やろうぜ、サッカー!(但し投石機を使用するものとする)

 文句なく面白い。

 一見、さいきん流行の兆しを見せる『異世界転生モノにちょっと皮肉交えつつ特殊な設定を盛り込むヤツ』の亜種に見えるんですが、この作品はもう一回捻りを入れてきてます。

 異世界転生しないんです。

 これ、この作品。スゴいのが、転生するモノが『人間』じゃなくて『文化』そのものなんですね。
 本来異世界モノって、大まかに言えば
 『人間』が転生して、異世界の『文化』に触れる。
 その『文化』に触れた上で転生者が何を見て何を感じるか、みたいな話じゃないですか。

 構造が逆なんですよね、これ。
 いきなり『文化』が異世界にポンと出てきて、異世界の『人間』がそれに振り回されるわけです。

 その異世界人たちのてんやわんやがこの作品の面白さの真骨頂なんですが、これがまた軽妙で面白い。

 文体自体は堅い方に分類されると思うんですが、それを全く感じさせない読みやすさと、作者のシニカルなユーモアが読み手をぐいぐい引きつけます。

 これは個人の所感というか妄想なんですけど、オーパーツってあるじゃないですか?
 コロンビアの黄金シャトルとか、テキサスのハンマーの化石とか。
 たぶん、ああいうの見つけた人たちって、この作品の登場人物みたいな反応してたんじゃないかな。

「ああでもないこうでもない」と相談しながら、手探りで真の『サッカー』を探求する異世界人たちの今後の動向を、引き続き見守らせて頂きます。

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