第49話 おさわりさんこの人です


 お風呂……それはなんて優雅な響きなのだろう。のぼせないのであれば、毎日堪能するまで浸かっていたいとさえ思えてしまう。

 しかしそんなお風呂には別の楽しみもある。

 一人でゆったりするのはもちろん、友人と入って普段は出来ないような話をしたり、恋人と入ってドキドキタイムなんてこともあるかもしれない。


 さて、ここからが本題なのだがもし目の前に女子小学生と一緒に入浴しているロリコンがいたらどう思うだろうか。

 いや待て落ち着くんだ、とりあえずそのスマホの画面に映し出されている『110』の番号を消して話し合おう。

 とにかくこれを聞いてほしい、そうこれは今から数時間前のことだ……。



 放課後、いつもと同じ場所で窓の外を見つめる二人の……ロリコンがいた。

 一人はロリとどのようにイチャイチャするかを考え、もう一人は……。


 「……はぁ」


 大きなため息をつく、イケメンな親友──星川充。

 本日もう何度目かもわからないため息である。


 「……どうしたんだ?」

 「なぁ拓海さんよ」

 「なんだ充さんよ」

 「俺はロリの柔肌の感触を知ってしまった罪深い男なんだぜ」

 「そうか、それは残念だ。おまわりさんこの変態です」

 「いやいやいや、ちょっと待て」

 「お前には失望したぞ星川充。いくら奈穂ちゃんが可愛いからって幼気なロリに手を出すなんて」

 「出してねーよ!? 俺はまだ童貞ですし、奈穂もまだしょ、処女だから?」


 なんとも悲しい宣告であるが、その涙ぐんだ目から伝わるものは本物だ。

 僕はそっと肩に手を置き頷く、そして手を差し出し硬い握手を交わす。


 「ごめんな充」

 「いいんだ、拓海……」

 「それで何があったんだ?」

 「……俺、奈穂とお風呂に入ったんだ」

 「ほう?」

 「もちろん水着──なんてものは付けずにお互いに真っ裸で」

 「……ほう」

 「そしたらさ、身体を洗いっこしましょうって言われたんだ」

 「なるほどなるほど」

 「もちろん俺も最初は戸惑ったさ、でも目の前にロリの……奈穂の生肌があって……」

 「それで?」

 「洗いっこしたわ」

 「ぶっちゃけどうだったよ?」

 「最高でした。なんであんなにロリって肌が軟らかくてすべすべでもちもちしてるんだろうな」

 「僕は知らないけれどロリだからだろ?」

 「なるほど、ロリだからか……深いな」

 「ああ、実に深い」


 などと話していると、突然背後から聞きなれた声のツッコミが入る。


 「何が深いのよ……」


 僕達は揃ってそちらの方へと視線を向ける。

 振り返る前から誰だかわかってはいたが、いざ振り返ってみるとその人物は呆れたようにため息をついていた。


 「いやロリの裸の話だぞ、深いだろ?」

 「私には全然わからないわ……と、言いたいけれどわかってしまうのが悔しい」

 「わかるって……お前も入ったことあるのか柿本!?」

 「そりゃ私は女ですから。紗々ちゃんともよく遊ぶし紗々ちゃんが泊まりに来たり、逆に私が泊まりに行く事だってあるもん」

 「つ、つまりその時は……」

 「紗々ちゃんの身体を……」

 「ふっふっふっ、そう慌てるでないしばし待たれよ」

 「「……ゴクリ」」


 何やらスマホに色々な写真をいれているらしく、次々にスライドしていく。

 くそぅ、一体そのスマホの中には何枚のイヤラシイ写真があるっていうんだ!

 などと思っているであろう、残念なイケメンの隣で僕は冷ややかな視線をソイツに送る。

 すると柿本が「あった」と一言呟くと、とある写真をこちらに見せる。


 「こ、これはっ!?」

 「柿本お前!」

 「ふふん、私は女ですから♪」


 得意げに提示された写真……それは、恐らくすっぱだカーニバルで寝落ちしていた紗々ちゃんの姿だった!

 恐らくという表現を使ったのは、タオルケットをかけられていたためその真偽は不明だったからだ。

 しかしそんな不確定のなか、僕達は見逃さなかった……。

 普通なら全裸か否かのロリに目がいってしまうが、写真の奥……少し物が散らかっていたがそこには可愛らしいおパンツ様があったのことを!

 こんなわかりやすい証拠があるのだから答えなど決まって──。


 「あ、ちなみにこの時の紗々ちゃんはちゃんと履いてるし着ているからね」

 「「うっす」」


 決まって──などいなかった。

 よく考えればそうだよな、いくらタオルケットがかけられるとはいえ、全裸で寝ているロリの写真を撮るはずないよな。


 「残念だったねっ。あ、でもこの後に私とお風呂に入ったから私は紗々ちゃんとあんなことやこんなことをしたよ♪」

 「ぐぎぎ……」

 「一体ナニをしたというんだ……」

 「そりゃあねぇ? 中々に良い声でないてくれましたよ……」

 「「な、なんだって!?」」


 ※ただくすぐっただけです。それ以上のことは決してしておりませんので悪しからず。


 「いやぁまさか紗々ちゃんの弱点がソコだったとはねー。ソコをつついた時の紗々ちゃんったら本当に可愛い声をあげて……」

 「く、くわしく!」

 「お、おい充さすがに食いつきすぎじゃないか……?」

 「お前は気にならないというのか!?」

 「そんなことはないけど……」

 「紗々ちゃんの弱点を知っていれば、もしかしたらそれが奈穂や愛莉ちゃんにも使えるかもしれないんだ!」

 「……お前は天才か?」

 「うーん、どちらかと言えば天災?」

 「黙らっしゃい! つべこべ言わずに紗々ちゃんの情報をプリーーーーーズ!!!!」

 「ふふふ、なら可愛そうな君達に教えてあげようじゃないか……私が見つけた紗々ちゃんの身体の弱点を!」


 ※何度も言いますが、あくまでもくすぐったりした時の弱点です。決して卑猥な意味ではありません。



 「──なるほど、つまりこの弱点というのはそういう意味だったのか」


 あらかた説明を聞いた充は半ば残念そうにそう呟いた。

 しかし常識的に考えてそうだろうと思っていた僕は別にガッカリはしなかった。


 「しかしこれで拓海だけだな」

 「なにが?」

 「お風呂だよお風呂。お前はまだだろ?」

 「……いや、共に入浴という意味であるなら何回かはしたことあるよ」

 「えっ嘘! いついつ!?」

 「出会って割とすぐの頃にみんなで旅行に行ったんだ温泉旅行。その時だよ」

 「え、そ、それって……」

 「貴様奈穂の全裸も!?」

 「いやいや! 僕が見たのは愛莉だけだよ、そのとき紗々ちゃんも奈穂ちゃんも別のところにいってたからさ」

 「そ、そうなんだ……」

 「まあそれなら……」


 しかしそうか、今にして思えば僕は愛莉と入浴はしたもののそれっきりで止まっている。

 だけど僕達は年齢的にまだというだけで実質結婚しているようなものだ。つまりそれくらいのイチャイチャは許される……ということか。


 「お、拓海その顔は今日ヤるって顔だな」

 「いやいや、流石にすぐにはやらないよ。愛莉の気持ちもあるだろうし……」

 「じゃあ湊君は愛莉ちゃんがオーケーしたらすぐにでもするの?」

 「……まあ、そう、かな?」

 「しかし拓海がこの様子じゃそれがいつになるかもわからないぞ」

 「そうだね」

 「あははははははははははは」


 などと話していた、実際に僕自身このときはそう思っていたのだ。

 ……だが現実は違った。

 いま、まさに、僕は、ロリとお風呂に入ってイチャイチャしようとしている。

 もちろん性的な意味ではない、ただ洗いっこするだけだ。

 僕が充から聞いたように、愛莉もお風呂のことを奈穂ちゃんから聞いたらしく、どうしてもやりたいが故に愛優さんに頼み帰ってきた僕を首トンで気絶させこうなったらしい。

 まあ一言ですませるとどうしてこうなったってやつだ。


 「……先生、まだ、ですか?」

 「あ、愛莉、もうちょっとだけ待ってて」

 「は、はぃ……」


 成り行きでこうなってしまったが、チキンな僕にどうしろというのだ。

 愛莉の小さな背中はプルプルと震え、顔は真っ赤にして恥ずかしそうにもじもじしている。

 この様子からだとまるで僕から愛莉にお願いしたように思えるが、それは違う。

 そもそもだ、僕は帰るなり突然誰かに首トンをされ目が覚めたらここにいた。そして次に愛莉から「私と洗いっこしませんか!」と言われたのだ。

 そんなに嫌ならここから出ればいいだろうと思うかもしれない、もちろんそれを試そうとしたがこんな状況になっている時点でそれは出来ないと悟った。

 なぜならこんなこと出来るのは確実にウチのド変態メイド(姉)が絡んでいるからだ。

 つまりこのお風呂場はよく薄い本にある○○しないと出られない部屋ならぬロリとイチャイチャしないと出られない部屋になっているのだ!

 したがって僕がここから出るには愛莉とイチャイチャし、その映像をどこかから隠しカメラで録画しているド変態メイドに確認されなければならない。

 とはいえここで愛莉と一つになったり、合体したり、○○○したり、ウェーイしたりするのは絶対にしてはいけない。やっていいのは……お触りまでだ!

 僕は意を決してボディーソープを手につける。

 ……これはあくまでも愛莉は肌が弱いから手で洗っているということを聞かされたからこうしているわけであって、僕が生で触りたいというわけではないということだけ伝えておこう。


 「愛莉、行くよ」

 「はい」


 十分に手にボディーソープを行き渡らせ、ついに愛莉の肌に触れる。

 まず手始めに背中に手を当てる。


 「ひゃぅ!?」

 「だ、大丈夫!?」

 「は、はい。すみません少しびっくりしてしまって……」

 「ううん。僕の方こそびっくりさせてごめん!」


 突然声をあげられ思わず手を引っ込めてしまう。

 そのせいで固めた意志が弱まり、鏡から見える愛莉の姿も今までに見たことがないくらい恥ずかしがっていた。


(くそ……このままじゃ……)


 何か良い方法はないか、何度か思考を巡らせた……目の前には裸のロリ、そして僕も全裸、ここから恥ずかしくないようにするにはどうすればいいか。

 そして僕は至った、放課後の出来事……柿本が見せてくれた一枚の写真!


 「愛優さんっ!」

 「はいっ!」

 「タオルを!」

 「用意出来ております!」

 「サンキュー!」

 「ご武運を!」


 呼びかければすぐに出てくるメイドからタオルを受け取る。

 ちなみにこの時に出れば良かったのでは、と思うかもしれないが残念なことにこの時の僕は……考えるのを辞めていた。


 「愛莉、少しごめんね」

 「ふぇ? せ、先生!?」

 「……これでよし」


 まるでひと仕事終えたように額を拭う。

 たかがタオル一枚で何が出来る、そう思っているのかもしれないがタオル一枚あれば隠すことは可能だ。

 だから、僕は、愛莉の、目を隠した!

 愛莉の視界を奪えば愛莉の恥ずかしさも消える、そうすれば僕の恥ずかしさも消える!

 これぞ相乗効果!

 しかしこれではあまりにも不公平なので、


 「愛優さん、僕にも!」

 「承知しました」

 「よし、これで何も見えない!」


 さあここからが本番だ! と、意気込んだのは良いものの、目隠しをされているのは僕と同じ……。

 今この部屋に目隠しをされた全裸の女子小学生と、これからその女子小学生を手で身体を洗う同じく目隠し状態のロリコンがいることになる!

 一見すると犯罪のように見えるが、そもそも僕達は結婚を約束した仲であるため、問題ナッシング! そのうえ目が見えない状態なのでナニが起きても事故なのである!


 「って、んなわけあるかっ!!」


 僕は自分の目を隠していたタオルを床に叩きつける。

 このおかしな状況に思わず発狂しかけていた。


 「せ、先生?」

 「あぁうん、大丈夫だから……」


 ようやく冷静さを取り戻した僕はひとまず背中から丁寧に優しく撫でる。


 「……ふむ」


 触れた場所から伝わる温もり、そして子供特有のもちもちとすべすべが上手い具合にマッチングされた完璧な肌。

 それは今の僕にとっては唯一の安らぎであり癒しでもある。

 背中を終えると次に腕、手、そして足を終える。

 その間、愛莉の口から男の男を刺激するような甘い声が漏れたり漏れなかったりしたけれど、それはそれ気にしたら負けだ。

 そして気がつけば残っているのは前の部分とその他一部のみ……。

 まだギリギリ許されるお腹はまだいいとして、お尻や腰の付近、そして美しくも慎ましやかなチパーイ。

 そこを異性である僕が洗うだけでもかなり問題なのに、今回はそのうえ手で洗うことになる。

 それすなわち逮捕である。

 だがこれは同意の上……つまり限りなく違法に近い合法のような違法。

 しかしあくまでもこれは身体を洗うだけ、いくら愛莉のチパーイに触ろうがなんだろうが揉んだり揉んだりモンダミンしなければ問題ない!

 そして僕は慎重に手をお腹の方へと伸ばす。

 無駄なものが少ない背中などに比べて、お腹というのはそういったものがある。

 肌触りは同じなのだが、柔らかさが明らかに違う。

 それを堪能していればロリの小さなお腹などすぐに洗い終わってしまうだろう。

 一度深呼吸をし、問題の場所へ手を伸ばそうとしたその時だった、


 「あ、あとは自分でやります!」


 目隠しをされていても恥ずかしいことには変わりない、それに耐えきれなくなったであろう愛莉が自分の前を隠しながら頬を赤く染めながら言い放った。

 突然のことに驚きつつも助かったと心底ほっとした。



 「──それじゃ流すよ」

 「はい」


 手でシャワーの温度を調節し、愛莉の体についたボディーソープを落とす。

 今までなんとか極力見ないようにしていたが、流す時ばかりは仕方がないだろう。

 一通り流し終えると、扉の向こう側から声が聞こえる。


 「……まぁ、最初はこんなものでしょう」


 どうやら元凶の許可が降りたようだ。

 これでやっと外に出られる。

 ほっと胸を撫で下ろし、立ち上がろうとした時だった。


 「待ってください!」

 「愛莉?」


 腕を捕まれ阻止される。

 そしてそのまま愛莉はこちらを向き、僕の弱点である上目遣いをする。


 「今度は、私が洗ってもいいですか?」

 「…………お願いします」


 こんなお願い方をされたら断れるだろうか、いや無理だろう。

 こうして僕達のお風呂はまだ続くのであった。


 え、その時に全部を洗わせたか?

 ……愛莉が真実を知るのはまだ早いってことで、はい。

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