4.黄金を取り戻せ

 電科研の部室、机の上に乗った寸胴ずんどうで物々しい光線銃が、雷鳴を響かせる。

「おお。今のは結構上手く行ったんじゃないですか?」

 シラガミがゴーグルを外しながら喜んだ。が。

「いや……今のはそれっぽいだけだな。威力が本物とは程遠いし、稲妻の方向も定まってない。銃身のサイズも、シラガミの物より十倍でかい。なのに成功率は十分の一。改善点は山積みだな」

 私もゴーグルを外し、電科研製光線銃Ver2.4の様子を見る。さっきの反動か、大きなボディをぷすぷす言わせている。またパーツが何個かイカレてしまったようだ。

 普段は『地球人の進化の手助け』はお休みで、元々の電科研の活動、すなわち、稲妻の解明にいそしんでいる。

 廃ビルでの二度目の観測。更に兄の一件の時には間近で射撃の瞬間を見た。(音と見た目だけの威嚇射撃だったが)

 データの追加により研究は進んでいるが、再現するにはまだまだ至らない。

「……使って実験できたら、もっとはかどるんだけどなぁー……」

 シラガミが腰に差している光線銃に目を向ける。

「ダメですよ。レビウル星の技術をそのまま地球人に与えるのは禁止されています。あくまで進化をのが目的ですから」

「ちぇっ」

 まぁいい。このペースなら、いつか本物に匹敵する物を作れるはずだ。

「そういえば……実験のお金はどこから出てるんですか?これだけの実験、部費だけじゃ無理ですよね?」

「あぁ、機材とかは廃ビルの廃材をリメイクしたり上手いことなんやかんやしてるんだ。これも、元は捨てられてたポットとかラジコンとかが材料だった」

 部室の隅に置いてあるお茶運びロボを抱き上げる。

 ロボが持つお盆にコップを置けば、自動で頭部からお茶を注ぎ、指定のテーブルまで持って来てくれるという優れ物だ。

 私のもったいない精神と好奇心と暇つぶしによって作られた。

「あ、それ置き物じゃなかったんですね」

「まぁ、今は全然使ってないからな」

 ロボのボディを撫でる。

「どうしてですか?」

「一年生の頃は、楽しくて結構使ってたけどな……来客とか、見せる相手が居なかったから、次第に……その……」

 むなしくなってやめてしまった。

「まぁ、普通にペットボトルのお茶買った方が早いしな」

「えぇー。せっかく作ったんだからもっと使いましょうよ。今じゃ来客も結構来るでしょう。茜さんとかお兄さんとか、後……」

 そこでコンコンと、ノックの音がする。噂をすれば、というやつだ。

「邪魔するぞ」

 我らが電科研の顧問。卯木美奈子先生だ。シラガミが入部して以降、良く部室を訪れる。

「あぁ、先生。今お茶をおれしますね」

「いや、様子を見に来ただけだ。気にするな」

「いえいえ、遠慮なさらず」

 抱きかかえていたロボの頭部を開き、お湯と茶葉がセットされているのを確認し、テーブルから離れた位置に降ろす。お盆にコップを置く。お茶運びロボの頭部からじょぼじょぼとコップにお茶が注がれる。そして一輪だけ付いている車輪が回り、湯気で軌道を描きながら部室の床を駆け、卯木先生の足元にさんじた。

 先生は表情を変えない。

「……わざわざテーブルから離れた位置に置く必要があったか?」

「運ばせないとお茶運びロボではなくお茶淹れロボになってしまいます」

「……テーブルに着いてからお茶を入れた方が安全じゃないのか?」

「それではコップ運びロボになってしまいます」

「……そうか。お茶、ありがとう」

 そう言って先生は無表情のままロボからお茶を受け取り、ずずとすすった。

「何かこういうの、雰囲気出ますね。先輩」

 シラガミがロボの頭を撫でる。

 てっきり、先生にはくだらないとか言われると思っていた。

 私は卯木先生のことを、喋り方や雰囲気から厳しい人だと思い込んでいたが、そういえば兄のゲーム機も見逃してくれたし、何より『お悩み解決』なんてわけが分からない活動内容も認可していてくれている。

 どうやら、ただ単に厳しい人というわけではなさそうだ。

 それでも、何を考えているか分からない人ではあるが。



・・・・・・



 プールサイドのふちに座り、足で水面をちゃぷちゃぷする。涼しい。

「なーなー。せっかくの自由時間なんやからさー。こっち来て一緒に遊ぼーやー」

 茜が水面から頭だけ出して、私を誘う。

「せっかくの自由時間だから、こうやって休んでるんだよ」

 ご存知の通り、私は体育の成績が万年『1』なのである。今学期も例外ではないだろう。

「んもー。イナヅマちゃんのへなちょこ。それに、水に浸かっとかんと、男子にエロい目で見られてまうで?」

 茜が校舎を指差す。

「え?のぞくなら着替えの時だろ?」

「甘いなー。男子にとってはもう水着ってだけでうはうはやねん。うちには男の幼馴染がるから分かる」

「そう……かなぁ……?」

 私の知る男性は血縁を除けばシラガミしか居ないが、シラガミが水着だけでうはうはだとは思えなかった。

「もしそうだとしても、私なんか誰も覗かないと思うけど……」

 自分の体型を改めて見回す。理想がボンキュッボンだとするなら、キュッキュッキュッと言った所か。たまに中学生と見間違えられる。

「えー?イナヅマちゃんみたいな娘ぉ、需要高いと思うけどなぁ。あ、ほら」

 茜が何かに気付いたように校舎を見る。

 私も振り返って見てみると、廊下の窓からシラガミが顔を覗かせていた。

「……!?」

 心に呼応するように、ぐらりと体が大きく傾き、勢い良くプールに入水する。ざばんと大きな水飛沫が立った。

「がぼぼぼっ!えほっ、ぐぇっほ!」

 水が気管に入り、蛙の鳴き声のような咳が出る。

「わっ。大丈夫かいな」

 茜に背中をさすられた。それどころではない。

「な、何でシラガミが!?」

「あ、ほんまや。あれシラガミ君やん。やー、あの子も中々エロエロやな」

「えっ、えろえろって、ええっ!?」

「何を驚いとるん。シラガミ君だって男の子なんやで?」

 茜がにやにやと私を見る。

 い、いや、確かにそうだけど、そうじゃないというか。だってシラガミだぞ?今までだって、そういうこと一回もなかったし、男の子でもシラガミは他の男の子とは違うっていうか、シラガミが、そんな。

「っていうか誰見てるんだよっ!」

 もう一度校舎の窓を見る。しかし、そこにはすでにシラガミの姿はなかった。

「あらら、シラガミ君引っ込んでもーた」

「だ、誰見てたかとか分かるか!?」

「うーん。遠目やったから、プールのどこ見とったかは分からんなぁ」

 プールを見回す。中央ではイケてる女子達が水をかけあって遊んでいた。出る所がでていて、とても発育の良い体をしている。

 シラガミがああいう女子をそういう目で見ていたと思うと、何だかもやもやした。

「イナヅマちゃんやったらええなぁ」

「……え?」

「いや、シラガミ君がイナヅマちゃんのこと見とったらええなって」

「えっ、いや、そんな……っていうか私みたいなのは」

「シラガミ君に、そんな風に見られるの嫌?」

「あ……あぁぁーっ!!」

 耐えきれなくなって、プールの中に完全に身を沈めた。温度差で、頭が熱くなっていたことに気が付いた。

 目を開けると、水面の乱反射を通して届く太陽の光が、やけにまぶしかった。



・・・・・・



 更衣室での着替えを終え、教室に戻る途中。

「あれ?イナヅマちゃん、眼鏡は?」

「あっ、更衣室に忘れた」

 そんなわけで一人更衣室に舞い戻る。他の女子は全員着替えを済ませたようで、更衣室には私一人だった。

 自分が使っていた棚に手を伸ばし、眼鏡を手に取る。

「コンタクトにしよっかなぁ……」

 シラガミはそっちの方が好きかなぁとか考えながら出口へ向かうと、扉が一人でに開き、とある男と鉢合わせた。

「えっ」

「えっ」

「……あれっ。女子は皆、着替え終わってたよな?どうしてここに?」

「あ、いや、眼鏡を忘れてしまって、取りに戻りに……ここに」

「ああ、そうか。もう少しで覗く所だったかと、先生ヒヤっとしたよ」

「あ、あはは……」

「それじゃ、早く教室に戻りなさい」

「はーい……」

 その男とすれ違い、男は更衣室へ、私は外に出る。

 そこで脳内を全力で検索してみるが、さっきの男に全く見覚えがない。

「あんな先生居たっけ……?」

 というか、男の先生が女子更衣室で一体何を?

「あのー……」

 改めて扉を開き中を覗くと、男が棚に顔を突っ込んでいた。

「……っ!?」

 私が戦慄せんりつしていると、男が私に気付き、棚から顔を出した。

「……いやぁ、先生も眼鏡をここに忘れちゃ」

「噓つけ!」

 このおっさんは変態だ!

 どうする!どうするんだこういう時!先生!本物の先生に言わなければ!

「待ってくれ」

 走り去ろうとする私の腕を、おっさんが掴む。

「は、離せ変態!」

「ほらぁ、勘違いしてる……離せって言われてもなぁ。腕を離したら君は俺をここの先生に突き出すだろう?困るんだそれじゃ」

「か、勘違いって何だよ!」

「うーん。とりあえず俺は性犯罪を働く変態ではないってことなんだが……それを証明する方法がないんだよなぁ。証拠がないと信じないだろ。君も先生も」

「当たり前っ、だろ!」

 おっさんから逃れようとじたばたするが、まったく腕が離れない。体育『1』の女子高生と大人の男。力の差は歴然だった。

 ……あれ?これまずくないか?二人っきりで、変態が私の腕を掴んで離さない。

「うーん。どうしよっかなぁ……。あんまり非紳士的なことはしたくないんだが……気絶させちゃうのが手っ取り早いか?」

 おっさんが片手で頭の後ろを掻きながら、物騒なことを思案する。

 気絶。気絶って。私が気絶した後何するつもりだこいつ。

 冷や汗が全身から湧く。

「だっ、誰か助け……」

「先輩!」

 その時、シラガミが扉の前に駆け付けた。

「シラガミ!」

 私のことを助けに……!

「先輩!その人を通報しないでください!」



・・・・・・



 放課後、部室の扉を開けると、おっさんが手を上げて出迎えた。

「よう。お疲れさん」

 我が物顔で椅子に座っている。まったく不快極まりない。ここは私とシラガミの部室だというのに。

 シラガミがこいつをかくまおうと言うので、放課後までここに居させてやったのだ。

(この人は今、分岐点に居ます。電科研の出番です)

 小声で私に話しかけながら、シラガミがおっさんの顔を見つめる。可能性の数値を見ているのだろう。

(……あれか。プール覗いてたのも、分岐点に居る奴を探してただけか)

(の、覗いてた。って、言い方が悪いですよ。っていうかあの時プールに先輩も居たんですか)

 シラガミは私の存在に気付いてすらいなかったようだ。

(見つけろよ!私を!真っ先に!あんなおっさんよりも早く!)

 シラガミを怒りのままにポカポカと叩く。

「痛い。何するんですか」

「おい。さっきから何話してるんだ?」

 おっさんが私達の顔を覗く。

「うるさい。勝手に動くな。今はとりあえず匿ってやってはいるが、あんたが私を殴ろうとしたこと、忘れてないからな」

 警戒の念を込めて、にらむ。

「ああ、また勘違いしているぞ。確かに俺は君を気絶させる腹積はらづもりだったが、なるべく手荒な手段は使わないつもりだったんだぞ」

「……じゃあ、どうするつもりだったんだよ」

「えっと……殴るのはダメだから……窒息ちっそくさせるとか?」

「十分手荒だろうが!」

 シラガミに向き直る。

(おい!やっぱりこんな奴助けない方がいいんじゃないのか!?)

(その……確かに問題のありそうな人ですけど、このコンタクトの数値は絶対です。あの人が、人類の進化に必要な人間である可能性は高いです)

 あいつが何をすれば、人類に貢献できるのだろう。市中引き回しの刑になって、他の犯罪者の抑止力にでもなるのか?

(……どうしても気に食わないなら、僕一人でやりますけど)

 シラガミが少し、切なそうな目をした。

(……いいよ。お前がやるんなら、私もやる。電科研は二人で一人!だろ?)

 背中を叩く。シラガミは嚙み締めるようにうなずいた。

「よーし!喜べおっさん!おっさんが何に悩んでるかは知らんが、その悩みを解決してやる!悩みを話してみろ!」

「何?おっさんだと?……いや、待てよ。俺もお前らの歳の頃は、三十五なんておっさんだと思ってたもんな……そうか。俺もうおっさんなのか……」

 おっさんが自虐を始め、勝手にへこむ。

「いいから悩みを話せって言ってるんだ!」

 うなだれた頭を少しだけ持ち上げ、おっさんが語り始める。

「……お前達は、心に黄金を持っているか?」

「……何だ、それは」

「心の黄金とは、あらゆる言葉に言い換えられる。自信。保証。思い出」

 まだ、よく分からない。

「……より具体的な言葉をもちいるなら、『自分で自分を励ます方法』だ。人は辛い出来事に出会った時、自分を励ます。そうしないと生きていけないからだ。励ます方法は人によって様々だ。何か特技がある者は、それで自分に価値があると思い直すだろう。何か高名な肩書かたがきや物を持つ者は、それで自分の能力を再認識するだろう。成功したり、誰かに認められた経験を持つ者は、その思い出をかてに自分を励ますだろう」

 おっさんが、真っ直ぐな瞳で私達を見る。

「お前達にはあるか?たったひとつでも、お前の人生を照らし、価値ある物と約束するような、そんな黄金が」

 そんな風に問われても、結局ピンとず、首をかしげるしかなかった。

「……分からないだろうな。黄金を持っていたとしても、お前らの歳ではそれが光っていることにすら気付けないだろう。そもそも青春を生きるお前達の心は、まだ黄金を必要としていない……けど、いつかきっとお前達にも理解できる日が来るよ」

 人は、心に黄金がなければ生きて行けない。

 おっさんは、そう言った。

「……あなたには、ないんですか?黄金が」

 シラガミがたずねる。

「ない。というよりは、なくなった。だな」

 おっさんが部室の天井を仰いだ。

「嫁と離婚した。その後、ヤケになって暴れたら、会社をクビになった……特別な特技はない。無職バツイチ。金もない……俺の心には、黄金がない。ので!俺の母校であるここに、黄金になり得る思い出を探しに来た!」

「……何で?」

「小中にはなかったから」

「小中でも同じことしたのかあんた!じゃなくて、なんだよ『思い出を探しに』って。思い出は作るもんだろ?」

「分かってないな。そんな簡単に黄金を作れるのは若いうちだけだ。俺みたいにおっさんと呼ばれる歳になると、そう簡単じゃないんだな」

「いや、あんたさっきまでおっさんの自覚なかっただろ」

 分かってはいたが、いい加減な奴だ。

「まぁ、それで思い出探しだ。俺がこの高校に居た頃、知らずの内にそういう思い出を作っていないかと淡い期待を持って宝探しさ」

 宝探し。聞こえはいいが、ただ不法侵入をしてバレないように校内を漁っていただけだろう。さっきのように。

「知らずの内に……って、そんなことあるわけないだろ」

「それがあるんだなー!」

 そう言っておっさんは、自信満々に一枚の紙切れを私達に見せた。

 それには横書きで『ざゅさけいあさちふ』と書いてあった。

「何だこれ……意味分からん」

「宝探しの成果だ。俺はこの一枚目の紙を、俺が使っていた下足入れの上の下足入れで発見した!」

「じゃあ上の人宛てで、おっさんへの紙じゃないだろ」

 そもそも意味の分からない文だが。

「甘いな。このひらがなを五十音表で一段、にしてみろ」

「えっと……『ざ』は『じ』、『ゅ』は『ょ』……」

「『じょしこういしつへ』……『女子更衣室へ』?」

「そう!行き先を示す文になる!つまりこれはの俺へ宛てられた手紙ってわけだ」

「……いや、そうだとしても、これは今の生徒へ宛てた紙なんじゃないか?あんたもう卒業してるだろ?」

「俺が在学してた頃に仕掛けられた可能性だってあるだろ?」

「可能性だけ?証拠は?」

「……後々のちのち、証明できるだろう」

 つまり、証拠はないらしい。

「そして、これがその女子更衣室で見つけた紙だ!」

 おっさんがさっきと同じように一枚の紙を掲げる。

 それには横書きで『ここからそれは抜いて、並び替えて』と書いてあった。これもさっきのような暗号だろうか。

「この暗号で言う『ここ』とはこの紙を見つけた場所、『女子更衣室』で間違いないだろう」

「『それ』は何ですか?」

「『それは』は『it's』に訳す。そして『女子更衣室』もローマ字で『zyosikouisitu』に変換する。そこから『i』『t』『s』を抜くと残る文字は『zyokouu』になる。更にこれを並び替えると『okuzyou』になる。つまり『屋上』!屋上に行けば、次の紙が見つかるはずだ」

 おっさんがどこからか取り出したメモに、文字列を書いては消しては並び替えて解読の仕方しかたを説明する。

「難しいですね……」

 これをノーヒントで出題するとは、問題としていささか不親切ではないだろうか。

「っていうか、結局この紙が何を伝えるための物なのか、分かってないんじゃないか」

 宝の位置でも指し示すのか、それともただのいたずらか?

「俺はな。これがラブレターだと確信している」

「証拠は」

「昔、俺のことを好きなような女子が居たような噂を聞いたような気がする」

 おっさんは胸を張って答えた。

「……もしこれがラブレターだったら、もう少し分かりやすい内容にするだろ。少なくとも、あんたの目に付かないといけないんだから、あんたの上の下足入れに仕掛けたりしないはずだ」

 事実、おっさんは在学中に気付けていないではないか。

「分かってないなぁ。これは伝えるためのラブレターじゃない。残すためのラブレターなんだよ」

「はぁー?」

「あぁ、想いを伝えるのは恥ずかしい。怖い。けれどこの想いをどこかに残したい。なかったことにしたくない……そんな奥ゆかしい女子のラブレターに違いないね。これは。だから俺はもちろん、他の誰にも伝わらないような、そんな内容なんだ」

 ……今までの中で、一番わけの分からない言葉だった。

「あんたに都合よすぎる推理だし……残したいって、何だ?別にそういうのって、勝手になくなったりするもんじゃないだろ?」

「……まぁ、お前みたいな子供は、別に分からなくてもいいさ」

 おっさんは一人で納得して、勝手に頷いていた。

「こ、子供扱いするな!」

「ふん。おっさん扱いした仕返しだ」

「この……!先生に突き出すぞ!」

 そこで、コンコンとノックの音がした。

「邪魔するぞ……」

 卯木先生が部室に入り、硬直する。

「……誰だこいつは」

「おい!本当に先生を呼んじゃう奴がいるか!」

「違っ……本気で突き出すつもりじゃなくて!」

 完全におっさんの姿を見られてしまった。どうする?誤魔化ごまかすか。いやでもどうやって?親戚とでも噓をつくか?でも確認されたらすぐにバレるし、そもそもこいつの親戚のふりをするのは嫌だ。

「……この人は、電科研に相談しに来た依頼者です。どうか、見逃してください!」

 シラガミが頭を下げる。あまりに直接的な懇願こんがんだった。しかし、このおっさんを隠し通すことがほぼ不可能であることも事実。こうなればもう愚直に頭を下げるしかないだろう。

「お願いします!」

 シラガミと並んで頭を下げる。

「お願いします!」

 おっさんも土下座する。

 そして部室は静まり返る。ぴりっと緊張した静寂が流れるが、先生のため息がその静寂を破った。

「はぁー……今回だけは、特別に見逃してやる。だが、これから校外の人間から依頼を受ける時は、私に許可を取ること。いいな?」

 先生は額を抑えながらも、おっさんの侵入を了承してくれた。ほっと胸を撫で下ろす。

「ひゃっほう!ちょろいもんだぜ!」

 おっさんがすぐに土下座を解き、飛び跳ねる。自分の立場が分かっていないのかこいつは。

「……それで?こいつは、どういう悩みを抱えているんだ?説明しろ。山田」

 山田悠ことシラガミが、おっさんの素性や考え、目的を滞りなく説明する。説明できるぐらい、おっさんのことを理解しているようだ。

「……なるほど。そして今から屋上へ行こうとしているんだな?」

「おう。二枚目の紙が示しているのは『屋上』。そこに本命のラブレターが隠されているはずだ!」

「どうやって屋上に入る?あそこは立ち入り禁止で、鍵がかかっているぞ」

 おっさんがはっと驚いて、思案する。

「……鍵を、ぶっ壊すのはどうだろう」

「犯行の跡が残るのは駄目だめだ。問題になる。却下だ」

 屋上へ上がるには、扉を開くしかない。しかし壊すのがダメとなると、どうにかして解錠するしかない。

「じゃあ、ピッキングとか」

「そんな技術を持つ人間が、この場に居るか?」

 誰も手を挙げない。

 ピッキングもダメ。ならば、職員室にある鍵を入手するしかないが……それができるのは、この場に一人しかない。

 卯木先生に、視線が集まる。

「お願いします!先生がやってくれないと扉を叩き割ります!お願いします!」

 おっさんが懇願を装いながら、先生を脅迫する。

「……分かったよ。乗り掛かった舟だ。鍵は私が何とかしよう」



・・・・・・



 おっさんとシラガミと私の三人で、職員室に耳をそばだてる。

 卯木先生と、他の先生の会話が聞こえる。

「すいません。部室の鍵の調子が悪いみたいで、この鍵では開けられないんです。一度、マスターキーで試させてもらえないでしょうか」

「そうですか。では、私も行きましょう」

「いえ。鍵さえ貸してもらえれば、私一人で」

「しかし、規則ですので……」

 相手の先生が食い下がる。卯木先生以外の先生が付いて来たら、屋上へ行けないどころか、おっさんの存在がバレてしまうのではないか。と危惧きぐした瞬間、職員室の電話が鳴った。

「もしもし」

 相手の先生が受話器を取る。

「では、この鍵は借りていきますね」

 卯木先生が鍵を持って職員室を出るが、相手の先生は電話中なので、呼び止めることもできない。

 約束通り、卯木先生は屋上を開ける鍵を持って私達の下に戻ってきてくれた。

 そして隠した携帯の通話を止める。

「まぁ、わざわざ追っては来ないだろう。返す時に少し小言を言われるかも知れないが」

「おー。お見事」

「ありがとうございます」

 おっさんは軽く拍手し、シラガミは感謝した。私は呆然としていた。

「……どうした」

「あ、いえ。その先生みたいな人……大人の人って、ルールを破ったりしないと思ってました」

 噓をついて、時間稼ぎのいたずら電話までするなんて。少し衝撃的だった。

「私がそういう人間なら、まずこいつを警察に突き出すよ」

 先生がおっさんの首根っこを掴んだ。

「まぁ、いろんな大人が居るからなぁ」

 おっさんは掴まれたまま、一人勝手に頷いていた。

「この人が言うと説得力ありますね」

 シラガミが呟いた。

「ガキは大人を選べない。両親も教師も、その他のあらゆる大人との関係を選べない。だからこそいろんな大人を見て、自分がどんな大人になるかくらいは自分で決めるこったな」

「この人が言ってもあんまり説得力ないですね」

 私もそう思う。

「……あんまり時間がかかると怪しまれる。さっさと屋上に行くぞ」



・・・・・・



「開くぞ」

 先生が扉を開くと、目の前に青空が広がった。

「おお……屋上だ」

 開放感あふれる新鮮な景色に、立ち入り禁止を破った背徳感はいとくかんが混ざり、少しテンションが上がる。

「さぁー探せぇ。俺に宛てられたラブレターを!」

 シラガミと先生が、おっさんと手分けして屋上を探し回る。私は、改まってこのおっさんに命令されるのが不快だった。

 必死に物陰を探すおっさんの隣へ行く。

「……なぁ、おっさん」

「どうした。イナヅマ」

「……イナヅマって呼ぶな。その名前で呼んでいいのは、私の友達と後輩だけだ」

「じゃあ。いいじゃん。友達だし」

「お前みたいな友達は居ない」

「残念。友情は一方通行でも成り立つ。お前が俺をどう思おうと、俺はお前に友情を感じている。俺達は友達だよ」

 おっさんがまためちゃくちゃなことを言う。いちいち否定していると面倒なので、とりあえず無視する。

「……その、黄金とやらの話だが……百歩譲って、ここにお前宛てのラブレターがあったとしよう。それは、お前の黄金になり得るのか?」

「なるよ。なるなる。高校時代に、俺を好きな女子が居た。その事実だけで俺は自信に満ち溢れ、モテ男という肩書きを手に入れ、光輝き輝く輝かしい人生を歩むことができる」

 すごい輝くらしい。

「ふーん……そういうもんなのか」

「まぁ、お前みたいなちんちくりんじゃ、異性に好かれるっていうのがどういうことか、分からないだろうな」

「む、そういうお前は誰かに好かれたことがあるのかよ」

 と、思ったけど、こいつは一応結婚していたんだっけ。

「まぁ、残念ながらクソみたいな女だったから、離婚して今に至るわけだがな。あいつみたいなのは女として数えない」

 おっさんが苦虫を嚙み潰したような顔をする。

「あーもう。お前のせいで嫌なこと思い出しちまっただろうが。代わりに良い思いをさせろ。お前もラブレター探せ」

「はいはい……」

 シラガミの隣で探そうと振り返ると、向こうからシラガミがやってきた。手に紙を持っている。

「見つかりました。それっぽいのが……」

「寄越せっ!」

 その報告を受け、おっさんが俊敏しゅんびんな動きでシラガミから紙を奪う。私も覗き込み、それを読む。

「『この紙の真ん中』……?」

 その紙にはそう書いてあった。これもおそらく何らかの暗号なのだろう。

「かぁーっ!まだゴールじゃないか!らすなぁもう!」

 おっさんが身もだえる。

「……これはどういう意味なんだ、おっさん」

「えっと……真ん中の文字は『の』……?『の』が何なんだ?」

あぶり出しでは?」

「この文だけじゃ解けないんじゃないか?何か別のヒントが……」

 あーでもないこーでもないと意見を交わすが、それらしい答えが一向に出ない。

 そんな中、卯木先生が口を開いた。

「『この紙』っていうのは、これ一枚だけじゃなくて他の二枚も差しているんじゃないか?」

「なるほど」

 おっさんがふところから二枚の紙を取り出す。

「『ざゅさけいあさちふ』?『ここからそれは抜いて、並び替えて』?」

 先生が首をかしげる。

「ああ、この暗号の解き方は、どっちも見つけた場所が関係してて……」

 シラガミが先生に暗号の解き方を説明する。

「場所……」

 先生は少し考え込んだ後、おっさんの懐からメモとペンを取り出し、簡易的なこの学校の地図を書いた。

「下足入れと、女子更衣室でその紙を見つけたと言ったな。そして三枚目は、ここで見つけた」

 先生が下足入れと女子更衣室、それからここの校舎に点を書き、それらを直線で結び、一つの三角形を作図した。

「三角形の真ん中……重心の求め方は、分かるな?」

「はい」

「はい」

「文系だから分からん」

 先生がその三角形に重心を書き入れる。

「『この紙の真ん中』とは、ここを差しているんじゃないか?」

 ペンが指し示した次の場所は、体育館だった。



・・・・・・



「ない!」

 先生のマスターキーを使って、体育館の中を探す。

 しかし、用具入れ、バスケットゴールの裏、何か椅子とか入れてる所、何かネット張る時に棒指す所。四人で手分けしてあらゆる場所を探すが、どこにもそれらしき紙がない。

「屋上と違って、体育館はたくさんの生徒が隅々まで使うからな……もう既に誰かが見つけて、ゴミと間違えて捨てられたんじゃないか?」

「いや、それはないはずだ。この紙は伝えるためじゃなくて、残すための紙。間違えて捨てられるような場所には置かないはず」

「……なら、そもそも体育館には置かないんじゃないか?」

「ってことは、推理が間違ってたってことか?」

「けど、他の答えなんて思いつきませんよ」

 おっさんが三枚の紙を取り出してうんうんうなる。

 ふと、閃く。

「立体的に、屋上の高さも考えれば、地面に平行な三角形にはならないよな?」

 屋上にあたる点から、少し傾いた三角形になる。

「それで、重心も地面から高くなるよな?」

 体育館の天井を見上げる。耐震性を高めるため、蜘蛛の巣のように張り巡らされたはりが目に入る。

「なるほど!あそこか!」

 私の推理を聞くなり、おっさんが廊下へ上がり、更に壁に取り付けられた梯子はしごへ走る。

「いや、でもあんな所に何か置いたりできるか?自分で言っといてなんだが、あそこに紙がある可能性は低いと思うんだが……」

 おっさんは私の話を無視して、梯子はしごをずんずん昇る。そしてあっという間に天井まで到達する。おそらく、その手の業者が使う物だろう。つまり、本来生徒も先生も使わない場所だ。

「おっ。それっぽい奴が見える気がする!おーし!」

 おっさんがそのまま梁に手をかけ、つたって行こうとする。

「ちょっ、降りろ降りろ!」

 はるか上のおっさんと会話する。

「あー!?なんでだよー!」

「危ないだろーがー!」

「じゃあどうやってあれ取るんだよー!」

 おっさんが梁の中央辺りを指差す。危ない。

「ぐっ……」

 どうやって梁の上の紙を取るか。エアガン、マジックアーム……ダメだ。どちらも今この場にないし、確実性に欠ける。ではどうするか。

「うーん……梁の上を動けるぐらいの大きさで自由自在に操縦できるロボットでもあればいいんですけどね」



・・・・・・



 お茶運びロボが入ったリュックをお腹に抱えて、梯子を昇る。ふと下を見ると、あまりの高さに血の気が失せる。

 よくもまぁ、あんなにずんずん昇れたものだ。

「大丈夫だー!もし落ちても、俺が受け止めてやる!」

 下からおっさんが叫ぶ。シラガミと変わってくれと言いたかったが、恥ずかしかったのでやめた。

「高跳び用のマットを敷いてある!お前はロボの操縦に集中しろ!」

 下から先生の言葉が聞こえる。おっさんのそれよりもよほど安心できた。

 そしてついに一番上へ到達し、梁の上を覗いておっさんが言っていた紙を探す。

 確かにそれらしき物が見えなくも、ない。どうやってあそこに置いたかは分からないが、私の推理は当たっていたようだ。

「よしっ」

 リュックからお茶運びロボを取り出し、梁の上に置く。

「発、進!」

 スマホに立ち上げた操縦用のアプリで、お茶運ぶロボを前進させる。ロボの車輪が、梁の上を回る。

 ロボとの距離感を把握しながら、梁の上を落ちないよう、進路を微調整する。それを繰り返しながら、少しずつ目標へ近づいていく。

 ロボが目標に接触し、紙が擦れる音を出した。ロボを停止させる。

「目標地点に到達!」

「いいぞ!そのまま紙を落としてくれ!」

「了解!」

 ……と言ったものの、どうすればあの紙を落とせるのだろう。お茶運びロボにはお茶を淹れて、運ぶ機能しかない。

 どうにか、車輪の動きであの紙を梁から落とせないだろうかと動かしてみる。しかし、遠くてロボの動きが把握しづらい。

「あっ」

 ロボが紙の上で滑り、ぐらりと傾いた。バランサーで復帰できる傾斜角度を超えている。

 落ちる。

 その瞬間、下の卯木先生がマットを引きって走り出した。

「ふっ……ぬぅんっ!」

 イメージからかけ離れた、野太い声を出して、先生がマットを前方に放り出す。落下するロボと、マットが重なる。

 ぼふっ。と音を立てて、マットの端の端、ギリギリの所にロボが沈む。どうやら、ロボは助かったみたいだ。

「……ふぅ」

 先生がため息をついて、マットに腰かけた。

「せ、先生!」

 梯子を降りて、先生の下へ駆け寄る。

「ありがとうございます。けど、どうして……」

「どうして……って、お前が作ったものだろう。これは」

 先生はロボを拾い上げ、私へ手渡した。

 初めてだった。

 私が科学を志して以来、それを認めてくれた大人は、大事にしてくれた大人は、卯木先生が初めてだった。

「あ、ありがとうございまっ……ん?」

 下げた頭に、何かが乗った。

「何だこれ。紙飛行機?」

「それだっ!」

 いつの間にか隣に居たおっさんが、横から紙飛行機をかすめ取る。

「さっき、上からロボと一緒にこれが落ちてきた!」

 どうやら、ロボは身をていして任務を遂行していたようである。流石私の作ったロボだ。

 更に、どうやって梁の上に紙を置いたのか。その謎も同時に解ける。

「なるほど……紙飛行機にして、梯子から梁へ飛ばしたんだな」

「そんなことどうでもいい!大事なのは中身だ!」

 おっさんが紙飛行機を開く。四人でそれを覗く。

『好きです。横木泉より』

 ただその一文だけ。恥ずかしそうな、小さい文字でそう書いてあった。

「横木、泉。俺の前の席だった奴だ」

 おっさんが高揚に震える。

 差出人は、おっさんと同世代。都合のいい推理通り、本当におっさん宛のラブレターだったらしい。

「うおおおおっ!俺はっ!高校生の頃っ!一人の女子をとりこにしていましたぁーっ!」

 おっさんの体に活気が溢れ、紙飛行機を片手に飛び跳ねる。無邪気で、自由で、輝いている。

 どうやら、無事に黄金を取り戻せたようだ。



・・・・・・



「はぁ~。同窓会が楽しみだ。本当に、ありがとう。お前達のおかげだ」

 おっさんがぺこりとお辞儀する。こんな殊勝な態度も取れるのか。

「いえいえ、部活動の一環ですので」

 シラガミが安心したように手を振る。おっさんの可能性の数値がどうなったか、聞くまでもないだろう。

「それじゃあ!」

 おっさんは最後に大きく手を振ると、学校の柵を越えて住宅街へ消えていった。今ここに、一つの完全犯罪が成立した。

「……行ったか。私は鍵を職員室に返してくる」

「あっ、じゃあ僕は上の人に報告してきます。先輩は部室で待っててください」

「うん。分かった」

 二人が同時にその場から去る。

「上への報告、終わりました」

「鍵を返してきた」

 二人が同時に部室へ入る。

 ……怪しい。

「あの、先生。さっきシラガミと話してる所、見ちゃったんですけど……先生が、幼い頃に私を助けてくれたレビウル星人って、本当ですか?」

「なっ、馬鹿な!確かに特殊情報防壁を展開していたはず……!」

「噓です。ずっと部室に居ました。ところで特殊情報防壁ってなんですか?」

 先生の顔が一瞬、硬直する。

「……はかったな。新妻」

 ばつが悪そうに、先生は私から目を逸らした。

「や、やっぱり!怪しいなとは思ってたんです!シラガミが入部してから、妙に部室に来る回数が増えたし、私達がやることに妙に協力的だし!」

「……誰にも言うなよ。シラガミは緊急事態だったから仕方ないとはいえ、本来、正体がバレるのは御法度ごはっとなんだ。バレたのがバレたら、減給を食らう……私が、幼いお前を助けたっていうのは、いつ気付いた?」

「あ、いや、それは別に根拠とかはなくて、何となく、先生だったらいいなって、思ったんです」

 先生は呆れたような顔をした後、頭を掻いた。

「……本当に、誰にも言うなよ」



・・・・・・



「まさか、本当に先生が私の一人目の恩人だったとは……」

 帰り道、シラガミと話す。

「昔から地球で働いていて、最近出世して、今の立場に居るみたいです。それでも、もう一度会えるなんてすごい偶然ですよ」

「うん。ありがとうって、ちゃんとお礼が言えて良かった」

 私を助けてくれた人、私のロボも助けてくれた人。

 ふと、おっさんの言葉が脳裏をよぎる。

『自分がどんな大人になるかくらいは自分で決めるこったな』

「……私は、卯木先生みたいな大人になりたいな」

 卯木先生のように、クールでビシッとした自分を思い浮かべる。

「多分、無理ですね」

 シラガミがクスクスと笑った。

「なっ……そりゃあ、まぁ、無理かもしれないけど!何も笑うことないだろ!……くっそぉー。どいつもこいつも、私を子供扱いして、バカにする」

「まぁまぁ」

 いじけていると、シラガミが私の頭を撫でた。

「んん……また子供扱いしてるな……?」

 しかし、心地よい。こういうことをしてもらえるなら、子供扱いも悪くないかも知れない。

「皆、先輩のことを子供扱いしますけど、別にバカにしてるわけじゃないですよ。羨ましいんです。先輩のことが」

 シラガミが立ち止まる。

「……?どうした?」

「すいません。もう少し」

 頭を撫でる手の力が、少しだけ強くなった。

「撫でさせてください。いつかまた、先輩に会いたいなって思う時の分まで、今、撫でさせてください」

 シラガミの声は寂しそうだった。

 シラガミはときどき、遠い目をする。思えば、おっさんの話もよく理解していた。

 どうして私の一つ下なのに、そんなに大人っぽいんだ?おっさんの話が、理解できるんだ?同じような経験をしたのか?お前は、故郷の星で、一体どんな風に育ったんだ?

 聞けなかった。聞いてしまったら、そのまま見つめる先へ、遠くへ行ってしまいそうな気がした。

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