

 特命チームと自衛隊の連携で沖縄を死守。

 テレポートアンカー破壊

 中国とロシアの国境にロシア軍集結

 

 「・・・む・・ムムム・・」

 スレイグはうなって人差し指を思わず噛む。

 新聞紙のどこにもアメリカの文字がない。

 部屋にドーソン国務長官とブレガー国防長官が入ってきた。

 「ムムム・・ではありませんぞ。大統領」

 ブレガーは声を低めた。

 「東洋の島国がえらい変わりようだ」

 うーんとうなるスレイグ。

 「そうですね。二年半前の尖閣諸島の戦いから変わりましたね。それまでは集団自衛権がどうの日米安保がどうのと言っていた国がです。アメリカにも物申すようになりました」

 ドーソンがうなづく。

 「やはりサブ・サンですね。サブ・サンは日露戦争で日本と因縁があり特命チームが結成された。サブ・サンと中国政府のおかげで政策転換と決断で占領と支配はまぬがれたと言えますね。大統領。カメレオンやダナエがアメリカを襲わないという保障はありません」

 鋭い眼光のブレガー。

 黙ってしまうドーソンとスレイグ。

 「ジョコンダ議員と会うのはやめてもらえますか」

 ブレガーは声を低める。

 「わかった。でもね向こうから会いたいとか言えば断れないからね」

 言葉を濁すスレイグ。

 「彼女についても考えないといけないですね」

 ブレガーは言った。



 横須賀基地

 「・・・あなた方が混成部隊ですね」

 翔太は口を開いた。

 名簿をのぞくアナベル、ミゲル、智仁。

大沢 俊樹 潜水艦「やちしお」猛毒の槍で忍び寄り敵をしとめる能力者。背景に同化できる。

柳田祥子 潜水艦「えんりゅう」幹部候補生 透明になれる能力者がある

 神田俊彦 潜水艦「くろしお」自分の分身を多数作れて操れる。

景山 豊 10式戦車 物の大きさを変えられる

佐々しのぶ 16式機動戦闘車 モグラ能力。穴に落として引っ張り込む

梅井 信吾 AAVー7水陸強襲車。渦巻きをつくれてそこへひっぱりこむ

守屋 明美 F-35J 幹部候補生 他人の運も自分の運も自在に操れる。複数の者の運も操れる

辺見 義也 F-2J 連続テレポート

押水 勇 AH-64ロングボウアパッチ 針千本が得意。

それと青山と広瀬、山下、佐久間である。

「すごい。いろんな能力者が集まった」

三神と朝倉が声をそろえる。

いっけんバラバラで使えるかわからないといった感じだが今回の戦いでうまく連携できているのを見ると意外といける。

「もともと相棒を組んでいたのですか?」

翔太が聞いた。

「僕達はみんな余った者同士だよ。ミュータントは幹部候補生でも持っている能力によってメイン組とサイド組に別れる」

青山が口を開いた。

「私も山下も余った者同士で組んだ」

広瀬が答える。

「僕もまさか護衛艦に乗るなんて思わなかったし自衛官と組むなんて思わなかった」

黙っていた貝原がうなづく。

「中国はこのままおとなしくいるでしょうか?」

守屋が口を開いた。

「たぶんそれはないな。南海艦隊と海南島の基地は無傷で南シナ海に基地があり、どこかに総司令部や司令部、中継基地がある。それを破壊しないといけないわね」

佐久間が答える。

「私達だけでいけるのでしょうか?」

心配する柳田。

「周辺国のハンターやミュータントの力が必要ね。それにまだ中国軍の問題は解決していない。海南島には南海艦隊がいて南シナ海には軍港も基地もできた。その中にはダナエやカメレオンの司令部もあると思っている。アジア有志連合は南海艦隊とカメレオンと中央ザイード軍と戦わないといけない」

佐久間は地図を出した。

「基地にテレポートアンカーと発電所も建設しているから完成は時間の問題だな」

腕を組む室戸。

「南シナ海はどこも領有権を主張しているからね。それにサラトガ達が入れば戦力になる。それか米軍を無理矢理巻き込むのはどうだろう?」

ひらめく霧島。

「わざと基地を攻撃するとか?バレたら俺達は刑務所行きだ」

間村が言う。

「それしかないかもよ。むしろそれを北朝鮮とか中国がやるならわかる。中国がまともに考えられればいいけどね」

山下がしゃらっと言う。

「いずれにしても作戦は必要ね」

佐久間は少し考えてから言った。

「パオリが言っていた艦番号76のイージス艦は退役軍人でも米軍の所属でもなかった。あいつダナエの手下だったんだ」

三神がふと思い出す。

パオリから聞いていたイージス艦のミュータントはイゾルテと名乗り中央ザイード軍の戦闘艦だった。そして重力を操る。

「あれを見ると米軍の技術が流出しているとしか思えません」

それを言ったのは広瀬である。

「それかジョコンダがわざと流したかも。SF映画にエリア51が出てくる。そこにはエイリアンと取引している場面がある。たぶん、ジョコンダはエイリアンと取引している」

間村がわりこむ。

「でもあの沖縄のバリアといい粒子砲といいそれも否定できないかも」

三神がうなづく。

もしそうだとすればダナエに渡しただけでなくダナエ側にもそのエイリアンの技術が入っている。

「スレイグ大統領は若い頃は違法ハンターで遺跡荒らし。時空侵略者と接触している。ジョコンダと一緒に危険かも」

翔太は心配する。

「危険かもしれないけどブレガー国防長官がいる。彼とベクシル司令官、フランシス理事が強力にホワイトハウスに働きかけて「二米安保が考慮される」という声明を発表させた。そしてロシア軍が国境付近に集結して中国はいやいや国連決議に応じた」

佐久間が動画を見せた。

「適用じゃなくて考慮なんだ」

不満を言う青山と広瀬。

「中国政府はいちようまともに考えられる事がわかった。またほとぼりが覚めたらまたダナエと組んで仕掛けるかもしれないわね」

危惧する佐久間。

「その時はまたおしりを蹴飛ばしてやるさ」

間村が言った。

 

 

 

 

 

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