第7話 コーネリアの剣

 高級レストラン『レ・ルトラン』でハルチカがコーネリアに立たない事を告白して一週間が経ち、学校でも二人の関係は変わらなかった。


 ハルチカが立たない為、恋人関係になる事は無い二人だが、お互いの秘密を打ち明けた二人は、


 友達関係に成る事は出来た。


 また高校一年の最後の一週間は最終試験で忙しく、秀才のコーネリアにとっては試験は簡単ではあったが、成績が真ん中より少し下のハルチカにとっては大変な一学年最後のイベントである。


 ただ回りの雑音を気にしないで勉強に集中出来る事は、ハルチカにとってはある意味、試験は気を晴らす良い機会でもあった。


 そんなハルチカを絶えず目で追いかけているコーネリアは、自習室で一人勉強しているハルチカの横に黙って座り、そしてハルチカが分からない事や出来ない事を優しく教える健気なコーネリアだった。


 コーネリアの努力で二人の距離は少しずつ縮まり、ハルチカも頑なに閉ざした心が少しづつ開き始め、


 時折、ルーナの事を思い出すと締め付けられるように胸が痛むハルチカではあったが、


 コーネリアの献身的な努力で、その痛みも少しずつ、少なくなり、


 やがてお互いが、コーリ、ハルと愛称で呼び会う事の出来る関係になっていた。


 二人がお互いの秘密を打ち明けてから二週間後、最終試験も終わり、全員の進級が決まって、明日から1ヶ月の春休みが始まる一学年の最後の日の昼休み、


 ハルチカはコーリのお手製の滋養強壮入りの元気一発弁当を食べた後、


 そんな鼻血が出そうな弁当を食べても一ミリも上がらないハルチカではあるが、


(;゜∇゜)


「えっ、コーリ、ボルケン共和国に別荘持ってんの!それも室内プール付き!」


(⌒‐⌒)


「一応、親の別荘ですけど、私は春の休みじゅうは毎年その別荘で過ごします、ですから今年はハルも一緒にと思いまして、アンリとドーリも一緒ですが宜しいでしょ、ハル」


 一般家庭で、親の収入が真ん中より少しし下のハルチカにとって、別荘の二文字はとんでもないステータスであり、憧れであった。


(;゜∀゜)


「・・・僕はいけど、大丈夫なの、女の子三人の中に男が一人だと、回りが心配しない?」


("⌒∇⌒")


 コーリはハッキリと、「両親にはハルが立たないと言っておりますし、アンリ、ドーリも知ってますし、クラスの全員が知ってますわよ。」


( ; ゜Д゜)!


「えっ!そっ、そうなんだ、でも何故?」


 全員が知っている事を知ってショックを受けるハルチカであった。


 コーリはさらりと、「クラスの男子が実技試験でハルが教練着に着替えた時、あれが無くなったって大騒ぎになって、アンリが私に聞きに来たので、説明してあげたのですが、其で皆、納得して安心なさったそうですよ。」


( ̄O ̄)


 クラスの皆まで、僕の事を心配するより僕のチンの心配をするなんて、なんだかなあ。


 ちょっと情け無くなるハルチカであった。


 コーリは嬉そうに、「それでですね、ハル、その別荘から一キロ位、離れた山の頂きに火の星をまつる、星炎大社せいえんたいしゃが在るんですよ。」


 ハルチカはへぇーてな顔で、「星炎大社せいえんたいしゃ?」


「はい!星炎大社せいえんたいしゃは、燃えかすのような、どんなにあおっても殆ど立たなくなった男性が、其処そこに行って大社の御祓みそぎを受ける事により、まるで火が吹き上がるように瞬時に立つ事が出来るようになる尊い御利益ごりやくがあるとう事で有名な観光スポットでもあるんですよ、ぜひ、私達も其処に一緒に行きましょうね、ハル。」


(〃⌒ー⌒〃)ゞ


 何とかハルチカのチンを立たせようと必死なコーネリアだった。


 ハルチカも諦めて、


「そっ、そうだね、コーリ。」、と受け答えるしかない、尻に敷かれたハルチカだった。




 次の日、ハルチカは始めてのクラスメートとの旅行の待ち合わせ場所であるコーリの自宅に行く事になり、その自宅はコーリがバンチニア高校に入学する事が決まったその日に、コーリの両親は町の東側のポワジューレ共和国の国境付近の広大な土地を購入して、其処に家を建てた。


 ロンディーヌ家は世界的な大商社ロートスの創業家で、コーリの両親はロートスの幹部としてビジネスの為に世界中を飛び回っていた、自家用摩導船で世界中の拠点を行ききしながら、ロートスグループに指事を出すその為の拠点として家を複数持つ事は重要な投資でもあった。


 その事は、ハルチカも摩導科のクラスの皆もアンリとドーリ以外は知らない。


 親は親、子は子、親が金持ちでも子供は普通、其がロンディーヌ家の家訓であり、コーリもあえてクラスメートには話さず、


 その事を知っているのは、両親の取引先の子弟である、アンリとドーリだけであった。


 摩導二輪車でコーリの家に来たハルチカは敷地があまりにも広いので、コーリの家って農家なんだなぁとのんびり考えるハルチカであった。


 平屋の家は拠点としての仮住まいなのでロンディーヌ家の本宅に比べると広くはない、其でも来客用に客室が十室と、ビジネスの為のパーティが出来るように五十畳のLDはあった。


 平屋で飾り気の無いシンプルな造りにより、そんな豪邸だと思っていないハルチカは、気軽に摩導呼び鈴を押し、メイドさんの画像が浮かんだので自分の名前とコーリと約束がある事を伝えた。


 ハルチカは生まれて始めて見た美人のメイドさんにちょっとどきまぎしたが、やはり一ミリも立たない情けないハルチカではあった。


 メイドさんに中に通され、玄関からホールの先の五十畳のLDに案内された時、始めてハルチカはコーリの家が一般家庭の基準から比べるとすっごく大きい事に気付き、


 其でさえ、ロンディーヌ家の本宅に比べれば小さい事をハルチカは知らない。


 LDの中央のソファには見た目の年齢が四十代後半、髪はホワイトブロンドのショートカットでサングラスと白い高そうなスーツを着こなした妙齢の婦人が摩導通信で何か話しをしていたが、ハルチカを見ると通信を止めて、ソファから立ち上がり彼の近くまで歩いて来て手を差し出しながら、


「こんにちは、ハルチカ君、私はコーリのお祖母ちゃんのベルスティ・ロンディーヌよ、ベルって呼んでね。」


 ベルスティ・ロンディーヌこそ、ロートスグループの総帥、その人ではあるが、ハルチカは目の前の美人のオバサンがそんな凄い人とは知らず、


 素敵なオバサンにハルチカは顔を赤らめながら、「こんにちは、ベルさん、僕の事はコーリから聞いて知っているようですが、僕はコーリの友達のハルチカ・コーデルです、ハルって呼んで下さい。」、とベルの手を握り、


 ベルは嬉そうに、「ありがとう、ハル、」、と言葉を区切りサングラスを片手で外して暫くハルチカを見続け、そしてゆっくりとハルチカの手を離した後、


「でもハルは本当にコーリが言う通りの素敵な男性ね、私はこう見えても人を見る目があるから分かるわ、貴方は最高よ!コーリの御相手が貴方で本当に良かったわ!」


 急に、ベルが自分の事を誉め出してとんでもない事を言うので、ハルチカは慌てて、「そ、そ、そんな事無いですよ、僕なんか・・・」、その後にチンがデカイだけの只の高校生ですよと言いそうになったので、急いで言葉を飲み込み、更にその自慢のチンすら立たなくなった事を思い出して、


「・・・ただの何の取り柄も無い、高校生ですよ。」と暗い声で答えるハルチカであった。


 そんな暗くなったハルチカにベルはウィンクしながらハルに顔をちかづけて、「大丈夫よ、ハル君、内の旦那も一時期役立たずだったけど、あの大社に行ったら復活して、私を三日三晩寝かさなかったくらい、あの大社は凄いのよ、安心しなさい。」


 ハルチカは驚いた、コーリは僕の事お祖母ちゃんにまで言ってるんだ!


 ベルは嬉そうに、「内の旦那ってコーリンの星を研究している学者でしょ、突如、こんな片田舎の高校にコーリを行かせるって言った時は、家族全員が驚いたんだけど、結局、あの人は正しかったのね、うちも公家こうけから大きなお仕事頂けたし、全てが万々歳って、此の事を言うのよね。」


 彼女が何を言っているのか理解できないハルチカではあったが、一つ気になる言葉が、


「ベルさん、コーリンの星って一体何なんですか?」


 ベルスティは、驚いて、「あら、ハル君はコーリンの星を知らないの?」


「はい。」、彼奴あいつ変な話しばっかで自分の事あまり言わないからなぁ、と今は立たないチンを思うハルチカであった。


「ハル君、コーリン・オーウェルの星は全ての星の中心、『太陽サン』よ。」


 ハルチカはびっくりして、「えっ、彼奴あいつの守護星って太陽たいようだったの!」


 ベルは、ちょっと驚いて、「彼奴あいつって、伝説の英雄をハル君は随分、きびしくうのね、彼は全てのスターの希望である太陽たいようのように光輝いていた、と言われている人物よ、太陽サンがピッタリだと思うけど。」


 ハルチカはしまったと思いながら、「そっ、そうですね、ベルさん」と答えながらも、心の中で彼奴あいつの事知ったら、絶対に皆も変態って彼奴あいつの事言うよと自分のチンを情けなく思うハルチカであった。


 その時、コーリとアンリ、ドリスがLDに入って来て、コーリは、「お婆様、もうハルとの自己紹介はお済みですか?」


 ベルは、コーリの方を向いて、「ああちょうど良かった、もう済んだよコーリ、ハルは良い男だ、大切にするんだよコーリ。」


 コーリは嬉そうに、「はい、お婆様。」


("⌒∇⌒")


 ハルチカは何が何だか良く分からないので、コーリに、「どう言う事?」と聞くと、


(;゜∇゜)


 コーリは笑顔で、「今日、ハルがうちに来るとお婆様に伝えたらハルに会いたいと仰有おっしゃられて、わざわざお仕事の途中なのにハルにご挨拶する為に此処に来られたのよ。」


 ハルは驚いて、物好きなお祖母ちゃんだなぁと思いながら、「其は、どうもわざわざ有難う御座います。」、とベルにペコリと御辞儀をする。


 m(_ _)m


 コーリは更に嬉そうに、「ハル聞いて、お婆様はハルさんの第一印象が良かったから、ハルさんと私の交際を許可してくださったのよ。」


 ハルはまた驚いた、金持ちって友達になるだけで許可がいるんだ!


 ハルはまた、「有難う御座います、ベルさん。」と御辞儀をする。


 m(_ _)m


 ベルはホールに向かいながら、「じゃ、私は行くよ、コーリ、それとハル君、君の噂の魔チンが見れなくて残念、今度あったら見せてね。」笑って言った。


「えっ!魔チン?」


(;゜∀゜)


 コーリは慌てて、「お婆様!」


「あっははははは。」


 ベルの笑い声がホールに響、ベルは自家用摩導船でバンチニア町を飛び立っていった。


 金持ちのする事は分からんと理解する事を諦めるハルチカであった。



 その後、三人はオーウェル家所有の摩導船に乗り北方のボルケン共和国へと向かった。


 摩導船のキャビンは広くはないが、内装は豪華で対面型の座席が真ん中の通路を挟んで二組、合計四組が設置されており、後ろにはシャワールームとレストルーム、其にカウンタバーが設置されていた。


 進行方向の先頭、左側の席にハルチカが座り、其の隣にコーリ、ハルチカの正面にアンリ、アンリの隣はドリスが座った。


 摩導船が飛び立って暫くすると、摩導船の専任の美人でミニスカートのメイドさんが、ハルチカ達にバーカウンタで飲み物を作り、腰を曲げて見えそうで見えない姿勢で飲み物をハルチカに渡す姿にどきまぎするハルチカであるが、やはり其でも立たないハルチカだった。


 そんな、美人のメイドさんに立ちもしないくせに、鼻の下を伸ばして喜んでいるハルチカに対して、アンリは、


「ハルチン!あんた、メイドさんがいる摩導船は、金持ちは普通に持っていると思っているでしょ!」


(# ̄З ̄)


 ハルチカは冷たいオレンジジュースを飲みながら、「えっ、違うの?」


(・_・)?


 アンリは呆れながら、「あんたねぇ、不動産屋のあたしんちだってバンチニア町では一応、金持ちだけど、摩導船なんて持てないのよ!つまり、コーリ御嬢様は、其ほど凄いお金持ちなの!だから、あんたねぇ少しはコーリ御嬢様の事あがめなさいよ、あんたの態度、御嬢様に対して失礼よハルチン!」


(# ゜Д゜)


 ハルチカはアンリの注文に、「うーん、でも、金持ちはコーリのお父さんやお母さんでしょ、コーリはコーリ、僕のクラスメートだし、だから友達!・・・友達を崇めるのって可笑しくない?」


(・_・?)


 其のハルチカの返答を聞いた、ドリスが笑い出す、「クスクスクス、ハルチカ君ってとっても可笑しい、これじゃアンリの負けは決定ね、でもハルチカ君んてクラスで大人しかったから、分からなかったけど、全然物事を気にしないそううタイプの人なんだぁ」


(≡^∇^≡)


 アンリも諦めて、「まぁ、ある意味、バカか大物のどっちかって事ね。」


 ┐( ̄ヘ ̄)┌


 確かに、ハルチカは大自然に囲まれたバンチニアの田舎町で大きなチンとともに育った為、心もチンと同様にあまり物事にこだわら無い雄大な性格に育っていた。


 其でも、バカは無いよなぁと思うハルチカではあった、しかしアンリが怖いので言えないハルチカでもあった。


 そんな三人の打ち解けた様子にコーリは安心して、昨夜、ハルチカに食べさせようとして作った、滋養強壮薬入りのチョコレートを取り出し、「ハル、此、わたくしが昨日作りましたのよ、召し上がれ。」と見るからにギドギドした、危なそうなチョコレートを差し出す。


 人の好意には素直に喜ぶハルチカだったから、「有難う、コーリ」、と言いながら、大きい一個をパクリ。


 σ( ̄~ ̄) モグモグ…


「うん、おいしい、アンリもドリスも貰ったら、おいしいよ。」


 二人は顔を見合わせて、こんな危ない物食べたらヤバイ、と思ったから、


 アンリは、「遠慮しとく。」


 ドリスも、「ハルチカさん頑張って食べてね、それ、コーリ御嬢様がハルチカさんのに作ったチョコだから!」


 ハルチカは感動して、「へぇ!そうなんだ、有難うコーリ。」と言いながら、三個を口にいれてモグモグ。


 アンリとドリスは驚いて、アンリがハルチカに、「ハルチン、あんた、其れ、そんなに食べて本当に大丈夫なの?」


(;・∀・)


 ハルチカは不思議そうに、「何が?」


(・_・?)


 アンリは呆れて、コイツの役立たずは筋金入りだと思い、コーリの健気なさを気の毒に思うのと、何でこんなダサい奴が好きになったのか分からないアンリだった。



 そんな和気あいあいの四人は摩導船で一泊して、次の日の早朝、入国審査を受ける為に自家用摩導船はボルケン共和国の南の関所であり、ビザンチン様式で有名なガレスタ空港に寄る。


 空港にはロートスグループが経営する高級ホテルがあり、彼等は其のホテルのレストランで朝食を取った後、再び摩導船に乗って北に向かった。


 山々を越え、飛ぶこと三時間、ようやく、火の山と呼ばれる『星霊山』が見えるようになり、其の姿を見たハルチカは唖然とした。


 !Σ( ̄□ ̄;)


 其の姿は直径一千メータ、標高、五千メータ、の巨大な円柱で、先端は巨大な半円形に盛り上がり、其の先端の割れ目にはマグマの吹き溜まりが出来ていた。


 その姿は巨大なチン


 なんだかなぁ、と思うハルチカであった。


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