日常回(手抜きではない)

とある休日の朝


7:30


(・・・もう朝か)


俺はまだ眠たい半目を擦りながら、横に寝ている神木をベッドから落とし、気持ちのい朝を迎えた。


「いったぁ・・・」


「朝ごはん作ってくるからもう少し寝てていいぞ」


「だったら落とさないでよぉ」


まず潜り込むなって言いたいんだがな。


俺は顔を洗い、完全に目を覚ますと朝食の支度に取り掛かった。


神木が来てからだいぶ自炊するようになったな・・・


最近、妙に肌の調子が良いのはそれが理由だったのか、なんて思いながら俺は手早く朝食を作り終えた。


「神木、朝ごはん出来たから服着て出てこい」


すると部屋から声にならない声が聞こえてきたので、俺は先に席に座って朝のニュースを見ることにした。


「おはよ~」


数分経つと神木が俺の部屋から、キチンと服を着て出てきた。(俺の部屋にお前の服置いてたのか・・・)


「そういえば今日、なんか用事あるんだろ?」


時間に甘い神木のスケジュールはなんとなく把握していた。


「午後からだから大丈夫だよ。それに私なんかより君は大丈夫なの?今日って確か午前中からバイトでしょ」


「安心しろ、お前ほど俺は時間に対して適当じゃない」


「ううっ・・・否定出来ない・・・」


そりゃずっとその調子なら無理だろうな。


俺は後片付けを済ませ、出かける支度を整え、ああだこうだとしているうちに丁度いいくらいの時間になった。


「そろそろ俺は出るけど、時間にはマネージャーさん来ると思うから必ず出ろよ?それと雨降るかもだからその時は洗濯物頼んだぞ。

それと・・・」


「はいはい分かりましたよ・・・」


彼女のその言葉に軽い不信感を感じながらも、時間が迫っていたので仕方なく家を出た。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「おはようございます」


「おっ、おはよー。ごめんね休みの日なのに朝から働かせて」


塾に入ると、先に準備をしていた千咲さんが声を掛けてきた。


「いえ、どうすえ休みの日に家にいてもすることないんで」


すると千咲さんが何故か俺に対し、怪しむような目で見てきた。


「凛ちゃんに構ってあげないの?」


「あいつもああ見えて忙しいですからね」


「まるで忙しくなかったら構ってあげるみたいな言い方だね」


「・・・言い方が誤解を生んだなら謝罪しますよ」


「本当に誤解なんだかねぇ」


「無駄話してると、そろそろ生徒来ますよ」


それから開講の準備をしていると、いつの間にか生徒が集まってきてしまったので少し前倒しで授業を始めた。


「・・・はい、一旦休憩してから授業再開するから」


中学生とはいえ、流石に1時間半も授業をすると疲れが襲ってきた。


「・・・ねえ先生」


俺が椅子に座り、休憩していると何人かの生徒に声をかけられた。


「どうした、授業でわからない所でもあったか?」


「いや、そうじゃなくって・・・」


自分でも生徒からは親しみにくいと思っていたからか、授業以外のことで声をかけられたのが少し嬉しかった。


「先生って同棲中の彼女がいて、さらに幼なじみの女の子とも関係あるって本当ですか?」


その瞬間、彼の心の中をあらゆる感情が支配した。


「・・・その話を誰から聞いたんだ」


「ひっ、ひぃ!」


すると突然、彼の背後から見えるはずのないどす黒いゆらゆらと揺れる炎ではない何かが蠢いているのが見えてきた。


その様子に聞いてきた生徒のみならず、他の教室内の生徒にまで恐怖が伝染した。


「それで誰なんだ?」


「千咲先生です!この前先生が休み時間に雑談みたいに言ってました!」


「あの女ァ!」


俺はまだ休み時間があることを確認すると、隣の教室に突撃した。


「千咲さん、何してくれたんですか!?」


「へ?なんの凍?」


「あなた、神木や環のこと生徒に教えたでしょ!しかも全く事実と違いますし!」


「でも同居して幼なじみとも仲がいいのは事実でしょ」


ダメだこの人、話が通じない。


「いい加減にしてくださいよ・・・」


すると再び彼の背後に黒い揺らめきが起きたかと思えば、そこから見るのすら躊躇う死神のような化物まで見えてきた。


「・・・私に立ち向かうとはいい度胸ね」


すると彼女の背後からも何かが見え始めてきた。


「「「ネ、ネコ!?」」」


生徒たちからざわめきが走った。


そう彼女の背後から現れたのはネコだった。しかもリアルなやつじゃなくて可愛い感じのネコだ。


「君の死神ごときで私のネコを倒せるとでも?」


「「「何言ってんのアンタ!?」」」


このまま気合いどうしのぶつかり合いをしても良かったが、ここは俺が引くことにした。


「とりあえず今日は辞めにしましょう。なんなら俺の負けでもいいんで」


「「「オトナ!」」」


しかし千咲さんがその申し入れを受けることはなかった。


「やだやだ!私はあなたに勝ちたいの!」


「「「こども!」」」


こんなことをしているうちに休み時間が終わりそうになったので、俺は静かにその場を立ち去った。


「先生どうなったんですか?」


さっきの生徒が不安そうに聞いてきた。


「まあ大したことじゃなかったからな。でもこれからは千咲さんが言うことは嘘だと思えよ」


「まずそれ塾成り立ちませんよ・・・」




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