第19話 恋する女のプライド

 ソフィアとのデートは俺をワクワクさせた。二人で食事をして、夜の高台へと車を走らせるのが、俺たちの定番になっていた。


 体を重ねるごとにソフィアは俺色に染まっていったんだ。俺は、子猫が可愛くて毎日でも会いたかったぜ。


 そんなある日……

 数学の授業で一緒のローラが不思議そうに俺の首筋を眺めていたぜ。

「ロバート、あなた……」


 俺には意味がわからなかったが、ローラにはピンときたんだろう。いつまでたっても俺のキスマークは消えるどころか、毎日濃くなっていったんだからな。ローラは、俺の頬に手を寄せると、顔を近づけて言ったんだ。


「今夜、会いたいわ。今日から私の親はバケーションでカボ・サン・ルカス(Cabo San Lucas)に行くの。うちに泊まりに来ない? 」


 ローラからふんわりと匂うシャネルの香水・アリュール。

 お前との激しい夜を思い出し、興奮するぜ!


「ローラ、お前……大胆な女だな」


「今夜……楽しみにしているわ。一晩中、楽しみましょうね」


 週末は、バレエのリハーサルがあるので俺と会う時間が取れないローラは、木曜の平日に誘って来たぜ! 親の目を盗んで俺を呼びつけるなんて、ワクワクだぜ! 俺は、喜び勇んでローラの家へ行ったんだ。


 ローラはやっぱり大人の女だった。俺のシャツのボタンを外し、丸裸にすると俺の体を愛撫しはじめた。絶好調の俺は、ローラと二人、ベットの中で一晩中、時間を忘れて……秘めた男女の睦言むつごとを楽しんだぜ!




 翌朝、ローラを車に乗せて一緒に学校へ登校した。学校中の奴らが俺たちに注目してたぜ。当然だ! 俺たちはいつも注目の的だったからな。




 子猫のソフィアは、その日……学校へ来ることはなかった。


 翌日、いつも通りソフィアを迎えに行った。ソフィアは、真っ赤な目をして助手席に座ったんだ。どうしたんだ?!


「昨日は、悪かったな、迎えに行けなくて。おい、ソフィア。お前、何かあったのか? 」


 ソフィアは、首を横にふって「なんでもないの」と小さな声で答えたんだ。誰がソフィァを泣かしたんだ。許せない!! 悪い男に声をかけられたのか?! 俺の女に手を出すなんていい度胸してるじゃないか、俺がぶっ飛ばしてやる!


 ソフィアは、助手席から俺の横顔を真っ赤な目で瞬きせずに見ていた。俺がちらっと見ると、ソフィアの目から大粒の涙が溢れ出てきたぜ。


 おいおい……まさか、原因は俺なのか?


 参ったぜ !!


 俺は今日も王子の笑顔を決め込んでるのに、どうしたんだ。


 バックミラーでちらっと自分の顔を覗き込むと、首筋のキスマークが2つになってたのに気づいたぜ。女は怖いよな。何も言わずにお互いを傷つけ合う術を知ってるらしいぜ。男には考えられない、したたかさだ。


 俺は、ソフィアの手を強く握って言ったんだ。

「ソフィア、心配するな。俺はお前を気に入ってる。俺だけの女でいろよ」


 ソフィアは、子猫のような目でコクンと頷いた。


 俺は、その晩……ソフィアをさそい、いつものように優しく抱いた。俺だけのソフィア。お前の体は、俺にしっとりと馴染んできている。可愛いぜ。子猫は、俺の胸に抱かれ髪を撫でると安心したように微笑んでた。俺の二つのキスマークは、消えることなく一段と濃くなっていったが、構いやしないぜ!! 俺はいつだって絶好調なのさ。

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