心音

「待て‼︎」


突然急ブレーキをかけて止まったアドルフは、後ろのジェームズに止まるよう指示を出す。


「なんだ?」


緊張した声音で問いかけるジェームズ。


「心音だ。近くにいるぞ‼︎」


そう言うと、アドルフは耳を澄まし辺りを探り出した。



「……何も聞こえないぞ?」


アドルフに習って耳をすますジェームズだが、

不気味な風の音が聞こえるくらいで、さっき

聞いた心音は聞こえない。


身を潜めながらも、不振の眼差しを向ける。


「静かにしろ、今探ってる」


ジェームズを静止し、集中していくアドルフ。


「……右だ‼︎」



右を指差して目を開けたアドルフは、自らが掴んだ情報をジェームズに知らせる。


「わかった。だがどうすればいい?」


敵の位置がわかったところでどうすればいいかを知らないジェームズは、慌てて指示を仰ぐ。


と、


ドクン……ドクン……



ジェームズの耳でも、かすかに心音を捉え始めた。


「走るぞ‼︎哲郎が戦ってる。武器なしの俺たちじゃ足手まといだ。カルロスをさっさと助けて離脱するぞ‼︎」




言って、再び走り出すアドルフ。


「わかった‼︎」


アドルフの後を追ってジェームズも走り出した。

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