復活

1課に戻ると長沢が竹下を呼んだ。

「馬場さんが竹下さんに話があるらしいですよ。」

「はあ?」

竹下は首をかしげた。

何一つ悪いことはしていないはずだ。


「失礼いたします。」

竹下は総監室に入った。

参事官はいつも総監のそばにいなければならないため、馬場もここにいる。


「おう、竹下?

俺はお前を読んだ覚えはないぞ?」

総監は急須を置いた。


「いえ、私が呼びました。」

馬場が頭を下げた。


「なんのようで呼んだのだ?

そもそも竹下は捜査権がないどころか警視庁は出禁だぞ。」


馬場は少し咳をした。

「ですから、竹下、中沢に捜査権及び警視庁立ち入りを正式に認めていただきたいと思いまして。

私のお願いでありますが、……いかがでしょうか……?」



岩瀬総監は馬場を見上げた。



「馬鹿者っ!」


馬場は固まった。


「高松の意思をなんとする!

彼らは多くの人に迷惑をかけ、警察組織の統率を乱す奴だぞ!

警察の信頼を落とそうというのか!

ぶっちゃけて言えば、奴らは悪党だ!」



竹下は少し笑った。

「その言葉、何度聞いたでしょうか。

その度に私は同じことを反論せねばなりません。

面倒です。」


いつからだろう。

竹下は急に回想した。


2課にいた頃の馬場は竹下がどんな突拍子もない仮説を立てても「面白い」「なるほど」と賛同してくれていた。

よくわからないものを拾ってきては鑑定に回していたのを見れば「どうしてそれを拾ったんだ?」と興味深そうに尋ねてきていた。

竹下が「統率を乱した」などと言われ、謹慎処分になっても彼は竹下の肩を持っていた。


いつからだろう。

何もかも彼が理屈抜きに否定し始めたのは。


竹下は続けた。


「私は事件を早く細かく一つ残らず綺麗に解決するためだけに警察にいます。」

馬場は竹下を見た。


「事件を解決できるのであれば、統率など乱しに乱しまくりましょう。

組織なんてぶっ壊して、見せますよ。」


総監は手を組んで竹下を睨みつけた。


「事件を起こした人のみならず、それを隠蔽しようとした人、捜査を妨害したもの。

全てを平等に裁きます。」


一息ついた。

「これが私の正義です。」


総監は少し頬をすぼめた。


「……………勝手にすればいい。

馬場、お前が全ての責任を取れ。」


馬場は頭を深く、深く下げた。


「では、失礼致します。」

二人は出て行った。



総監は二人が退室したのを見ると電話を取った。


「はい、ご多忙の中失礼致します。岩瀬です。」


「………ええ、奴らは、本気です。」

総監がそう言うと電話から笑い声が漏れた。

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