第16話烈火の魔女

馬車の中で、ヒナタに気になったことを聞いている。


「てかさ、ヒナタジョブなに?」

「ふふふ、よくぞ聞いてくれた!兄貴!うちのジョブは、『火煙使い』だ!『火煙術』って言うスキルを自力で取ったんだ。初期のスキルじゃないよ!」

「でも、極意系のセンス持ってたろ。初期の」


ヒナタは、あからさまにギクッとなりつつ「まあ、それも実力のうち」と、開き直る。ああ、やっぱり馬鹿だ。


「ヒナタも店にくんの?」

「行く。報酬、貰ってないし」

「チッ、バレたか」

「うちは、そんなに馬鹿じゃないよ!」


そんなってことは、多少なりとも自覚はしているのね。まあ、馬鹿ってことにかわりは無い。


「一応ギルドに連絡した方がいいかな」

「兄貴いってらー」

「んじゃ、臨時報酬は俺の物な」

「ちょっと待って兄貴、うちも行く」


————カランカラン

もはや懐かしさまで感じる入店のベル。あれ?妙に静かだな、なんでみんなこっち見てんの?ああ、それもそうかこんなマスク被った奴がいきなり入って来たら怖いよな。

唐突に、酒を飲んでいた奴がポロリと呟く。


「烈火の魔女じゃね?」


途端にガヤガヤし出す。烈火の魔女?って何だ?


「ヒナタ、烈火の魔女って何?」

「ふっふっふー、それはうちのこと」


再び静寂が訪れ、みんなが目を丸くする。


「マジかよ......攻略組じゃん。それも、『月歩行法』(つきなんば)のクラン長じゃねえか」


『月歩行法』か、聞いたことがある。ちなみにだが、クランというのはパーティーの寄せ集めみたいなもの、ソロも入るがそのうちパーティーになる。話をもどすが、『月歩行法』は確か、大迷宮アトランティスを攻略している。が、まさかクラン長があの馬鹿だとは思うまい。たぶん、歩行法のところはあいつを馬鹿にしてるよね。


「そうだ、兄貴うちのクランに入らない?というか入れ」

「えぇ、アトランティスやだ」

「アトランティス攻略しなくていいから」

「入ったらなんかメリットあるの?」

「名を広められる」

「別にいい」

「アトランティスの入場料が無料」

「当分行かない」

「じゃあ、なんか手伝う」

「何をだよ」

「素材集め?とか、情報提供する」

「んー、分かった入る」


情報提供か、こき使ってやろう。これじゃ完全にパシリだなヒナタ。まあいいや早く報告していこう。


「ど、どのようなご用件で?」

「報告を、ファントムフロッグを討伐しましたので」

「あと、『月歩行法』に、登録」

「は、はい!」


受け付けの人が緊張してか、変なテンションだ。登録を済ませ、スクショされながらギルドを出た。臨時報酬は無かったな。

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