殺人あってのカーニバル 〜巴里虹が見た流音一政〜

斉賀 朗数

プロローグ 〜謝肉祭に肉は食べない〜

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 ごめんなさいごめんなさいごめんなさい。

 ありがとうありがとうありがとう。


 口に含んだ肉に謝罪と感謝を繰り返す。

 目に浮かぶ涙は、悲しみではなくて漏れた喜び。

 どうしても零れ落ちる肉の欠片は、笑顔のせい。


 つり上がった唇から、ぽろり、びちゃり、ぽろり、ぴちゅりと、そんな効果音でも聞こえてきそうな気がするけれど、自分が咀嚼そしゃくする肉のぐっちゅぬぐにゅりゅという音しか聞こえない。

 一心不乱に咀嚼を続けるのは、肉の想像以上の固さと脂肪のぐにゃぐにゃと柔らかい部分との組み合わせが、絶妙に僕の歯から逃げ回るからであった。


 普段食べる肉というのは、しっかりとした加工業者がしっかりとした行程の上、部位であったり、大きさであったりを仕分けてくれているから容易に食べることができるのだろう。




 この肉は人生で初めて、僕が自分でさばいたものだから、これくらいは我慢しないといけない。




 それにしてもなんて美しいのだろう、あの人の肉は。




 目の前にある鏡。

 そこに映る僕。

 笑っている。

 大好きだった。

 あの人を食べて。




 ずっと食べたかった、あの人の脚。




 陸上競技をするあの人の脚は、たくましい筋肉が皮膚を内側から突っ張らせていて、はじけんばかりの活力や力強さをにじみ出していた。




 それだけでもう、




 僕には十分すぎる調味料みたいなもので、




 生のまま、




 その肉を、






 食べる事が出来た。






 昔にテレビで見た、友達を銃で撃って食べた人が、今でも人の肉を食べたいっていう気持ちが今なら存分に分かる

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