12話 粒子ドライバー・トロン Dパート

 休み明けの学校。

 6のAの教室。ジュンヤたちは、ギアロードの話をしていた。

「おはよう」

 ノゾムも加わり、新しい姿になったことや、新しい技のことで盛り上がる。

 フワが、おもちゃを買おうとする男子二人に、怒ったような顔を向けた。 

 戦いで壊れたジュンヤの変身へんしんベルトは、普通のおもちゃと交換してもらっていた。ただし、サブロウの厚意こういではなく、ツバキのはからい。

「変な怪人かいじんをカッコイイと言うおにいちゃんを、なんとかして」

 ペジの見た目が怪人かいじんのような理由は、設計者の趣味。アキラのセンスが原因らしい。

「見てるんじゃないか」

「ジュンヤだって、その前の番組、見てるでしょ」

「え? み、見てねーし」

 ふわりとしたボブカットを揺らす女子から、ジュンヤが目をそらした。

 ノゾムは素直。

「変なこと言うかもしれないけど、どの番組も、あんまり違いがないよね」

「全然、かわいさが違うでしょ」

「ああ。違うところもあるけど、じつは同じなのかもしれない。もちろん、ギアロードのあとの番組も」

 にやにやするフワ。

「それで、変身へんしんできないのに、なんで新しいおもちゃを買うの?」

「敵がいないのに変身へんしんしても、仕方ないし」

「ふーん」

「子供っぽいって言わないのか?」

 不思議そうなジュンヤ。

「ちょっとは成長したじゃない」

 フワが言った。すました顔が、あどけない笑顔に変わる。

「なんだ、その上から目線は」

 ジュンヤの言葉に怒りの色はない。むしろ微笑んでいた。

 ノゾムが声を上げて笑う。

 外に、暴れる黒い怪人かいじんは、いない。

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粒子ドライバー・ソーグ 多田七究 @tada79

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