オシドリカップル+1の俺

人間 越

第一部

プロローグ

――明菜陽介あきなようすけ三鷹悠美みたかゆみをどう思うか?


「えー? 美男美女の理想のカップルじゃない? 陽介君すごいイケメンで羨ましいけど、でも悠美は悠美でいい子だし。なんでも、幼馴染らしいじゃん? やっぱり二人の間には元から割って入れなかったいうか。まあ、誰もが認めるカップルよね」



 ――宇民翔太うたみしょうたは?


「は? え、誰? あ、もしかしてあいつ? 陽介君と悠美の周りをいつもちらついてる羽虫。全く、空気読めって言うか。二人と幼馴染だか何だか知らないけど、正直邪魔そうだよね。今まではどうだったか知らないけど、もう二人は付き合ってるんだから、そういうの察しなさいよって感じ」



 宇民翔太。

 ここ、幡代はたしろ学園での俺はそういう印象である。

 ……いや、被害妄想とかではなく、マジで。俺がインタビューしてそう答えられた。思い出さなければ印象になく、存在を思いだされたらヘイトしか溜まっていない。そういうやつである。……羽虫だ。

 明菜陽介と三鷹悠美は俺の幼馴染である。幼稚園に入る前から、ずっと三人でいた。

 イケメンで頭もよくスポーツ万能だが心優しい陽介とは男同士ということもあり、特につるんでいた。いじめられてる悠美を一緒に助けたことは多分、これから将来何度も得意になれるであろう思い出である。

 悠美は明るいがバカで少々、いやかなり抜けてるところがある女の子で、俺はそんな彼女をかなりフォローしてきた。俺としてはどちらかと言えば、妹的な存在だ。

 そして、俺はといえば、陽介と比べればお世辞にもイケメンとは言えない、というか正直なところ、中の下。勉強もスポーツも陽介に劣り、そして陽介みたくスマートな気遣いが出来ない。この前、ブラの透けてるクラスメイトの女子にそれを指摘したら、デリカシーなさすぎと叩かれた。

 ともあれ、カッコイイ陽介とムードメーカーで愛嬌溢れる悠美。そしておまけの俺。それが今までの関係であったが、それが少しばかり変わったのは一カ月前。

 陽介が悠美のことが好きだと俺に告白してきたのだ。

 幼馴染の頼み。もちろん、俺は協力した。告白までのプランを練り、ナーバスになる陽介を励まし、不良に扮して一芝居打ったりもした。

 その結果、めでたく二人は付き合うことになり、そして俺はそんな二人を心から祝福した。気が弱かった陽介の勇気を振り絞った告白に、妹的立場の悠美に素敵な彼氏が出来た。言うことなしの大団円――であるはずだった。

 

 しかし、二人は――お似合い過ぎたのだ。

 

 カッコイイと陽介がもてはやされることはあれど、基本的に幼馴染三人で固まっていた俺らであるが、二人は学校で注目のおしどり夫婦に。憧れのカップルとして、カップルグループである一軍へと昇格していった。俺を差し置いて。独り身の俺は、要するに邪魔なのだ。余るのだ。主に遊園地に遊びに行ったとかに。ジェットコースターで一人だけになってしまうのだ。

 閑話休題。

 話をまとめよう。

 幼馴染三人組の翔太、陽介、悠美。ある日、めでたく陽介と悠美は付き合うことに。お似合いのお二人は瞬く間にクラス内カーストを駆け上がって行った。ただし、俺を置いて。

 まあ、二人は付き合ったわけだし、その辺、空気が読めないわけじゃない。

 

 ただ、問題としてはお二人がお似合い過ぎる反動で――俺の株が一軍を中心に爆下がりしてることである。

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