第6話 光は速くて、僕らに追いつく

「時差のある場所に行ってくるので、掲示板の更新は控えめにします。ツイッターは、仕事としてやるけど。」

 なんて書いてあった。掲示板に。そう思って、ツイッターも開く。

「取材旅行として、アスタ国に着きました~。伝説と伝統がいろいろあると聞いているので楽しみです!」

 と書いてあった。人柄が違うな、と思いながら、営業用だもの、と納得した。

 ―というのがあったのが、期末考査の終わった日。そして今日は一学期が終わった日。今日まで、彼のツイッターだけは確認した。掲示板も確認したが、宣言通り更新はされていなかった。

 葦田くんもツイッターをチェックしていたようで、一緒に彼について、というか、烏目鳥目について話した。葦田くんがいろいろと教えてくれるので、見る頻度は二日に一いっぺんぐらいになった。葦田くんはアスタ国に興味が出て来たようで、色々な本を図書館に行って読んだりして、調べているようだ。ちょっとしたことを教えてくれた。ご当地グルメとして、砂糖のかかったフライドポテトが有名だとか、水上マーケットの船がすべて朱色で、それは昔の戦争で血に染まった川を忘れないためだとか、そういった類のことだ。

 ちなみに彼はそういったことを一つ一つ入念に取材して行っていたようだ。やはり、取材旅行ということでアスタ国を満喫していたらしい。

 取材して行っていた、といったのは今日からそうでないようだからだ。ツイッターで、

「飛行機までの三日間がオフに!アスタの風を頬で感じながら、読書も贅沢かしら、とも思ってます。ってことで、十日間の旅の最終日、帰り着く8月5日までツイッターを休みます。6日に会おう!」

 と言っていたからだ。こんなツイートがあったね、休みも大切よね、なんて葦田くんと話したりしていたら、一学期も終わっていた。今日も葦田くんは、図書館で調べものらしい。僕も家で調べることにしよう。そう思っていたら、もう家路も半分くらいだ。なぜ、半分で足を止めたかというと、スマホが葦田くんからの言葉を表示したからだ。

「そういえば言い忘れたけど、烏目さんこんなツイートもしてたんだった。」ここで一回言葉は切れて、その下にリンクがあった。飛んでみると、

「迷信過ぎて取材には適さない、伝説の様な話がこの国にはあるみたいです。調べれたらいいかな、と。(←急に真面目)」

 とあった。そして電子音が

「らしいので、これについても調べてみる。手掛かりは少ないけど、幸い本はいっぱいあるので。」と続きの表示を示した。

 そんな話もあるのか、、、とひとり頭の中で思っていると、家についていた。一人でただいまと言い、制服から着替えて、スマホを見る。調べようか、でも何を。と思っていると、

「これじゃないかと思う。不審死の話なのかな。簡単に言えば、昔、男が建物から夜明けに飛び降りた。意味や目的、自殺か他殺か。そもそも、事実か。っていうレベルのものらしい。」

「まあ、僕もこれで家に帰る。では、また。」そう来たので、

「なんか新発見あったら教えてね。私は暇だし。では、いい夏休みを。」と返した。

 そして、四角に文字を打っては虫眼鏡を押して、という夜を過ごした。

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