見る目が変われば

あきのななぐさ

第1話出会い

ふむ、どうやら君だったようだね。


なに? 何のことかわかないと? じゃあ、何故僕と話をしているんだい? 単なる偶然なら、帰ってくれてかまわない。でも、僕は君に起こされたという事実をしっかり認識してもらいたいものだな。


なに? ますます分からない?


ふむ、それもそうか……。失礼。

どうも君たちと話すのは慣れていなくてね。説明すると眠くなるから手短に言うとだね。


ついさっき、なんだか偉そうなのが、寝ている僕に話しかけてきたんだ。僕はこれでも忙しいと断ったのだけど、言うことを聞かなくてね。面倒だから引き受けた。


ん? 説明になってない? 君も細かいことを気にするね。


たしか、『僕のことを知りたいのがいるから、教えてあげてほしい』と言ってきたんだ。これでわかったかい?

それが君だったというわけだ。


ん? そうは思ってなかった? でも、興味があったんだろ? なら、たぶんそういうことだ。あれは偉そうだけど、物事をちゃんと理解している奴だよ。僕の直感がそう言っている。出来ることなら、僕もまだ寝ていたかったんだ。至高の微睡おひるねはまだ十分じゃないからね。でも、このまま寝続けると、またうるさくなるのも分かっているから、今は起きておくよ。


なに? 話が見えない?

君もわがままだな。いいかい? 自然界においては、その時の状況で最善を選択するものだよ。今の君の選択は、黙って聞く事。でないと始まらないだろ?


何が始まるのかって?


そんなの、見ていればわかるだろ? 僕に聞くなよ。僕は頼まれて案内するだけだよ。君は見たいものが見えるだけ。君が見たいのが何かは知らないし、興味もない。


ただ、親切な僕は一応説明をしてあげるよ。今日はちょっとだけ気分がいいからね。


もうすぐ、のりこが帰ってくる。僕の給仕係だ……。説明終わり。

なに? わからない? 君は本当にせっかちだな。時には待つということも必要だよ? まっていればのりこが帰ってくるんだから、わかるじゃないか。


とにかく、のりこを待つんだ。

僕がいちいち言わなくても、勝手に話してくれると思うから、ちょっと待っててくれればいい。あと、のりこには僕らのやり取りは聞こえないらしいよ。だから、頭をしっかり働かせてくれたまえ。

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