第23話 相談➁

「短期決戦ですか……」


 撫子さんからの提案を考える。

 ――やれなくはない。ないけれど、後一人誰を入れようかな。

 ミネットさんが発言する。

 

「私は反対です。撫子さんの技量に疑いはありませんけど……メイン盾1枚は危険です。ここは、安全策を採用すべきだと思います」

「俺もミネットの意見に賛成だな。盾2枚でもかなりリスキーなんだ。1枚じゃ立て直しも難しい」

「あら? 短期決戦、いいじゃない。ギミックを解いたら、後先考えず総攻撃でしょう? 私はそっちの方が好みね」

「……おい、てめえ」

「何よ。やっぱりプリンは無しに」

「そ、それとこれとは関係ないだろうがっ!?」

「ん~私も反対かもです。やっぱり、タゲが動くと魔法も撃ち辛いですし」

「ボクもかな。堅実に勝とうよ」


 ミネットさんとナナちゃん、それにギークさんと藤さんは反対。

 逆にライラさんが賛成、と。

 多分、エヴァさんも撫子さんの提案に乗るだろう。あの人、何でも巧いけれど、基本は根っからのアタッカーだし。

 チャットを入力する。


「僕は盾1枚、いけると思います。撫子さんが出来る、と仰るなら心配もしていません。空いた残り一枠は……当てがあります」

「ナオさん、ありがとうございます」

「まぁ……ナオがそう言うなら。ただ、崩された時の予備盾を誰にするかは決めとけよ?」

「勿論です。ギークさんにやってもらいます」

「……落ち着け、ナオ。俺じゃなく、ライラの間違いだろう?」

「いいえ。ギークさんにやってもらいます」 

「あらぁ、いいじゃない♪ 流石、分かってるわねっ!」

「ぐっ……て、てめぇ……後で覚えてやがれ」

「はいはーい、先輩、質問です」

「ん? 何かな、ナナちゃん」

「この前より、メンバー減らしたのは、量より質、という事ですか??」

「うん、いい質問だね」

「えへへ~♪ ありがとうございます」


 この子、時折、こうやって本質を突いてくる。基本的に賢いのだろう。

 オンラインゲーム、特に大規模コンテンツをやる上では結構大事な要素だ。

 何せ難敵であればある程、覚えたり、臨機応変に動かないといけないわけで……ゲームなのに、そんなので楽しいのかって? 楽しいんだなぁ、これが。


『…………撫子さんのみならず、私の可愛い妹までもその毒牙にかけようとするのですか? ナオさん、真面目なお話あります』

『毒牙って人聞きが悪い。ミネットさんだって、撫子さんがやる気なら、と思ってるでしょう? それと、ナナちゃんとは、昔からこんな感じですよ。知ってるでしょうに』

『だって……私は反対側だったのに、撫子さんの味方するし……もうっ! ナオさんなんか知りません。チャットしてこないでくださいねっ』


 姫はどうやらご機嫌斜めな模様。まぁ、チャットしないで、と言うのだからちょっと、放っておこう。


「今回、人数を絞った理由は二つです。一つは、ナナちゃんのご指摘通り。確かに『数は力』ですが、今回のボスに関して言うと、範囲状態異常を受ける人間を如何に極限しつつ、ギミックを解き、相手を倒すかが勝負です。身内相手限定なら、ある程度までなら、統制も効かせられますしね。もう一つは」

「――人数少なくても、削り切れる、だろっ? 当たりか? 当たりだよな?? はーい。なら、ナオは来週も俺に付き合えよ。当然リアルで」


 突然、今までいなかった輩が入ってきた。

 キャラはまだいないか。どうやら、今、ログインしてきたらしい。

 皐月さんも一緒みたいだ。


「……倉。リアルの話を持ち出すな、阿呆」

「えーいいだろうが。さっきまで、あんなに仲良くしてたのによぉ~。ナオは、ゲーム上だとほんとっつれないんだよなー。あーあ。ひでぇ、ひでぇ。俺様、硝子の心の持ち主だってのによぉ」

「あ、それはないわ」「ないですね」「ないと思うな」

「うぐっ……て、てめえらぁ……」

「く、倉、止めなよ、もうっ! あ、ナオさん、先程はありがとうございました。楽しかったです。よろしければ、またご一緒させて下さい」

「いえいえ、僕の方こそありがとうございました、皐月さん」


 何だろう、少し気恥しいけれどほんわかする。

 ほんと、いい人だったしなぁ。いやまぁ、倉もいい奴なんだけれども。ギャップがなぁ……。

 ライラさんが、まとめをただしてくれる。

 

「ナオ君」

「あ、はーい。二つ目の理由は倉の言う通り。今回のボス、厳しいのはギミックであって、ボスの攻撃そのものではないと判断しました。勿論、一般的には厳しいですけど、ほら? 皆さんは……ねぇ? と、いう訳です。盾、マラソン、アタッカー、魔法アタッカーの四班編成が妥当かな、と思います。メンバーは僕が知っていて、今まで絡んだ人達。かつ死ぬ事に慣れていて、週末にいそうな方を選んでいます――で、どうですかね? そろそろ決を取りたいと思います。皆さん、投票してください」


 メンバー的には問題ない、と思う。

 戦術もほぼ固まっているし、技量は心配するだけ無駄だろう。

 ……あるとすれば。


『私は賛成ですけど。ですけどー……ナオさんが気に食わないから、反対に回るか迷いますねー。でもーナオさんがどうしても、と懇願するなら賛成してあげてもいいですよ? というか、どうして、チャットしてこないんですかぁぁぁ』

『ナオ、お前は酷い奴だ。さっきまで一緒にいた俺を吊るし上げるなんて……罰として反対に回ろうと思う。それが嫌なら、来週もデートだ。デート』 


 こういう愉快犯共がいることか。

 つーか、倉、あれはデートじゃない。単なる呼び出しだ。無視無視。

 それでも大勢は動かないないだろう。皆、負けっぱなしは死んでもごめん、と思う負けず嫌いばっかりだし。

 

 ――投票の結果、僕の作戦及び編成案は了承された。良かった、良かった。


 あ、撫子さんからチャットだ。


『ナオさん、ありがとうございました。えっとですね……オフ会でお会い出来るのを楽しみにしていますね♪』


 うん。この人、現実でもきっと可愛らしい人なんだと思う。

 是非とも、週末勝って、期末試験を乗り越えたら拝みに行こっと。


『ナオさん。終わったら廃教会裏です』


 ……その前に、怖い怖い詩人様からどう逃れるかを考えてようか、うん。 

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