第2話 シード適正


 隕石が南極大陸に落下してから丸一年が経過し、現場で見つかった[シード]に関して様々なことが判明してきた。


 その一つが、[シード適正]だ。


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 シード能力者による犯罪を取り締まるためにはシード能力者が必要という結論から生まれた[シード能力者育成プロジェクト]によって、世界中から集められたエリート軍人達に[コピーシード]を投与しシード能力者化(シード化)が進められたのだが、発言した能力の成長具合に明らかな差が確認された。


 その後の調査の結果、[シード]を体に取り組むことによって得られる力には個人差があること、そして年齢が若く成長期なほど強い力を得ることが判明した。


 その為に世界中でおよそ13歳から15歳を対象にシードの適性検査が行われることとなった。


 その検査方法は至ってシンプルで、対象者の血液から作られたiPS細胞より心筋細胞を作り出し、[コピーシード]を投与したモルモットの血液を垂らすというものだ。


 細胞に[シード適正]がある場合はこれにより、急激に心拍数が上昇することが判明している。


 なので限りあるシードの消費を抑え、安全でもっとも簡単な判別方法としてこの手法が採用された。


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 行われた[シード適正]の検査は年齢に指定があるとはいえ全人類が対象者であり、その人数は治験段階とは桁違いになる。


 その結果として奇跡的な確率でこれまでに無い反応が起こる場合が明らかになった。


 普通は心筋の鼓動が少し早くなるぐらいで、適正があれば倍以上になるとされていたが、その認識は間違っていた。


 本当の適正者はその程度のドーピング効果では済まなかったのだ。


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 これは完璧な適正者の心筋細胞で[シード適正]の検査をした時の話。


 他の人と同じようにiPS細胞から心筋細胞を作製し、シード化したモルモットの血を足らした。


 始めはそれまでの適正者と同じように鼓動が早くなるだけだったのだが、暫くすると劇的な変化が起こった。


[突然変異]


 そう呼ぶしかない現象が試験管の中で起こった。


 急激な細胞分裂が始まり、まるで意思を持っているかのように動く。


 例えるのであれば動きの早い粘菌だろうか。


 すぐさまに試験管の出口を見つけ出し、近くのシード化したモルモットの血液に向かって動き出した。


 研究員が慌てて遠ざけると、近くのシード化したモルモットの血液を垂らしてある、別の心筋細胞に向かっていった。


 その細胞は既に処分対象ということで、今度は様子を見守る研究員だったが、驚愕の出来事を目の当たりにする。


 細胞が別の細胞を自ら取り込んだのだ。

 それによって突然変異した細胞はさらに肥大化した。


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 近くにあった5つほど他の細胞を取り込んだのだ頃だったろうか。


 初めは心筋細胞で構成された単細胞といった所から、心筋細胞をコアにアメーバのような多細胞生物になり、さらには新たな生物としてスライムのような生命体の体を成したのだ。


 さらにはそのスライムが異能力を発揮したのだが、何度か異能力を発揮した後に絶命した。


 このことが発表され世界中に知れ渡る影響ははかり知れず、安全性について議論が成されることになった。

 しかし既に投与されている軍人に異変がないことから、問題ないと結論付けられたのだが、可能性といった面で補償金の面を加えるために、謝礼金が3億円に増額されたことで[シード適正]検査は加速することになった。

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ザ・シード[プロトタイプ] シグマ @320-sigma

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