先輩

灯花

先輩

あなたが 私の前を


軽やかに 走り抜ける


私は 一人の後輩にすぎない



もっと近くで


もっと長く



あなたを 見ていたい



そう 願ってやまないのに



二人の距離は 縮まらない




「二年」という 年齢の差が


いつも


私の前に 立ちふさがり



どこまでも どこまでも



あなたと 私は



平行線



決して交わることのない 二直線







あなたの周りには


きっと 大勢の 女の子がいるのでしょう


きっと みんな 可愛いのでしょう



私なんか かすんで見えないほどに






「大勢」 じゃなくて


「唯一」 になりたい



そんな


一人の 後輩の


小さな 小さな


願い事








「先輩」


「おつかれ」


「おつかれさまです」


「今日は 暑かったなぁ」


「ちゃんと 水分摂られてくださいね」


「わかってるって。なんか、お母さんみたいだな」


「……そんなこと、ないです」


「いつも、ありがとな」


「……ずるいですよ」


「ん? 」


「……何でもないです」


「あんま、無理すんなよ」


「……はい」


「あ、やっば。ごめん、人待たせてた。じゃ、また明日な」


「はい。おつかれさまです」



遠ざかる あなたの背中


きっとその先には 彼女が待っているのだろう


わかっているけど 諦めきれない



「先輩」


ひとり つぶやく



私は



あなたのことが







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

先輩 灯花 @Amamiya490

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ