異文化の掟に触れた時、ひとは何を選択すべきか

異世界ファンタジーですが、現代に近い世界観の人間だと思われる学者が古びた日記を発見するところから始まる、どこかの世界で本当にあったかのような物語です。
日記につづられているのは、軍属の調査官である女性がかつてその地に生きていた人々の生活や思想ですが、100年前のこととは思えないほど生き生きとしていて、最初は緻密に練られた世界観にただただ圧倒されるばかりでした。建材について、光の神と闇の神について、婚姻について、圧倒的な情報量で彼らの生きる世界が表現されています。
その、まるでそこに実在したかのような、けれどどこかノスタルジックでファンタジックな世界を、軍靴の足音が踏み荒らす時――文明が押し寄せてきた時、日記の著者は――。
最後は驚きの展開でした。
その文化に生きるひとびとの文化を踏みにじるということはどういうことか――。
世界は優しいばかりでないのですね。文明の衝突です。
いろいろと考えさせられる物語でした。

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