第20話 秘密

翌日の朝5時

僕は、自然とゆっくりと目を覚ます。メガネをかけて起きる。

一昨日のフットサルでの筋肉痛も、まだ、残っていて、まだピリピリした痛みが僕を包んでいた。


僕は完全に目がさめると、激しい空腹に襲われていた。

(そういえば、夕飯食べずに寝ちゃったんだっけ?)


そう思い、ベッドから立ち上がると、早速キッチンから、一昨日炊いた炊飯器の中身を、開けてみる。


1合炊いていたご飯は、少し残っていた。

(あぁ、莉乃がこの間、食べきれなかった分が残ってる。ずっと、お米食べていなかったし、久しぶりな感じがするな)


僕のここ2日間の食事は、主食は豆腐だった。この時なぜ、僕の食事は米から、豆腐になっていたのか、まだ、わならなかった。


僕はその少し古めのお米を見て、唾を飲み込む…


(食べたい…)


「空腹で食事をしたい」衝動に駆られるととお腹が鳴った。

我慢しきれなくなり、手を水で濡らし、その手に塩をかける。冷めたお米を手にとって、おにぎりを作りる。


1口大に握られたおにぎりを僕は一口で頬張った。


(あぁ、なんか、お米がとても久しぶりに感じる)


意地汚いかもしれないが、僕の空腹なお腹は、キッチンで少し満たされた。


冷蔵庫に行き、コップに氷を入れてアイスコーヒーを注ぐ、それを手に持ち、莉乃を起こさない様、テレビも点けず、静かなリビングに移動して、椅子に腰かけた。


耳をすますと、小鳥の囀りが聞こえる。ここで、時計を確認すると、5時15分を指していた。


(そう言えば軍手と動きやすい格好、あと、ビニール袋だっけ……何するつもりなんだろう薫ちゃん…)


僕はアイスコーヒーを手に取り、飲みながら考えていた。


ゴクッゴクッ


これが僕の毎日の日課で、アイスコーヒーのヒンヤリした苦みと酸味で僕の目を覚まさせる。


アイスコーヒーを飲み終えると、洗面台に向かい、メガネを外して顔を洗い歯を磨く、鏡を見ながら


(この2日間…充実してるけど、疲労感が溜まっているな…)


気のせいかもしれないが、顔がやつれていた様に見えた。


タオルで顔を拭き、髪型をセットする。莉乃を起こさない様に一度、髪を霧吹きで濡らして、髪型をセットする。


リビングに戻り、時計を見ると5時半になっていた。


すると、僕のスマホが音を鳴らす。

バイブにしていたので、振動した音がなった。




ヴィーーーン。ヴィーーーン。




スマホを手に取り、とっさに僕は表示を見ずに通話に出た。。


『おはよう、ライト、起きてた?』


『うん、起きてるよ。今、準備してる。』


『よかった。私も4時半くらいに目を覚ましたよ。正直、まだ眠くて…ふぁぁぁぁぁ』


『僕も…ふぁぁぁぁぁ』


僕も欠伸アクビが移り大きく伸びをする


『それで?こんな朝早くからどこ行くの?』と僕は問うと


『それは着いてからの、お楽しみ』


『………そっか、正直、昨日までの疲れが残っているから、あまり、無理したくないんだけど…』


『わかってるよ?安心して、予定では今日は力仕事は、ほとんど無いから』


それを聞いて僕はホッとする。


『秘密基地には歩いて行くけどね』


『えっ?自転車じゃなくて?』


『うん、ライトと散歩しながら行きたいなって思ってるの、色々話したいしさ』


正直、面倒くさいと思ってはいたけども僕は了承した。


その後、電話を切り、彼女の指定したものを準備する。


黒のリュックに、軍手、ビニール袋を入れる。時計を確認すると約束の6時まで残り5分だった。先を急ぐように玄関に向かい靴を履き、扉を開けた。

エレベーターに乗っていると、僕はこれまでと違い、緊張よりも眠気のほうが勝っているように思えた。


「ふぁぁああ」大きな欠伸をする。


(眠い・・・もっと寝ていたい・・・体も疲れてるし)


そして、朝6時、団地下の公園で待っていると、彼女が来た。


「おはよう!ライト」


「おはよう薫ちゃん」


彼女は歩いてやってきたようだった。

この頃、僕は彼女に対して、不思議と赤面症は出なかった。だんだん、彼女に慣れて来ているのを感じていた。


薫は、リュックを背負い、中からトングを、取り出し、僕に渡した。


「ん?何するの?」僕は問う


「よくぞ聞いてくれました!これから町内をゴミ拾いするんだよ」


「ゴミ拾い?」

僕はそれを聞くと少し面倒く感じた。


「うん、さぁ、みんなのところに向かおう。」


そういうと、彼女は振り返り歩き出した。僕は『みんな』というフレーズを疑問を抱く。そして、彼女の後ろを導かれるよう歩いていた


15分ほど歩くと、別の公園に到着した。


「おー!来おったな!」そこには涼介がいた。


「あ!涼介もいたんだ!」彼女はそういうと、彼に大きく手を振って笑顔を見せた。


「キンドラも来おったのか!おはよう!キンドラ!」そういうと、僕の肩を組む


「お…おはようございます。」


「そんな畏まらんでもええで?リラックスして話そうや」と笑顔で言ってくれた。


「は、はい」僕は顔を赤くし照れながら、答える。


周りを見渡すと、色んな人が集まっていた10人ほどだろうか、老若男女いて、大人から朝からテンションの高い小学生くらいの子供までいた。


僕は疑問に思い薫に問う。

「薫ちゃん、ゴミ拾いって言ってたけど、この人達は?」


「これはボランティアだよ。街を歩いてゴミ拾い。3キロくらい歩くかな」


「うん…そうなんだ?」


そんな会話をしていると、リーダーと思われるお年を召した男性が集まった人達に声を掛けた。


「おはようございます!本日もお集まり頂きありがとうございます!それでは、ラジオ体操をした後に、早速班わけして、1時間ほど町内のゴミ拾いを始めましょう!」


そういうとみんなは均等に広がり、ラジオ体操を開始した。ラジオ体操を真面目にやると、体の色んな箇所が伸びてとても気持ち良く感じた。


そして、軍手をつけ、ビニール袋を左手に取り、右手にトングを持つ。


涼介は笑顔で僕の元にやってきて


「キンドラ、薫と一緒に歩こうや」


その言葉に僕は嬉しくなり、笑顔で「はい」と答えた。


「一昨日は見れなかったんやけど、キンドラも笑顔ちゃんと出来るんやな!カオから笑ったところ、あまり見たことないって聞いたったから、安心したで」


「最近まで、僕は確かに笑うことできなかったかも…」


僕は過去を思い出し、切ない気持ちになる。貴志達に虐められていること、家庭環境について色々とシリアスな気持ちになっていた。


それを見て涼介は

「何、シリアスになっとんねん!ほな、二人ともそろそろ行くで?」


僕らは歩き出した。


少し歩いて思ったが、歩くペースが早い、僕は必死に食らいつくように二人の後をくっ付いていた。ゴミを拾いながらのはずなのに、二人は会話をしながら、どんどん突き放されて行く、次第に軽く息が切れ始めてきた。


僕は少し疲れてきて、涼介は後ろを振り向く

「キンドラ、ちゃんとついてこなあかんで?」


「は、はい……でも、二人とも歩くの早くて…」


そう僕は言うと、涼介はニヤッと笑い「これは『ゴミ拾い』と言う名のウォーキングや、痩せるで?」と笑いながら言う、それを聞いて、薫は慌てていた。


「涼介くん!それ言ったらダメだって!」


「なんでや?」


と彼女は彼に耳打ちをする


「ほーなるほどな、そらええ考えや」彼は薫の耳打ちに関心していた。


僕は疑問に思いながら、問いただす。


「えっ?あ、あの…今、なんて言ったんですか?」


二人とも声を揃えて


『それは秘密(やで)』とニヤニヤしながら言ってきた。


再び、歩き始めると、徐々にまた距離が開き始める。もう、ゴミを拾う余裕なんてない、息も軽く弾んでいく、二人は前で楽しそうに会話しているが、食らいつくのがやっとだった。


そして、1時間のゴミ拾いが終わると

リーダーの人が

「お疲れ様でした!それでは、分別に入りましょう!ペットボトルはこちらに、可燃ゴミはこちらに、不燃はこちら、その他はこちらにお願いします!」と指示してきた。


「ふぅ…やっと終わった…」と僕は呟く


すると、涼介が僕に声を掛けた。

「キンドラ、お疲れ様。どうやった?ゴミ拾い」


そう言われると、僕は気持ちを確かめた。とても、清々しく気持ち良くなっていた。

「なんか、道も綺麗になったし、汗もかけたので、スッキリしたそんな気持ちです。」


「そか、キンドラ、カオにちゃんと感謝するんやで?」と僕の左肩を叩く


「えっ、あっ、はい…」


(感謝?何に対して?)


僕は疑問に思った。


「夏休み、これを毎日続けるようにな、あとキンドラこれ終わったらフットサルの特訓や」


僕はそのセリフに驚いた。


「えっ!……わ、わかりました。」


その会話に薫はニコニコして

「よかったね。私よりも上手い人に教えてもらえるんだから、上手くなるよ?ライト」

と言う、内心複雑な気持ちだったが、これが後に僕に変化を生むことになった。


そして、ボランティアが終わり解散する。涼介は「ちょっと待ってな?」と言い自宅に戻った。


しばらくすると、薫と二人きりになっていた。


「ライト、よかったね。涼介くん、あの時のプレー見て鍛えたくなったみたいだよ?涼介くん、教えるの本当にうまくて、小学生にサッカー教えてるの、そのチームどんどん、強くなって、今じゃ町内1のクラブになったほどだよ?私も教えてほしいくらいだよ」と笑顔で言う。


「そうなんだ?」僕はこの頃すでに、フットサルに少し興味を持っていた。


少し、ワクワクしている。5分ほど待つと、涼介がボール2つを持ってやってきた。


「おまたー!早速はじめよっか?って、カオも、残ったったんか」


「えー、ダメなの?」


「ダメちゃうけど…カオに教えることなんて無いやろ?」


「えー!全然あるし!」


その会話の間に入るように僕は


「あ、あのぉ…何をすれば良いんですか?」

と問いかけた。すると彼はボールを僕の前に置く


「まずは、これや」

ボールを右足で踏む、そして、リズム良く左足でボールを踏む、その動作を繰り返した。


ふみふみと、ボールに触れていく、たったそれだけのことだけど、凄くスピードが早かった。

僕は真似してやってみる。


「ええでぇ、そうやって、ボールに慣れて行くんや」


「は、はい」


最初はなかなか上手く出来なかったが、徐々にスピードを上げていった。


「うん、そこまで、出来れば上出来やで?なかなか飲み込み早いわ」


「あ、ありがとうございます。」


続けて色んな形のボールタッチと呼ばれる練習を繰り返した。


・・・

・・


1時間ほど、練習をして涼介は

「よし、今日はここまでやな」


僕は息が少し上がっていた。体温が上がり、僕はかなりの汗をかいていた

「はぁ、はぁ、ありがとうございました。」


薫は平然とした様子で

「えー!これだけ?」

と少し残念そうな顔をしていた。


彼は

「元々は、キンドラに教えるための練習や、せやからゆーたやろ?カオに、教えることはないって」


「そうだけど…」


「まぁ、徐々に強度上げて行くからそのつもりでな」


そういうと、彼はポケットからスマホを取り出した。


「キンドラ、連絡先教えとくわ」


そう言って、僕に連絡先を教えてくれた。


「ありがとうございます。」僕は言う


連絡先の交換は薫と妹と母親だけしかしていなかった。それだけに僕は嬉しかった。


(僕のアドレス帳が増えた)


その事に感激していた。


涼介はそんな僕を見て

「えらい、感激しとるやん。」


「ぼ、僕…友達いないので…薫ちゃんしか知らなかったんです。」


「ほな、わいらも友達やな」

彼はピースサインをする。僕は照れた。続けて彼はこう言った。


「キンドラ、これから忙しくなるで?」


「えっ、忙しくなる?」


「せやで、もう少し筋力付いてきたら、やらせたいことあるんや」


「やらせたいこと?」僕は疑問に思った。


「まっ、楽しみにしとき!それじゃ、俺はこれからバイトあるさかい、またやろうな!あと、気軽にメールしてきいや?中学の頃って色々あるやろ。少しでも力になれたらって思うからな」


僕は嬉しくなった。


「は、はい!よ、よろしくお願いします。伊藤さん」


すると、彼はため息を吐く


「伊藤さんなんて、呼ばんでええよ。ダチなんやし、涼介でええで」


「はい!涼介『さん』」


「『さん』付けもいらんわ」と彼は笑っていた。


しかし、彼はそうは言ってくれるけど、僕はしばらく、『さん』付けは外れなかった。恥ずかしいし年上なので…


涼介は自宅に帰っていった。

公園の時計を見ると、9時になっていた。


「じゃ、帰ろうか!」

薫は上機嫌で、そう言うと団地の方に足を向けた。


「あれ?反対方向じゃないの?」僕は問う。


「何言ってるの、『ライトの家』に帰るんだよ」


「えっ?来るの?」僕は驚いた。


「当たり前じゃない。あ、そうだ。買い物して行こう!確か、冷蔵庫もう空のハズだし」


僕らは24時間開店しているスーパーへと向かった。

また、この時、薫がお金を払ってくれた。僕は悪い気持ちになり、お金を今度こそ返そうと試みても、この日も拒否された。こうして、買い物を済ませると、僕は買い物したビニール袋を持ち、団地に帰ってきた。時間は既に10時を回っていた。


鍵を開け玄関を開けると、パジャマ姿の莉乃がいた。


「キンドラ…どこ行ってたの?」


鍵を開ける音に反応してか、急いできたようだった。

莉乃は寂しそうな顔をしていた。


そして、僕は


「起きてたのか、ちょっと色々とね。」


昨日の疲れもあってなのか、莉乃は先程起きたばかりの様だ。チラッと僕の後ろから薫は姿を見せると、目をこすりながら妹は


「あっ、薫さんも来てくれたんだ」


「おはよう、莉乃ちゃん」


「おはよう、お姉ちゃん…ふぁぁぁぁぁ」


そう言って、妹は部屋に戻って行った。きっと昨日までの疲れが妹にも残っているのだろう、明らかに二度寝をしようとしていたのだと思う。


すると、彼女は部屋に上がると


「よし、また掃除と洗濯しなきゃね!掃除が終わったらご飯!その後、秘密基地改築しなきゃ!」と張り切っていた。


その後、彼女の言うように、掃除に洗濯をこなして行く、僕も手伝った。


洗濯は、僕は慣れてなくて薫の言う事を聞きながらこなして行く。


「あー、シャツちゃんとシワ伸ばさないと」


まるで、言ってる事は母親だ。

そんなこともあったりして、僕らは過ごしている。


そして、掃除と洗濯物を済まして行った。


そして、12時になり、お昼ご飯をまた彼女が作ってくれた。そして、豆腐がメインのコースだった。


(また、豆腐か…)


そう思っていると、僕は表情に現れていたのがわかっていたらしく


「また、豆腐かぁって顔してるね」とクスリと彼女は笑う。


「うん、今日で3日連続で毎食豆腐だし…さすがにそろそろ飽きて来たよ…」と正直に言った。


「じゃあ、夜はカレーにしようか?」先程のスーパーの袋から、いつのまにか買っていたカレーのルーを取り出した。


それにごくりっと僕は唾を飲み込む。


「いつの間に…」


「ふふふ、ライト喜ぶかなって、カゴの目立たない所に入れていたんだよ。」


「そっか」


その後、3人で、昼飯を食べる。彼女の作る手料理は確かに美味しい。しかし、疑問に思っていた。疑問を率直に聞くことにした。


「あのさ?薫ちゃん?」


「なーに?」彼女はニコニコしながら、僕を見ていた。


「なんで、毎食『豆腐』なの?莉乃に監視させてまで」


「あー、ついに来たか、その質問。」


莉乃も不思議そうな顔で見ていた。


「早い話、炭水化物を取らないようにしてるんだよ。」


「えっ?どうして?」


莉乃は問う。


「炭水化物ってね。みんな意外としらないうちに結構摂取してるんだよ。当然、お米や、麺類も炭水化物。あと太ると思われがちな、お肉や魚なら、多少は摂らないと行けないタンパク質なんだけども、つまりは炭水化物は摂りすぎると体に悪いのよ。かと言って全く摂らないとのも、良くないんだけどね。」


僕らは二人は『ふーん』と感心していた。


(つまり、ダイエットってことか?)


なんとなく、僕は嫌な気分になった。


そして、その言葉に続けて彼女は言う。

その何気ない言葉は、僕たちは衝撃が走った。





「私、糖尿病だからさ」





(えっ?)


糖尿病、それは説明する必要は無いと思うけど、つまり成人病の一種だ。

普通は、大人になって、太っている人がよくなる病気だけれども、何故か彼女はその病名を口にした。

僕らは驚いた。


「う、嘘?薫ちゃんが?」僕は、ショックを隠しきれなかった。


「昨日、電話の後、会って言おうかなって思ったけど、ライト、会ってくれなかったし…」


「ご、ごめん。」


しかし、莉乃はその病名に馴染みは無かったようで、薫に問う。


「糖尿病?って…よくテレビでやってるけど、お姉ちゃん、全然太ってないし、若いし…」


「莉乃ちゃん、世の中にはね?小さい頃から、そう言う人もいるんだよ。だから、ほら…」そう言うと、彼女は腹部の服を上げて、注射跡を見せた。


「これ…注射の後だ。それに最近出来たものだね。」と莉乃は心配そうな顔で言う。莉乃は注射が苦手で、注射の跡を見ただけで青ざめた。


「だいぶ、昔から毎日やってるから、もう慣れちゃったけどね。」と笑顔で薫は言う。


僕は糖尿病の知識は全くなく、それでつまり、どうして豆腐なのか、気になった。


「それと、毎食豆腐。それは何故?」と問うと


「血糖値って言うのがあってね。それを上げない為なのと、悪化しない為にだよ。………あ、ごめんね。もしかして、心配した?」


「うん…」僕は明らかに心配した面持ちで相槌を打つ。


「安心して!ハンデかもしれないけど、慣れちゃえば、別に怖い病気じゃ無いんだよ。生活習慣さえキチンとしていれば、『長生きする』病気らしいし」


「う、うん…でも、お米食べれないし、辛いね…」


そう言うと彼女は何故か笑っていた。


「あははははは、確かにね。でも、お米食べる習慣あまりないからさ、大丈夫だよ。」


「そっか…」


「だからね?正直に話すけど、あの時『私と一緒に、行動する』って約束した時、心配したのは、そこもあるんだ?」


「え?あの公園で何気なく言ったこと?」僕は問う。


「うん、普段から炭水化物を過剰に摂ってる人にとっては『地獄』みたいだし、だから、『本当に出来るかな?』って聞いたんだよ。」


それを聞いて僕は今朝、おにぎりを食べた事に罪悪感を持った。


「だから、ライトは、必然と痩せていくし、私と行動することで筋力も付く、身長はわからないけど、きっと、性格も前向きになるよ?」


「そ、それで、今朝あんなにたくさん歩いたりさせてたんだ?」


「『させてた』だなんて、人聞き悪いなぁ、これはライトの為でもあるんだから……言ったでしょ?『私は君を変えたい』って」


僕は決心した。椅子から立ち上がり、のめり込むように、薫の顔を見た。


「わかった!僕、頑張る!薫ちゃんと一緒に!僕も決意したんだ。鏡の前で、だらしが無い自分の体を見て、もう、イジメられないように!」


すると、彼女は微笑んだ。

そして


「ライト…」


と優しく発すると


「一緒に頑張ろうね」


と言ってくれた。


それに何故か莉乃も、立ち上がり薫に顔を近づける。


「二人でずるい!私も頑張るよ!」


と真剣な表情で言った。


それに僕ら二人は見つめ合い


『あはははははは』


と二人して笑った。












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