オリジナル・ステージ2

それは一言で言うなら"龍"だった。


ファンタジーなどでは定番中の定番。

誰もがモンスターといえば?と言われた時、一番に思いつくレベルの


モンスターの中のモンスター。


ファンタジー系の物語にはほぼ確実に出て来る、架空の生き物の頂点に立つ存在。


キング・オブ・ザ・モンスター。


こいつもまた、例に漏れずモンスターしていた。


細身ながら筋肉質な体に、コウモリのの羽のように飛膜のついた腕、短く太い足。


全身を黒い硬い皮膚に覆われ、身体中のあちこちには鋭いトゲが見られる。


木々をなぎ倒して直進して来ているにもかかわらず、傷一つ付いていないその姿はまさにモンスターの原点、龍だ。


背中からは、背骨が発達したのか、背骨のラインに沿って、白い背びれのようなものがいくつも生えていて、熱を発しているのかユラユラと近くの空気を歪ませている。


体長は頭から尻尾の先まででおよそ5メートルほど、


今は四足で走ってはいるが、見るからに発達した上半身は、その本領は奴が立ち上がっての二足歩行であることを物語っている。


まるで刃物のように長くて鋭い爪を持ち、

それをカチカチと指一本ずつ動かして鳴らしていることから、指も相当器用であることも読み取れる。


長くてしなやかな尾は、ヒュンヒュンと言いながら、尾の先についた刃物のような部位で近くの木々を切り倒している。




それはまさに"恐怖"を体現したような姿だった。


体長は、最初一瞬見たときより一回りほど大きくなっていて、体重も相当増えているのか、歩くだけでズンズンという振動を感じられるほどだ。



「こんなの勝てるわけがない……」


ジェームズは、一言、そう呟いていた。



「おい!走れ!」


遠くからカルロスの声が聞こえる。



だが、ジェームズはそこから一歩も動くことが出来なかった。


迫り来る純粋な恐怖に捕まったのだ。


鋭い歯がぎっしりと並んだ口が開いてジェームズに向かう。


ガブッ‼︎


右肩から噛みつかれ、軽々と持ち上げられたジェームズは、体重を感じさせないくらい勢いよく振り回される


力なく振り回されるまま、手足が投げ出されている。


と、


パッと上へ向けてジェームズの体を離したオリジナル。


しばらく宙を舞ったジェームズの体は、地上約10メートルほど上がって何回転かしたのち、勢いがなくなり落下を開始する。


ちょうどオリジナルの目線の高さまで落ちてきたところで、待ってましたとばかりに構えられていたオリジナルの腕が横薙ぎに振り払われる。


腕はジェームズの横腹に直撃、鋭い爪がジェームズの横腹に食い込み、さらに引き裂く。



赤い血が飛んだ。


メジャーリーガーもビックリな速度を出して投げ飛ばされるジェームズ。


ジェームズの体は、投げ出される勢いのまままっすぐ飛び、彼の血が、まるで線を描くようにその後を追う。


カルロスはその隙に遠くまで逃げたようで、姿はない。


おそらくリスボーンした二人の救助に向かったのだろう。



最後に残された意識の中、うっすらとそのことを理解したジェームズは、


グヂャッ、


と、近くのレンガの壁に叩きつけられて肉片と化した。

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