検証

そこには静寂な時が溜まっていた。


 岩瀬新総監を筆頭に、馬場参事官、茶屋副総監がただただ手を合わせてお冥福を祈っていた。

 後ろには落ち着きを払った片野警察長官が高松元総監の死体を眺めていた。

 米村は迂闊には手を出せないとただ上がそこをどくまでを待っていた。


 ガチャ、と警視総監室(殺人現場)のドアが開き、竹下が入った。


「 竹下………お前……こんな時にこんなところに来るんじゃねえ…… 」

「 竹下!でていけ!お前にここにいる権利はないぞ!わかっているのか! 」

「 指揮系統を乱す大悪党!今回こそは左遷させるぞ! 」


 竹下は取り乱す様子はない。

「 米村さん、この部屋で取れた指紋にはどのようなものがありますか?

 まあ、私の推察どうりに行けば不審者の指紋は検出されないと思うのですがね 」

「 それが……… 」

 米村は答えにくそうに言った。


「 何せ総監が亡くなられたので、流石にそういったことはまだ……… 指紋の一つも取っていません…… 」

 竹下は上層部を睨みつけ、怒鳴った。

「 何をしているのですか! 」

 廊下や窓ガラスに、そして彼らの心に刺さった。


「 人が殺されたというのに、なぜ犯人を見つけようとしないのですか!

 誰の命だって等しいのですよ!

 誰だって自分を殺した人を見つけ、罪を償ってほしいと思うはずです!

 それをするのが我々警察の仕事です!

 そして、次の被害者が出ないように最大限の努力をするのです! 」

 竹下は一つ間を空けて続けた。


「 あなた達こそ、警察しての資格はないじゃありませんか 」


 沈黙が続いた。

 そして、片野長官が「 次の仕事がありますので、 」と言って退室しようとした。

 ドアを開けるとそこにはたくさんの刑事がいた。

 彼らは長官を見たことはないようで、「 お通し願います 」と言った。


 長官はそこをどくと、一課のすべての刑事や鑑識、科捜研など多くの人がなだれ込んだ。

「 総監の無念を晴らすため、参りました! 」

 中沢がそう言った。


「 事件は早期解決を必要としています!

 皆さんで協力し、一刻も早い事件解決を目指しましょう! 」

 竹下が言うと馬場を含めた彼らはおおう、と同調した。

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