第7話 初ライド計画

 翌月曜日の昼休み、学生食堂でゆりは琴に提案していた。

「レーパンはちゃんと履けたんでしょ?じゃあ、今度の日曜日、少し走ってみようよ。まずは平らな道で考えとくわ」

「うん、服とかも教えてね。レーパンってさ、不思議なもんだよね。ママは オムツって呼んでるの」

「はは、それいいかも。そのまま履いちゃうところも一緒だよね」

「季節によって着るものも変わるからさ、段々と増えてゆくよ」

「ショップのお兄さんのライトみたいに?」

「そうそう、パーツもね、いろいろ付けたり替えたりしたくなっちゃうんだよな。あたしだってこの頃、サイクルジャージ以外の服なんか買ってないもん」

「ひゃー、乙女なのにねー」

「駈ける乙女に、ひらひら服は要らないんだよ。コトだってきっとそうなるよ」

「えー、早くも乙女卒業か・・・」

「行く場所決めたらLINEするわ。日焼け止めも忘れないでね」

「うん、ありがと。お世話になりますです」

「お蕎麦のスープ、なくなってるよ」

「うあ、麺が吸収したんだ!」

「蕎粉に見せかけて、実は小麦粉だな、ここのお蕎麦」

「ここのメニュー、オール炭水化物」

「太る筈だー」

「だからサイクリングなんだよ」

「んー、運命だったの…かも」

「そうだよ。だって白馬の王子様なんでしょ、コトのルイガノちゃん」

「ん、乗ってないのに毎日オトコに磨きかけてる。名前つけなきゃ」

「あたしのビアンキはカワセミ号だよ」

「えー カワセミ?なにそれ?あんまスマートじゃない」

「あれ、コト知らないの?カワセミってさ、飛ぶ宝石って呼ばれてんだよ。めっちゃきれいなの。エメラルドグリーンとかコバルトブルーのもいるんだ。ずっと前さ、ツーリング中に木津川で見たんだ。一瞬キラッって光ってさ、本当に宝石が飛んだのかと思った。それ以来、カワセミ号なんだ」

「ふーん、ゆりのセンスは時々判らないけど、でも鳥の名前つけるっていいかもー」

「ね、楽しいでしょ。ま、慌てずじっくり考えてよ。もうお蕎麦、麺じゃなくてカタマリだよ」

「うわっ、蕎麦モンブランだ。どうしよー、どこから食べるんだこれ」

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