第2話

 小学二年生の頃だった。新学期から一ヶ月たった中途半端な時期にその子は転校してきた。名前はもう出てこないし、顔も良くは思い出せないのだが、精悍で、やや骨ばっていて、僕より背が高かったことは覚えている。そして彼女が背負っているのは緑色のランドセルだった。

 彼女は周囲に溶け込まなかった。例えば授業中、みんなが手を挙げる中で一人窓の外を見つめていた。二人一組のペアを作るときも誰かからの声掛けを待ち、そのうちいつもあぶれるようになった。昼休みもどこにいるのかわからず、大人たちがそれを問題にしたこともった。それでも彼女は誰よりもテストの成績がよかったし、足も速かった。言われたことはきちんとこなすし、遅刻や忘れ物もなかった。

 外来者、そんな言葉がぴったりと当てはまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る