第17話 epilogue

『神奈川県全域で発生した原因不明の奇病についてのニュースです』

 テレビをつければこのニュース。

『現在、神奈川県全域にて原因不明の病が発生しております。現在患者数は百人前後とみられており、厚生労働省は会見を開き、原因の究明に全力を尽くしているとのことですが、未だ究明はできておらず、神奈川県保健局など関係各所が対応に追われています。』

『感染するとゾンビのような風貌になることから世間ではゾンビ病と呼ばれています』

 私は手のひらのブレスレットをくるくる回す。

『専門家の見解も分かれており、未だ原因は不明とのことです』

 私の英知と愛は彼の体細胞だけでなく遺伝子をも変異させてしまったらしい。

 その体を神奈川県の水源である相模湖に落とした結果がこれだ。

 その遺伝子がヒトの中枢神経に沈着し、増殖していく。確かにヤコブ病と同じメカニズムだ。

 そして、十日もあれば新たなゾンビの完成。原因がわからない以上、神奈川県全域が映画やゲームのようにゾンビに覆われるのも時間の問題だ。

 だけど、もう、どうでもいい。

 彼も、茜も、死んでいる。

 だから、もう、どうでもいい。


 私はそんなニュースを聞いていると、あくびが出てきた。

 少し、眠い。

 少し、眠ろうかな。

 どれくらい?

 そうだね。

 私がこのマンションから見下ろす街並みが屍に覆われる日まで。


 コタール症候群の患者は墓場を求める。

 きっと、この街が私の墓場だ。私のZ《終末》だ。

「ああ、もう、どうでもいい」

 そう言って私は、深く暗い闇に身を委ねた。

 暗い闇に救いがあるような気がして。

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