父の日〜夢の国『ディズランド』午後〜
ご飯を食べ終わり、お腹を少し休ませてから移動する事にした。
その間に次どこ行きたいか聞いといた方が時間短縮にもなるか。
「陽菜は次どこ行きたいとかあるか?」
「うーん、ピーター 空の箱船ってやつに行きたい!」
「了解。弥生ちゃんもそこでいいかな?」
「はい。大丈夫ですよ!」
「そんじゃ、お腹も落ち着いてきた事だし、行くか」
「うん!」
『ピーター 空の箱船』のアトラクションがある場所に移動している間も、3人で絶え間なく話をしていた。
ほんと、ここまで会話が途切れない事なんてあるのかよ? って思うほど、陽菜と弥生ちゃんは喋っていた。というか、よくそんなに話す内容があるよな。俺なら10分もてばいい方だぞ。
「やっと着いたな!」
「そうだね! でも、また待たないと行けないよ〜」
「遊園地はどこ行っても並ばないといけないもんなんだろ」
「やっぱりそうなのかな?」
「そうだろうな。まぁ夢の国だからっていうのもあるだろうけどな」
「だよね〜」
「まぁ30分くらいだし、待つ時間としては短い方だろ」
「そうだね! 早く乗りたいなぁ〜」
陽菜は楽しみなのか、終始ニヤニヤしていた。
それを隣で見ていた弥生ちゃんは、優しい目でその姿を見ていた。
こうみると、陽菜と弥生ちゃんって正反対な気がする。
俺の勝手なイメージだが、陽菜と仲良くできるって事は陽菜と同じような性格じゃないと無理だと思ってた。
だっていつもあんな下ネタかましてるんだぜ? その話についていけるって事は、よほどそーゆー話が好きなやつじゃないと無理だろ。まぁ学校での陽菜はどんな感じかわからないんだけどな。
前弥生ちゃんが遊びにきた時は、陽菜に似てるものを感じたが、今は全くそれを感じない。むしろ、おとなしく清楚な感じだ。
もしかして、俺がここにいる事で楽しめていないんじゃないだろうか。
本当は陽菜と2人で来たかったんじゃないだろうか。
「弥生ちゃん。もしかして無理してる?」
「えっ?! そんな事ないですよ?」
「いや、本当は陽菜と2人で遊びたかったんじゃないかなって思ってさ」
「そんな事ないですよ? 秋本さんとも遊びたかったですし!」
弥生ちゃんをみると、顔にハテナマークが浮かんでるような顔で俺のことを見ている。
「前遊びにきた時はもっとはしゃいでたように感じたからさ。楽しくないんじゃないかと思って」
「あれは家の中だからあのテンションですけど、外では流石にあんな風にはできませんよ。恥ずかしいですし!」
「そ、そうなんだ。なんか大人しかったからよ。無理してるんじゃないかって思ってさ」
「そんな事ないです! 楽しいですよ?」
「そこは疑問形で返してほしくなかったわ」
「ふふっ、それもそうですね。楽しいですよ!」
「それならよかった」
弥生ちゃんと話をしている間に、俺たちの番になったため係員さんの指示のもと乗り込む。
ピーターの世界を、箱船に乗って見て回るという内容だったが、凄い迫力があり、俺はその光景に目を奪われていた。
まさかここまで凄いとは思わなかった。
「いや〜すごかったね〜!」
「うんうん!ほんとに凄かったよ!」
陽菜と弥生ちゃんも同じ事を思っていたのか、俺が言おうとしていた事を先に言っていた。
それも弥生ちゃんだけに。なんか悪意あるように感じるのは俺だけだろうか。
「パパ〜、この後どこに行くの?」
「ん? 次は弥生ちゃんが行きたいところだろ?」
「そうだったね! 弥生ちゃん、次どこ行く?」
「うーん。バッグサンバー・マウンテンに乗りたいかな!」
「なら、そこに行くか!ジェットコースターだろ?」
「はい! そうですよ!」
「もしかして弥生ちゃん、ジェットコースター好きなの?」
「はい! 結構好きです! 遊園地行くときは必ず乗りますから!」
「そ、そうなんだ。怖くないのか?」
「全然怖くないですよ〜。楽しいです!」
「そ、そうなんだ。すげーな」
俺はどちらかというと苦手なんだが。あれ、安全の為に安全バーとかつけるけど、いつも外れないか怖いんだよな。
たまにカタカタとか音なるときあるけど、あれはなんなんだろうか。怖いわ〜。
「あははっ、そんな凄いってほどの事じゃないですよ。ジェットコースターが好きってだけですから」
「凄いって。俺、ジェットコースター苦手だし」
「ふぅ〜ん。秋本さんはジェットコースターが怖いんだ〜」
弥生ちゃんは俺の腕を人差し指でツンツンしてきた為、弥生ちゃんの顔をみると、ニヤニヤとからかうような、顔をしたいた。だがその顔が可愛い為、なにも言えない。
「大人をからかうんじゃない」
「ごめんなさ〜い」
「わかればよろしい」
「はい!」
アトラクションに向け歩いていると、チュロスが売っている屋台があった。
小腹も空いてきたし、買うか。
「2人とも、少し休憩しないか? チュロスでも食べようぜ」
「いいね〜! 私買ってくる!」
陽菜が買ってくるというので、陽菜にお金を渡す。勿論3人分だ。
「これで3本買ってきてくれ。味はどっちでもいいぞ。弥生ちゃんはどっちにする?」
「えっ?! 私の分は大丈夫ですから!」
「いやいや、そんなわけにもいかんだろ。それに、甘えれるときは甘えておいた方がいいからな? いつか甘えれなくなるときが来るんだからよ」
「……ありがとうございます。それじゃあ、チョコ味で!」
「そーゆー事だがら。陽菜、3本買ってきてくれ。俺らはそこのベンチで座ってるからよ」
「うん! 少し待っててね!」
そういって陽菜はチュロスの屋台に並びにいった。
「おー、秋本じゃないか。秋本も遊園地に来てたのか?」
弥生ちゃんと休んでると、突然声をかけられたと思ったら、野田だった。
ま、まぁ野田だけならなんとかなるだろ。陽菜の事は言ってあるし。
「お、おう。野田か。もしかして野田は1人できてるのか?」
「いや、八城と来てるんだ〜。ほれ、あそこに並んでるぞ」
野田にそう言われ、視線を移すと本当にそこには八城さんがいた。
なんできたんだよ。これがバレたらめんどいし。というか、遊園地で知り合いに会うとかって、普通ありえないだろ。どんな確率引き当てちゃってんだよ俺。
あは、あはは。これは宝くじ当たったら当たるってことか。なら買うしかないなって、こんな事考えてる余裕なんてない。ど、どうしたらいい。
「そういや、秋本の隣にいるのが陽菜ちゃんか?」
「いや、陽菜は八城さんの前に並んでるのがそうだ。んで、俺と休憩してんのは陽菜の友達の弥生ちゃんだ」
「はじめまして、秋本と同じ職場の野田って言います。陽菜ちゃんの事は秋本から聞いてるんで、そこんところは心配しなくて大丈夫」
「は、はぁ。こちらこそよろしくお願いします」
「そ、それより、なんで野田たちがここにいるんだよ」
「思い切って八城をどこかに誘ってみようと思って誘ったら、丁度遊園地行きたいってなったから、来たんだよ。まさか秋本がいるとは思わなかったが」
「やっと自分から誘うことができたのか……ってそんな事は今はどうでもいい。この状況、どうにかしないとまずいだろ」
「もういっそのこと八城にも話したらどうだ?」
「いや、まだバレるわけにはいかない。今バレたら俺が終わっちまう」
「なら、親戚ってことにすればいいだろ。んで、昨日から遊びにきてて、遊園地にきてるってことにすればいいだろ」
「その手があったか! ふー、これで一安心だな」
野田とそんな話をしていると、陽菜が戻ってきて、すぐ後に八城さんがここにきた。
「おまたせ〜って、秋本くん?! どうしてここに?」
「遊びにきたんですよ。親戚の陽菜と、その友達の弥生ちゃんとさ」
「そっかそっか。それにしても、2人とも可愛いね! モデルより可愛いんじゃない?」
「まぁそうですね」
八城さんも十分モデル並みだよ! と心の中でツッコミをいれる。
それにしても八城さんの私服姿初めて見たな。いつものスーツと違って、清楚感があって一段と可愛いな。俺も一緒に出掛けたいわ〜
……はぁ。こんな感情、湧いてきちゃダメだよな。友達ですらないんだし、男友達として遊びに誘うこともできない。
でも、野田とうまくいってるみたいで良かった。遊園地に一緒にくるまでになったんだから、ゴールも近いだろ。
「邪魔しても悪いし、そろそろ俺ら行くわ」
「じゃ、邪魔って、秋本も変なこと言うな〜」
「いやいや、俺たちはもう行くよ。また仕事でな」
そう言って俺は先に歩き始める。それに伴って陽菜と弥生ちゃんが後ろからついて来てくれる。それが本当にありがたかった。
その後の乗り物は、あまり覚えていない。
なんかジェットコースターに何回か乗ったのは覚えているが楽しかったのか、怖かったのかすらわからなかった。それほどまでに野田と八城さんに会ったのが衝撃的だった。
……これじゃダメだよな。最後くらい、楽しくしないと。
「そんじゃ、最後にパレード見て帰るか!」
「……うん!」
「……そうですね!」
パレードを見るために移動し、最前列を確保することができた。
パレードの時間になり、花火が何発も打ち上がり、パレードが始まった。
パレードも終盤になり、盛り上がりも最高潮になる。
「今日は、俺の遊びに付き合ってくれてありがとな。楽しかったよ!」
「私もパパと遊べて楽しかった! 今日はありがとね!」
「私も、秋本さんと遊べて良かったです!楽しかったです!」
「ありがとな」
「今日は父の日だったから、ほんとは私たちで何かしたかったんだけど、何にもできなくてごめんなさい」
そう言って2人とも頭を下げてきた。
「そんな事気にすんな。何かしてあげたいって言う気持ちだけで俺は嬉しいよ! だから頭なんて下げなくていいよ。2人ともありがとな」
俺は陽菜と弥生ちゃんの頭を優しく撫でてあげる。そうすると2人ともとても嬉しそうにしていた。
「こちらこそ!」
「ありがとうございました!」
パレードも最後の花火が上がっていたが、2人の笑顔はその花火よりも美しく、一瞬見惚れていたことは、2人には秘密だ。
「そんじゃ帰るか!」
「そうだね! 早く我が家に帰ろう!」
「私も、家族に心配かけちゃいやだし早く帰りましょう!」
俺たちはこうして夢の国を後にしたのだった。
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