少し前。

「死ぬな、おれ」


「ああ、死ぬな」



諦めの境地とも言えるほど、淡々と会話する二人。


今、カルロスは二回殺されリーチ、リスボーンポイントでクリッピーに襲われそうになっている。


それを救助にきたアドルフだが、困っていた。


というのも、元々の作戦は、アドルフがカルロスの救助に向かい、哲郎とジェームズがまだどこにあるとも知れない魔法陣を見つけ出して、できれば無効化するというものだった。


オリジナルはおそらく魔法陣の方を張っていて、あちらで気を引いている間にカルロスを救助しようとアドルフは考えていた。


しかし、


「あー、実は近くにあるんだ……」



カルロスからの情報により、悩むことに、


確かにアドルフの『探知』にはオリジナルが引っかかっている。


つまり近くにいるのだ。


だが、


(オリジナルは魔法陣を守ることに執着していると考えていい、だからあっちで派手にあっちでやりあってくれれば楽に救助できるのだが……)


さっきから引っかかるオリジナルは、カルロスを張るように近くにきては、また離れていくを繰り返している。


どちらかが気を引かねば、どちらも動けない。


まだ魔法陣が遠ければ、遠くへ行っている間に救助して、身を隠すこともできた。


が、この距離では、すぐに見つかってしまう。


そして負傷状態のカルロスが狙われる。


(魔法陣を無力化するにも一分はかかる。それで奴に見つかったら終わりだから、リーチと初心者の向こうも動くに動けない状態か……)


だからといって、動かないわけにはいかない。


あっちだって見つかるのも時間の問題だろうし、こっちはカルロスに時間制限がある。



あと30秒と言ったところだ。

ギリギリで救助しようとしたとして、


オリジナルが確実に一人仕留めるためにギリギリの時間に帰ってきて、張られたら救助することはできない。


(ならせめて……)


苦しそうに歯を噛み締めて思考するアドルフ。


「アドルフ」


すると、正面からカルロスの声が聞こえ、引き戻される。


「なんだ?」


カルロスの次の言葉が予想でき、言葉に詰まるアドルフ。


「やってくれ」



覚悟を決めた表情のカルロスが、アドルフに言葉をかける。

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