無理にでもこういうキャラが欲しかった

「あっ、動いたよ」


私たちは引き続きストーk・・・浮気調査をしていた。


「やっぱり女の人と会うのかな?」


環ちゃんは段々と不安そうな顔になってきた。


確かに彼女が出来たら伝えると約束していた彼女にとっては傷つくことなのかもしれない。{・・・あれ?私は?)


「まだ女と決まったわけではないよ!」


「彼にお菓子をあげて、彼からケーキを貰うような男の人?・・・黒じゃん」


致命的だった。


「どこかお店に入ったよ!」


「今度は・・・塾?」


私は自分で言いながらも、少し自分を疑った。


「ここでバイトしてるとか?」


それくらいしか私には思いつかなかった。


「まぁ・・・そうなのかな」


そうだとしたら色々と納得がいく。


彼が生徒にお菓子を貰い、そしてケーキはそのお返しと考えるべきなのだろう。


「うーん・・・普通は生徒からそういうのもらえないと思うし、お返しなんてもっとダメっぽいけどなぁ・・・」


環ちゃんの意見はもっともだけど、でも他は考えられない。


「だったら出てきた時に思い切って聞いてみる?」


「まぁ神木さんがそれでいいなら賛成だよ」


「出てくる時間はいつも家に帰ってくる時間から歩く時間を引き算すればいいから、どっかで夕ご飯にしよ」


「それでいいけど・・・。神木さんお金持ってるの?」


「うん、もう1つ口座作ったからお仕事のお金がそこに入ってくるの」


「それって勝手に作って大丈夫なの・・・?」


「大丈夫でしょ!」


まあ知らんけど


それから時間まで2人で寂しい女子会を開いた後、時間になり塾に戻ってきた。


「・・・あ!出てきたよ。おー「待って神木さん」


声を掛けようとすると環ちゃんに止められた。


「誰かを待ってるみたいよ」


環ちゃんの言う通り、彼は壁に背中を預け、誰かを待っているようだ。


「・・・誰か来た」


そうして顔を見やると、彼に声を掛ける女子学生がいた。


「もしかして・・・」


私と環ちゃんの頭に、最悪のパターンが浮かんできた。


「そんなわけないよ!きっと家が近いとかで途中まで送るだけだよ!」


私は環ちゃん、そして自分を納得させるために全力だった。


「そ、そうだよね!やっぱり優しいなぁ・・・」


それからしばらく二人の様子を伺っていると、近くのファミレスに入っていった。


「楽しそうに話してるね・・・」


環ちゃんはキツめの炭酸を喉に流し込みながらそう呟いた。


「環ちゃん静かに!2人に聞こえちゃうよ」


そうしてしばらくしていると、隣の席から声が聞こえてきた。


「ねえねえ、この前のお菓子どうだった?」


「とても美味しかったですよ。お返しがあれで足りるかどうか心配なくらいに」


あの朴念仁が、冗談を言った・・?


「ほらほら君にもパフェ分けてあげるね」


「いいんですか?」


「もちろんだよ、あーん・・・」


そっとのぞき込んでいた彼女たちは、静かに炎を燃やしながら、その様子を伺った。


「・・・い、頂きます」


・・・・・・・・・・


「ねえ、何だか少し暑くない?」


「暑い・・・というか火が燃えているような熱さですね・・・」


すると、その女の子は小さく口元に笑みを浮かべながらこんな事を口走りやがった。


「・・・あっ、ごめんね口にクリーム付いちゃったね」


「本当ですか?」


「うん、拭いてあげるね」


そう言いながら女が布巾を持ちながら彼の顔に近づけた時だった。


チュッ・・・


彼の頬に優しいキスをした。


そして今に繋がる。


「「ど、どういう事なの!」」


私たちは同時に立ち上がった。


「神木に環・・・お前らどうしてここに?」


「どうしてそんなに落ち着いていられるの!?」


「今何したか分かってる!?あなたは子供相手にチ、チューしたのよ!?」


正しくは「された」が正しいが、今はどうでもいい事だ。


「お前ら何を勘違いしてるんだ?」


「「えっ?」」


そして私たちは言われるがまま同じ席に向かい合わせに座らせられた。


「こちら古い知り合いでバイト先の塾の塾長の千咲さん。見た目は・・まぁアレだが、中身は・・ウッ」


紹介をしている途中で、突然彼が倒れ込んでしまった。


「ごめんなさいね。さっきも言った通り私は先導院 千咲よ。よろしくね、凛ちゃんに環ちゃん」


なかなかに仰々しい苗字から、彼との関係も少しは理解出来たが・・・


「どうして私たちの名前を?」


「凛ちゃんは有名だし、環ちゃんも塾の先生なんかやってると結構聞くのよ」


「自己紹介も終わったところで、どうして俺の回りをコソコソしてたのかを聞いてもいいか?」


「だ、だって最近帰り遅いし、お菓子は貰ってくるしで浮気なのかと思ったんだよ・・・」


「そもそも付き合ってないから浮気ではないだろ」


「・・・・・・でも実際、こうして女の人とキスしてるじゃん!」


(((・・・流した!?)))


「安心して、私と彼とはそんな関係じゃないよ。さっきのキスも2人に気づいたからカマをかけただけなの」


「それだけのために俺はキスされたのか・・・」


「でもやっぱり付き合ってもないのにキスはダメです!」


すると何故か彼が深い溜息をついた。


「・・・全裸でベッドに忍い込む」


「はうあ!」


私は頭を抱えた。


「・・・週に1回くらいは付き合ってもないのに男の部屋に泊まり込む」


「はうあ!」


環ちゃんまで頭を抱え込んだ。(環ちゃんそんな事してたんだ)


「俺は千咲さんとは付き合ってないし、そして神木とも、もちろん環とも付き合ってない。・・・分かったか?」


「「「はい、理解しました」」」


それからファミレスで、千咲さんも含めて正座だった。





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