第十二章 不思議な二次元空間

「二次元へようこそ!」

「おおっ、アバターになってる!」

 ゲーム&アバターのSNSで、いつも使っているアバターに僕は変えられていた。

「アバターのツバサくんも素敵だよ。あははっ」

 ナッティーは相変わらず、レアアバターで決めている。今までどんだけアバターに課金したんだよ。

 ふと、空間を見渡すとあっちこっちに四角い窓のようなものがある。いったいなんだろう?

「ナッティー、あの窓みたいな四角い物はなぁに?」

「あー、あれ? 覗いてみる」

「うん」

 そう言われて……恐る恐る覗いてみたら、誰かの顔が見えた。マウスを動かして、あっちこっちと小刻みに目を動かしているのはゲームの最中なのか? どうやら四角い窓はリアルの世界、三次元を覗くパソコンの画面だったみたい。――ここからナッティーはいつも僕らを覗いていたのだ。

「ナッティー、僕のパソコンの窓はどれさ?」

「ツバサくんの、うーんと、あっ、あれよ」

 ナッティーが指差した窓は高い位置にあったが、僕は滑るように二次元の壁を移動して、自分のパソコンを覗いてみた。

 そこには、パソコン用デスクにうっぷしてグッタリしている僕がいた。微動だにしない、まるで死んでいるようだった――。

「……僕はどうなったの?」

「大丈夫よ。今はした状態なの。魂が抜けているからグッタリしているけど、元に戻ったら平気だよ」

「幽体離脱ってことは……僕もお化けなんだ?」

「そうよ。ツバサくんもナッティーの仲間だよ~ん」

 ナッティーがはしゃいだ声で言う。

「うわーっ! 死んでもイヤだぁー」

「あなたも今は幽霊ですから……」

「南無阿弥陀仏」

「お経を唱えても、成仏させてあげないよ」

 笑えないジョークに笑いながら……僕らは今から、この二次元で正体不明の敵と戦わなければいけないのだ。


「ナッティー、それで秋生に成りすました奴はどこにいるんだい?」

「モンスターランドってゲーム知ってる?」

「ああ、秋生と以前に遊んだことがある。秋生はずっと続けていたけど、僕は長いこと放置してて、レベルあんまり高くないよ。hpだって低いし……」

 このゲームはむしろ苦手だった。

「めちゃくちゃ弱いけど、足手まといにならないかなぁ~」

「ナッティーは結構ヤレルから大丈夫だよ」

「うん、頼んだよ。ナッティーの後ろからこっそり付いていくさ、すぐにモンスターに殺られたくないから……」

「ゲームで死んでもリセットできるわよ」

「そうだな! よっしっ頑張るぞぉー」

「さあ、モンランの世界へ行くわよ」


  ※hpとは、ヒットポイント (hit point) または、

   ヘルスポイント (health point) と呼ばれる。

   ゲームにおけるキャラクターの生命力。


 ナッティーと僕は、秋生のキャラに成りすました奴がいる『モンスターランド』を目指して、二次元を移動していった。

 凶暴なモンスターたちと戦いながら、島の財宝を集めて回るこのゲームはユーザーに大人気であるが、モンスターたちが強過ぎるため、ギルドというモンスター狩りのチームを結成してないと、一人では攻略が難しいゲームなのだ。

 そして、ついに僕らは『モンスターランド』へ。

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