多人数戦

 通常であれば2人きりの戦闘エリアに今、3人目の少女がいる。


 ヒメカの発動。

 C-12-G『劣化分身』

 能力を持たない自身の分身を召喚する。


 開戦と同時、分身を召喚したヒメカに対し、アタエは両手を前で組んで祈るような姿勢を取った。


 アタエの発動。

 A-10-R『チャージショット』

 手の中でエネルギー弾を溜め、放出する。


 時間はかかるが、必殺の一撃を用意する事が出来るこの能力。もちろん対峙するヒメカがそれを黙って見過ごすはずがない。


 ヒメカの発動。

 A-12-I『インフィナイフ』

 ナイフを召喚する。


 召喚したナイフを『劣化分身』にも持たせ、数の有利+武器で攻めにかかる。2方向から同時に切りかかられ、両手は塞がっている。防御も回避も不可能に見えたが、アタエは解答を用意していた。


 アタエの発動。

 H-03-S『鉄人』

 最大1分間、全身が鉄の塊になる。


 ヒメカと分身のナイフが弾かれて飛んだ。2人がかりでナイフもあるとはいえ、力自体は通常の状態と変わっていない。1分フルで頑張れば鉄塊と化したアタエにも傷をつける事くらいは出来るかもしれないが、動けばそれだけ疲れは溜まる。『チャージショット』の事と、メンターからの指示も踏まえてヒメカは待機する事を選択した。


 沈黙のまま時間が経過していく。1分が経てばアタエの手に握られた『チャージショット』は、人1人を粉々に出来るだけの威力を蓄えられる。


 与えられた時間によって、ヒメカは1つのアイデアを思いつく。『鉄人』の発動中はアタエは身動きが取れない。よって今の内に背後へと回りこみ、本体と分身の見分けをつけられなくしておけば、いざ『鉄人』が解除された時にアタエはどちらに向かって『チャージショット』を撃つべきか迷う事になる。それにアタエの『鉄人』が解除されると同時に『劣化分身』を再発動させれば、3つの的の内で当たりは1つになる。


 だが、それは確率に頼る戦い方でもある。33%の確率で本体に命中してしまえば、その時点で終わりだからだ。ヒメカはじっくりと考え、その策を取るのはやめた。メンターの選んでくれた3つ目の能力を信じてみようと決めたからだ。


 やがて1分が経過し、アタエの『鉄人』が解除される。それと同時、


 ヒメカの発動。

 H-12-F『ニ-ドルヘア』

 頭部から髪の毛を放射する。


 ヒメカはあらかじめ『劣化分身』2人を盾にした状態でアタエにぎりぎりまで近づいておいた。分身ごとダメージを喰らうリスクはあったが、耐えれば勝ちだと判断した。『ニードルヘア』によって飛び出した髪の毛はアタエの目に刺さり、視界を奪った。試合中の回復は不可能なダメージ。ヒメカは、イチかバチかでアタエが『チャージショット』を撃つのを警戒したが、そうはならなかった。


 アタエの発動。

 C-16-G『用心棒』

 身体能力の強化された人間を召喚する。それが死亡した場合、発動者も死亡する。


 ヒメカ同様、アタエも増援を呼んでいた。これで戦闘エリアの中には、少女が4人とガタイの良い男が1人。アタエとその配下である少女3人はそれぞれナイフを持つ。一方でアタエは一撃必殺を持っているが、代わりに視界を失っている。そしてアタエの配下の男は、視界と筋肉を持ち合わせている。


 分身がアタエを斬りつける。だが、肝心の本体は『用心棒』が拘束している。そして『用心棒』はアタエの命令通りに、『チャージショット』の前に捕らえたヒメカの身体を差し出す。


 次の瞬間、閃光が走った。1分以上溜めた『チャージショット』は、分身達の腕をふっ飛ばしつつヒメカに命中し『用心棒』の身体は傷を負いつつも大きく後方へ吹っ飛んだ。


 決着。

 アタエの勝利。


 参加メンター

 アタエ 滝杉こげお様

 ヒメカ 百足陣三郎様



 感想

 今回は両者が召喚持ちだったので登場人数合計5人の大乱闘になりました。割と本編で使われた能力が多く使用された回になったと思うんですが、バトルの展開は被ってませんし、両者ともわりと戦略の通りに行動した結果になったかなと思います。しかしマッチョ1人に少女4人の乱戦は傍目から見ると怪しすぎる光景な気もする。

 ご参加ありがとうございました。またよろしくお願いします。

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