質疑応答

 パネルディスカッションが終了した後は全体での質疑応答が20分ほど、その後に名和さんを除く登壇者3名の各々方へ個別の質問を受け付ける時間が30分程設けられていました。


 個別質問では内閣サイバーセキュリティセンターのフヅキさんに加え、もう一名の方が技術的な疑問にも答えてくれましたので、全員で5名の方が質問の受付を行っていました。

 この最後の一名ですが、名前を明かすことなく、さらにそれなりの立場の方だと伝えられたため、勝手にどこかのIT会社の社長クラスなんだろうなと私は思っています。ここではαさんと仮称させて頂きましょう。


 この質疑応答タイムで、私はαさんから始まり河野さん、加藤さんの3名へ質問する事ができました。

 加藤さんへたどり着いた時には、既に終了時刻の16時50分を余裕で過ぎていたにもかかわらず、質問を粘りすぎていたのでスタッフの方から「そろそろお時間です」と声をかけられてしまいました。本当にすいません。


 さて。そんな私の奮闘によって獲得した質問とその回答をQ&A形式で以下に箇条書きしていきます!



――



*前話と同じように質問に対して回答していた人(発言者)の頭文字を文頭に付けます。

本川さん:本

名和さん:名

加藤さん:加

河野さん:河

フヅキさん:フ

αさん:α



《全体質疑応答》


Q.

 協賛に加わっているサイボウズのコメントに「チームワーク」という言葉がよく出てくるが実際にチームを組む時はあるか、また、組むのならどういった役割分担をしているか?

A:本

 ホワイトに関しては問題が起きる度にバーチャルでチームを組む。そのため、特定のチームというのは存在していないが、問題毎に最適な人選で事に臨める。

名:

 ブラックを相手にするような場合は10~13人程度のチームを組む。チームにはリーダーが1人とファンクションという小チームに3~4人が所属。ファンクションはネット追跡、アーティファクト分析、マルウェア分析などが存在する。業務内容に対してファンクション当たりの人数は変動するが、おおむねこの人数でチームを組む。


Q.

 今後AIが発展していくとAIに人間の仕事を奪われていく懸念が話題にもなっているが、その一方クリエイティブな仕事は奪われないとされている。では、業界の業務で人間にしかできないような仕事は具体的に何があるか?

A:加

 そもそもAIには大したことができないと考えている。AIにできるのは危険性を含むものを抽出する作業であり、実際に判断するのは人間の作業。


Q.

 最近話題の映画『レディ・プレイヤー1』はVR技術を用いたゲーム世界が物語の舞台だが、作中にハッキングなどの描写もある。サイバーセキュリティの観点から見ると、この映画はどんな感想を持つか?

A.

フ:

 危惧される可能性として”洗脳”を挙げられる。しかし、現在VR技術でゲームを作っている企業の話だと、「ソード・アート・オンライン」のナーヴギアみたいに長時間の強制拘束はできない。しかし、将来的には可能になるかもしれない。

名:

 オンラインゲームへのハッキングは今でも活発に行われている。そのため、「レディ・プレイヤー1」のような状況でのハッキングはしっくりくる。


Q.

 AIの発達によって専門性が必要なくなっていくと言われているがどう考えているか?

A:加

 既に無くなってきているので、今とそう変わらないと思っている。


Q.

 サイバーセキュリティにおいてオフェンスとディフェンスの立場以外にも小説で扱えそうな立場は存在するか?

A:本

 リテラシーなどはそれ以外の立場と言えるのではないかと思う。


Q.(名和さんの回答を希望)

 10年前には予想もしていなかったが、現在では当然になっている業界関連の事はあるか?

A:名

 ①グーグル、フェイスブックの躍進、②日本におけるスマホの普及、③日本の衰退


Q.

 私は業界の人間であるが、10~20代の若い人にセキュリティを伝えるというのは非常に難しく思っている。若い世代はどんなものを好むのかなどのヒントはないだろうか?

A:本

 我々ではそれを一概に判断できないから、コンテストとして若者に受けそうな面白い作品を募集している。頑張って欲しい。(笑)



《個別質疑応答》

 私がド素人なもので、技術面に関しては恐らく超基本的な質問を数多くしました。


Q.

次に挙げるもので技術的に可能なものはどれか?

A:α

・AIがAIを管理――可能

 組み立て工場のレーン管理など、人の手を介さずにコンピュータだけで行っているものは現在でも数多くある。将来的に加速するかもしれないが、現状とあまり変わらないのではと予測している。


・AIがAI(ソフトウェア)を作る――可能

 プログラミングで戦うコンテスト(競技?)があるが、そこでは普通。

 それ以外にも割と一般化している。


・サーバーの縮小化――将来的には爪の先くらいになるのでは

 現在はデータセンターとして場所をとっているが、将来的にはそんな設備もなくなるかもしれない。ただし、時間と金銭が大量にかかるので経済的な影響は多分にあると思う。 


・AIの感情――現在は不可だが、将来的には可能だと思う

 人は「曖昧さ」を持っているが、それがAIなどには備わっていない。AIはプログラミングであり、イエスかノーの二択を繰り返す装置。どちらともつかない、矛盾した答えをはじき出す事は現状不可能。そういった意味で人の感情は再現できない。

 しかし、それはあくまで現状であり、今後はこの曖昧さを再現できるような技術が生まれるだろうと予測されているため、将来的には可能な事柄ではあると思う。


・ARとVRの境目――そのうち無くなる

 様々なデバイスで研究されているが、既に一定の成果は出ている。しかし、まだ一般に普及するようなコストには抑えられていない。サーバの縮小化の話と同じで、要はお金と時間の問題である。


・話題のシンギュラリティは本当に来ると思うか――眉唾

 今よりも技術的な進歩は当然しているだろうが、シンギュラリティを境にしていきなり大きな変化が訪れるという訳ではないと考えている。

 例えば、20年後にシンギュラリティがあるとして、今と20年後の生活を比べたら大分違うだろうが、20年後と21年後の一般的生活の差はないだろう。正直、騒がれているほどの影響力はないと思う。


Q.

 コンテストで書籍化すると名言されているのは大賞だけだが、スポンサー賞というのはどういった扱いになるのか?

 例えば、スニーカーの編集を担当に付けて作者を育てたり、スポンサー賞を提供した会社に作品の権利を譲渡し、その会社独自の宣材として活用したり等。

A:河

 現状、そういった事は考えていない。スポンサー賞はコンテスト要項に記載されている通り、各協賛社からの記念品の贈呈のみを考えている。そのため、書籍化は大賞の一作品のみ。

 しかし、コンテストを開催するのはカクヨムという場であるため、優れた作品が複数存在すれば『特別賞』という形で


Q.

 本日の講演では様々な話を聞けたが、総じてミステリーやSFなどの作風を求められている様に感じた。しかし、キービジュアルはどちらかと言うとファンタジーの印象を受ける。これは講演冒頭にてフヅキさんが述べていた「キービジュアルには我々の思いが込められている」という言葉と矛盾しているのではないか?

 委員としてどういったイメージ、思いを抱いているか教えて欲しい。

A:加

 まず始めに断っておくが、これは委員の中でも人によって抱いている思いが多少違うとういう事を理解しておいて欲しい。その上で私の意見を述べるならば、私はコンテストに応募される作品がミステリーやSFなどの作品に偏る事を危惧している。

 講演の内容は私たちの体験や既に作品として存在しているものを基に話している。

そのため、名和氏の話のようにリアルに準拠すると作風も「重いミステリー物」など、投稿作のジャンルに偏りが生じると思った。

 しかし、今回のコンテストでは様々なスタイルの物語に集まって欲しい。

 既に存在している「サイバーセキュリティをネタにした作品」ではなく、『サイバーセキュリティをテーマにした作品』を皆さんに新たに作って欲しい。

 そこで、キービジュアルをああいった絵にし、見た人のイメージをあえて誘導する事で応募作品に幅を持たせたかった。



――



 以上で質疑応答は終了です。


 結構な人数が質問のため各々方の前で列を成していたので、お一人に質問できた時間自体は大した長さではないのですが、こうやって見返してみると結構な量だなと我ながら感心してしまいました。


 最後に記述している加藤さんへの質問ですが、講演の冒頭で挨拶をされたフヅキさんの言葉、「サイバーセキュリティの作品は既に世の中に多くある」にもかかる話でした。

 パネルディスカッションで聞いた現状でも「『ハッカー』や『ハッキング』がメインの現代、もしくは近未来を舞台とした物語が大多数」という通り、加藤さんの懸念は見事的中していたわけです。

 ちなみに、私はキービジュアルを見て『マトリックス』やら『デジモン-僕らのウォーゲーム-』が思い浮かんだ人なので、見事術中にハマっているとも言えます。(笑)


 ハードコアなミステリー作品を応募してもいいし、逆にコメディ調のファンタジー作品でも良い。

 言ってしまえば、そういった作品が投稿されるを生み出したかった、という事なんでしょう。

 この加藤さんの言葉は、是非、本エッセイを読んだコンテスト参加者に届いて欲しいと思っています。


 「サイバーセキュリティ」という言葉に囚われすぎていないか。

 「サイバーセキュリティ」というテーマを扱うために用意した設定になっていないか。


 自分のプロットを見直し、もう一度しっかりと作品に向き合う切っ掛けを私は頂きました。

 その分、応募するのに時間はかかりそうですけどね!


 ちなみに、そういったが出てくれば、河野さんが仰っていた『特別賞』というのも出やすくなるのではないかな、と個人的には考えています。

 だって「同じテーマな上に似たような作品」を複数出すよりかは「同じテーマだけど全然違う作品」を出した方がそれぞれで売れそうじゃありません?


 書籍化するという事は売り上げを出さなければいけない訳ですから、当たり前ですけどを受賞作にするはずです。

 であるならば、大賞と似た様な作品を特別賞にしても意味がないと言いますか、出資側として見るならどうかなあと思ってしまいます。


 加えて、リアルな話題を数多くお話して下さり、アドバイスもどことなくミステリー寄りの名和さんも、「レディ・プレイヤー1」については「サイバーセキュリティとして」だと述べられています。


 私は「レディ・プレイヤー1」を見たので内容を知っていますが、全然知らないよという方は「スティーブン・スピルバーグ監督が作った超娯楽作品」だと聞けば、なんとなくのイメージはできるのではないでしょうか。

 コンテストの応募作に関してどこかで煮詰まってしまっている方は、一度「サイバーセキュリティ」という事から離れて考えてみてもいいかもしれませんね。


 最後に、一応ですが言っておきますと、ミステリーやSFが駄目と言っている訳では決してありません。

 あくまで、それしかジャンルがないという先入観を持っているのではないか、という提言として皆さまには受け止めて頂けたらと思います。



 ――



 説明会に参加したくても出来なかった人。参加できたけど時間が無くて泣く泣く帰るハメになった人。

 そういった方々にも有益な情報をお届けする事ができたでしょうか?


 以上で「サイバーセキュリティ小説コンテスト説明会」に関するレポートを終了したいと思います。

 本エッセイが貴方にとって何かの助けになれば幸いです。



 次回は……「冲方塾」……ですかねえ。


 正直、私は冲方丁氏の作品を読んだ事が無く、コンテストが二次創作という性質を持つ関係から、分析に多大な時間が掛かるような気がしているんですよね。

 言ってしまえば、冲方氏の書評を書ける位にならなければいけない訳でしょう?


 いやいや、だって私、サイバー小説コンに作品応募するつもりなのにまだ一文字も書いていないんですよ?

 無理ですって――フリじゃないですよ? いや、ほんとに。


 ただ、応募受付期間が結構な長さなんで、余裕があったら書こうかな、くらいには考えています。

 そのため、次回の更新日は未定、という事で何卒お許し頂きたく。

 

 また、色々なコンテストがポンポコ開催されるカクヨムですから、個人的にあまり食指の動かない「冲方塾」をすっ飛ばして、他のコンテストについて分析を始めるかもしれません。

 まあ、予想としてはそちらの可能性の方が高いですね。(笑)



 と、いう訳で、予定は未定という事ですが、よろしければ次回もまた本エッセイに立ち寄っていただけると嬉しいです。


 ではでは。

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