第13話 逃げるロリと追うロリコン


 けいれーい! 我ら、ロリコン警察は、紳士的な態度でロリ達を捕まえ、逃げ出さないようにしっかりと見張ることをここに誓います。

 それと、ロリじゃなくても、貧乳なら捕まえちゃおうかなって、思ってます! 末期です、どなたか、いい病院があれば、紹介してくださ〜い。

 平成○○年、変態紳士ロリコン同盟貧乳組代表、湊拓海みなとたくみ




 扉を開けるとそこには銀髪の天使がいた。

 まるで天界の女子更衣室にでも踏み込んでしまったような感覚。

 腰まで伸びている透き通るような銀色の髪、小さめの顔、少し高めの鼻、大きく吸い込まれるような蒼い瞳、ちいさな口元……それは顔だけを見ても誰が見ても口を揃えて「綺麗」と答えるであろう。

 それに加え余計な肉が一切ついておらず、細いけれど健康的な腕や脚、そして腰からお尻にかけての素晴らしいライン。

 透き通るような白い肌、それに加えパッと見で大きいとわかるおっぱい。

 その天使様には白のブラとショーツがその肌やおっぱいを隠すように身につけられて……。

 しかしここで不幸が起きた。

 少女の手には着けているブラとは別のブラが握られており、丁度付け替えるところだったのだろう……手に持っている方ではなく、身につけている方のブラがしゅるしゅるという音を立てて、床に落ちる。

 大きな大きなお胸がたぷんっと効果音が出そうな感じで重力によって下に引っ張られた反動で上下に揺れる。

 大きさとしてはC……いや、Dくらいはあるだろうそのおっぱいは白く綺麗な色の中央部にまだ誰も土足で踏み入れていない円状のピンク色の領域が……。

 


 『…………』


 僕はそのまま、そっと……音を立てずに扉を閉める。

 そこで一旦深呼吸。

 どうやら僕は緊張のせいかおかしくなってしまったようだ。だって銀髪でおっぱい大きくてとても美しい美少女が教室で着替えていて、その上中学生なのに黒色というギャップからくるエロスの極みみたいな下着を着け、ポロリしてそのたわわなおっぱいまで拝めるとか……これはきっと白昼夢なのだ。

 つまり教室の中には何も無かった。

 僕は自分にそう言い聞かせ、「教室には誰もいなかった」と渚さんに伝えるためにきびすを返そうとした。


 「待って待って待って!!」


 が、そうはいかず、そのまま中にいた銀髪ロングの巨乳ちゃんによって再び開かれた。

 とりあえずで下着を着けずに運動着を着たのだろう、二つの大きく膨らんだところのほぼ中心部辺りに突起したものがあるのがわかる。

 銀髪の美少女は顔を赤く染め、身体をぷるぷると震えさせる。


 「み、見ましたか?」

 「……見てないよ」

 「私の純白の下着を……見たんですよね?」

 「そもそも君の下着は白じゃな…………あっ」

 「やっぱり見たんじゃないですか〜っ!!」


 僕はそこで彼女にはめられた事に気が付く。

 この子……相当な策士と見た。

 とかなんとかやっていると、階段の方から「拓海く〜ん」と、僕を呼ぶ渚さんの声が聞こえてくる。


 「ま、まずい」

 「あっ、ちょっと!」

 「いいから、僕は逃げないから少しの間だけ中に隠れてて」


 僕はそれだけ言い残すと、そのまま教室の扉を閉める。

 それと同時に渚さんが肩で息をしながらこちらへと駆け寄る。


 「どうしたんですか渚さん?」

 「はぁ、はぁ……もう、はぁはぁ……開けちゃった?」

 「開けちゃったって……教室の扉ですか?」

 「うん。次は体育だから、女の子達が教室で着替えてるかもしれないって」

 「…………」


 うーん、渚さん正解。

 だけどここでそれを知られるわけにもいかないので、


 「あはは、渚さん心配しすぎですよ。残念ながらここには村井さんどころか誰もいませんでした」

 「誰もいませんでしたねぇ……よくもまぁそんなことをいけしゃあしゃあと」

 「っ!?」

 「あれ? 今、中から声がしなかった?」

 「そ、そんなことはないですよ? 聞き間違いじゃないですか?」

 「聞き間違いなのかなぁ。ま、とりあえず私は更衣室の方へ行ってみるね」

 「わかりました。僕はさっきの部屋で着替えてくるので」

 「うん、じゃあ後でね〜」


 そう言って去っていく渚さんの姿が見えなくなると、僕はそのまま扉を開く。


 「……ふぅ」


 僕はため息混じりに教室の扉を開く。

 そこにはやはりというか、こちらにジト目を向ける少女。

 目が全てを語ってる、私の着替えを見たくせに「よくもまぁ中に誰もいなかった」と言えたなって。

 僕は少女に向けて腰を九十度に折り、


 「本当にすみませんでした! 知らなかったとはいえ……その、着替えを見てしまって……こんなこと言うのは間違ってると思うけどこの事は……」

 「…………」


 重い空気が漂う。

 しかし、僕はそのまま頭を下げ続ける。

 せっかくしおり女子学園に……愛莉と一緒の学園に通えるのに初日でサヨナラなんてしたくない。


 「……はぁ。わかりました、この事は私の胸の中に収めておきます」

 「ありがとうございます──あっ」


 色々ゴタゴタしていたせいで、スマホを落としていたことに気が付かなかったらしく、少女の目の前に僕のスマホが落ちていた。

 少女はそれを拾い上げ、こちらに差し出す。


 「スマホなどの貴重品は大切にしないと、めっ、ですよ」

 「あはは、今後は気を付けるよ」


 そう言って僕がスマホを受け取る。


 「──あっ」


 受け取った時、たまたま電源ボタンを押してしまったらしくスマホが起動してしまう。

 しかも運が悪いことに変態紳士同盟のアプリを開いてしまい、その画面には変態紳士同盟貧乳組リーダー『たくみな』と、表示されてしまう。


 「っ!? どうしてそのアプリを──きゃっ!?」

 「え、あ、ちょ……」


 僕のスマホの画面を見た少女はそのまま僕のスマホを覗き込もうとしてバランスを崩し、そのまま僕を巻き込みながら倒れ込む。


 ──どすんっ、むにゅ。


 頭を床にぶつける鈍い音が廊下に響く。

 そして硬い床にぶつけた後頭部には強い衝撃……しかし、その痛みは前からの柔らかい衝撃を受けた瞬間、全て消え去ってしまう。

 ……のは、いいのだが、ここで別の問題が発生した。


 「むごご、むご、むごーーっ!!」


 その柔らかいものはとても大きく、僕の顔を丸ごと包み込んだ。

 つまり僕は今、息が出来ない状態なのだ!!

 これを僕はつい二日前に経験したばかりなのに、また経験する日が来ようとは…………。

 ただひとことだけ言わせて欲しいことがあるとしたら……めちゃくちゃ柔らかくていい匂いがして、僕もうどうかしちゃいそう!!


 体操着から漂う柔軟剤の香り……やはりお嬢様はいいやつを使っているのか、とてもふわっふわっで包み込んでくれるような香り。

 先ほど事故で見てしまった美しい形のおっぱいはやはり見た目通りの柔らかさを誇り、とりあえずで体操着を直接着たせいで生の感触が、体温が体操着越しに伝わってくるのだ。

 しかし、こう言ったお約束……と言うのに対して、対応力が身についてきたらしく、


 「よっと……君、大丈夫?」


 一旦少女の肩をつかみ、離れさせると同時に僕も起き上がる。

 少女は何が起こったのかまだわからないらしく、目をぐるぐるとさせていたが、正気に戻ると「ご、ごめんなさいっ!」と、言って教室の中へと入っていってしまった。

 もう一度扉を開けようかと思ったが、着替えている可能性もある……僕はそのまま着替えるために特別教室へと戻り、授業を受けるために室内グラウンドへと早足で向かった。



 「あっ、いましたっ! たくみさ〜ん」


 室内グラウンドに着いた僕を見て駆け寄ってくる三つの小さい人影。

 一人はつい二時間くらい前まで一緒にいた、僕の彼女であり一応将来を見据えている朝武ともたけグループの一人娘の朝武愛莉ともたけあいり

 そしてその愛莉と一緒にいる赤毛と茶髪のポニーテール……紗々ちゃんと、天海さんだ。

 普段サイドテールの紗々ちゃんと下ろしている天海さんがポニーテールにしているのは珍しい。

 ……ただ一つ気になることがある。

 いやまぁ気にすること自体がおかしいのはわかっているが、ロリ達の体操着は僕達が使っていた体操着、いわゆるジャージとは違い赤のブルマーなのだ!!

 日本の伝統的な女子の体操着とも言えるブルマー……僕はてっきり伝説の中にのみ存在するものだと思っていたが、実在するなんて…………。

 隠してある布が見えてしまいそうなほど短く、くい込みを直す時いちど引っ張って離すその仕草をロリがするというだけでご飯何杯いけるだろうか。

 そんな男子共通の思いを抱きながら平然とした顔を保ち続ける。


 「合同授業とは聞いていたけど、まさか愛莉のクラスだとは思わなかったよ」

 「私達は知ってましたよ。今日は一緒に体験入学する人とやるって先生が言ってましたので」

 「ボク達ずっと楽しみにしてたんだよっ!」

 「ふふっ、そうですね〜特に愛莉さんなんかは先程までずっとそわそわしてましたから」

 「あ、天海さんっ!!」

 「あらあら、ごめんなさいね」


 顔を真っ赤にして怒る愛莉。

 なんというかやっぱりロリ達が楽しそうにしているのを見るとこちらまで自然と楽しくなるものだ。


 「そう言えば拓海さん、今日の授業の事はもう聞きましたか?」

 「今日の授業? 僕はまだだけど……何か特別なこととかするの?」

 「はい。どうやら拓海さん達がいるので今日はケイドロをするみたいですが」

 「ケイドロか……懐かしいな」


 昔子供の頃みんなでよくやったものだ。

 あの頃はまだマッサージ屋の店長……つまり師匠に会う前だったからまだみんなと同じような普通の子供だったんだよな。

 確か師匠に会って、特訓した後やったことあったけどあの時は…………。

 いや、これを思い出すのは辞めよう。

 まぁどちらにせよ僕は本気を出すのはダメだろうし、思いっきり楽しめばいいか。


 「それで、ですね……実は拓海さん達に鬼……つまり警察役をやって貰えるようにお願いしてきてと先生に頼まれてしまいまして」

 「うん。僕は構わないけど」


 高校生組が警察役、女子小学生と中学生が泥棒役になるのか。

 泥棒役の女子小学生を追いかける警察役の男子高校生……これはリアルの警察が警察役の僕を追いかける形にならないか?

 そんな考えがふと頭をよぎったが、首を降りその考えを打ち消す。


 「幼気な少女を私達みたいなロリコンが追いかけ回すなんて、私達が本物の警察の人に追いかけ回されることになりそうだね」

 「な、渚さんっ!?」

 「やっほ、今日の授業は愛莉ちゃんと一緒なんだね♪」


 急に背後から現れた渚さんにびっくりして少し飛び退く。

 僕と渚さんは愛莉達とは違って、しおり高校の体操着……つまりジャージだから大丈夫。

 と、思っていた時期が私にもありました。


 「それよりも渚さんその格好は!?」

 「あ、これ?」


 そう言ってその場で一回転。

 長い黒髪から香る花の匂い……それはまるでここがグラウンドではなく、お花畑なのかと錯覚してしまうほどだ。

 ちなみにこれは例えであって決して僕の脳内がお花畑というわけではない。

 と、今はそれよりもだ。


 「渚さん一つ聞いてもいいですか?」

 「うん、どうしたの?」

 「どうしてミニスカポリスのコスプレなんでしてるんスか!?」

 「ふふん♪ 今日のためだけに衣装を用意したんだって。ちなみにこれ、本物の警察の人が着ているのと同じらしいよ♪」


 そう言いながらホルダーに入っている拳銃型の水鉄砲を手に取り、いかにもミニスカポリスなポーズをきめる。

 たかだか授業でやるケイドロのためにここまでするなんて……やっぱりお嬢様学校というのは恐ろしいものである。


 「って、僕の分は無いんですか?」

 「うーん、服自体はあるにはあるけど……君までミニスカポリスやりたいって言い出すなんて学園側も予想していないと思うからサイズが合うか……」

 「誰もミニスカポリスがやりたいなんて言ってないですよね!?」

 「え、いまの流れならミニスカポリスでしょ?」

 「違います、違いますから……僕が言ってるのは普通の男性警官のやつですよっ!!」

 「あはは、ごめんごめん」


 笑ってごまかす渚さん。


 「はぁ……まったく」

 「あの〜湊さん、少しいいですか?」

 「うん、どうしたの天海さん」


 と、そこで今までだんまりだった天海さんと、紗々ちゃんが、


 「このお姉ちゃんってお兄ちゃんの恋人なの?」

 「あはは、そんなことないよ」

 「そうですね。私と拓海君は……まぁいわゆる同志ってだけだよ」

 「そ、そうなんですか。これはとんだ失礼を……」

 「いいよいいよ。もう慣れっこだからさ♪ っと、そう言えば自己紹介がまだだったね、私は安曇渚あずみなぎさ、しおり高校……つまり拓海君と同じ高校の生徒会長をやっているんだ♪」

 「ボクは兼元紗々かねもとささ。で、こっちが」

 「天海奈穂あまみなほです。よろしくお願いしますね安曇さん」

 「うん、こっちこそだよ。紗々ちゃん、奈穂ちゃん♪」


 二人と柔らかな握手を交わす。

 その時、体育教師だろう、垢のジャージを着た人が号令をかけた。


 「さ、早く行きましょうか」




 「──以上でルール説明を終わりにします。何か質問のある人はいますか? では、みなさん位置についてください」


 先生からのルール説明を終え、泥棒役である人はバラバラに逃げ、警察役である僕と渚さん……そこに加え村井さんと、先ほどの銀髪美少女の計四人だ。


 「そういえばあの子の名前知らないな……」


 僕は銀髪美少女の方を見て、そう呟く。

 同時に先ほどの光景が脳裏に浮かび、顔が少し熱くなってしまう。


 「おやおや〜拓海君はあの子の事がお気に入りなのかな〜?」


 いたずらっぽい笑みを浮かべ顔を覗き込む渚さん。


 「そんなんじゃないけど……」


 僕は二人から目を逸らす。

 しかし、その脳裏にはあの子の下着姿……そしてたわわなおっぱい様がずっとチラついていた。

 い、いかん、僕はあくまで貧乳組代表……巨乳に揺さぶられては……。

 そう何度も言い聞かすものの、やはり浮かぶのはあのたわわなおっぱい様で……ついでに言うとこの前の村井さんのおっぱいの感触、そして温かく包んでくれた愛莉のママさんのおっぱいまで浮かんできて…………僕もうどうにかなっちゃいそうですっ!!


 「おーい、たーくーみーくーん」

 「はうわっ!?」

 「大丈夫? 具合とか悪いなら休んだ方が」

 「いや、大丈夫です……僕は決して巨乳には負けませんので」

 「ん、巨乳?」

 「お気になさらず」





 こうして泥棒役が散り散りになっている時、警察役は檻の前に集まり作戦会議をしていた。


 「っと、作戦会議も大切だけど、その前にこの子の紹介だけ済ませておくね」


 そう言って村井さんは銀髪の少女を前に出す。


 「初めまして。私は平丘紬ひらおかつむぎと言います。中等部の生徒会……天華会てんかかいの会長をしております、以後お見知りおきを」

 「天華会……? あ、ううん。私は安曇渚、しおり高校の生徒会長なんだ。よろしくね平丘さん♪」

 「それで僕が──」

 「あ、貴方は大丈夫ですよ。変態さん」

 「は、い?」

 「変態さん?」


 二人の冷ややかな視線が一斉にこちらへと向けられる。

 まるで「今からお前を本物の牢屋に入れてやろうか?」とでも言いそう……と、そこまではいかずとも「もう手を出していたのか変態」くらいには思われていそう。


 「ま、まぁとにかくだ。みんなで力を合わせて勝とうね!」

 『おー!』


 こうして、ケイドロが始まった!!



 まずはなりふり構わず追いかける!


 「ターゲットは……あそこだ!」


 僕は周囲を軽く見回してからどのロリをゆうか……捕まえるかを、決める。

 もちろん追う時は手を抜く。

 しかし、僕の心はバーニング!!


 「よしっ、行くぞ!」


 僕はその掛け声と共に、ロックオンしたロリ達の元へ一気に距離を詰める。

 「きゃー!」という声を上げながら必死で逃げ回るロリ達。

 いくらこのグラウンドが整備されてるとはいえ、転んでしまって怪我なんかさせたら大変だ。

 なので僕はなるべく転ばないように、そして傍から見ても通報されないようにあくまで夏の夕暮れ砂浜を彼女と戯れで走る感覚で追いかける。

 しかし現実は無情だ……追いかける僕はロリ達に合わせて走っているせいで、幼気な少女をゆっくり追い詰めてから捕まえる変質者となり、傍から見れば間違いなく事案発生、通報案件、おまわりさんこの人です、警部が動き出す、今日のお夕飯どうしようかな、この子達のの汗をペットボトルに詰めたらいくらで売れるだろう……などなどそんなことを思ってしまうだろう。


 こころなしか先生方や、牢屋で待機している味方、そして一緒に追いかけているはずの人さえ僕に対して凍てつくような視線を送っていた。

 あの目は間違いなく「授業が終わったらわかってるよなこのロリコンめ」という目だ間違いない。


 「って、あれ」


 そこで僕は嫌な予感を感じる。

 今目の前を走っているロリ達、そしてその少し前にいるのは天海さん達なのだが、こちらは疲れているのかその場で膝に手を付きこちらに気づいていないようだった。

 追う側としてはありがたい話なのだが、前を走っているロリ達も必死だ。

 このまま前にいる天海さんに気付かずにぶつかってしまう可能性もある。

 いや、まさかな……という考えともしかしたらの二つの考えが頭の中をぐるぐる回る。

 そして時は満ちる。

 前のロリ達が天海さんの横を通り過ぎる……その時だった!


 「っ!!」


 僕は頭で理解するよりも早く身体が動いていた。

 予想的中、走っている子達にぶつかり、そのまま天海さんは前の方へと倒れ込む。

 走っている子もぶつかったことにより、驚きのあまりその場で固まってしまって動けない様子。


 ……だけど問題は無い。

 僕はそのまま天海さんの身体へ手を伸ばし、倒れ込みかけた身体を抱き抱える。


 「天海さん、大丈夫?」

 「ふぇ……み、湊さん?」


 微かな重みと柔らかな感触と共に気の抜けた返事が返ってくる。

 今の出来事を見ていたのは恐らく天海さんと愛莉達、そして先ほどのロリ達だけ……か。

 人数が少ないなら丁度いいかな。

 それに天海さんもどうやら怪我とかもないみたいだし。


 「無事でよかった愛莉」

 「は、はい……。それで、ですね湊さん」

 「うん?」

 「その、助けてくださったことに関しては本当に感謝していますが……湊さんのて、手が」

 「手?」


 気がつけば赤面して、声が震える天海さんに言われ、僕は自分の伸ばした手の方へと視線を移す。

 腕からどんどんと手のひらの方へと視線を送ると、最後には何故か天海さんのAカップちっぱいへ…………って、ちっぱい!!?

 そう、いま僕の手は天海さんの慎ましやかながらふにふにとして、柔らかいちっぱいの所にあったのだ!


 「──っ!!? ご、ごごごごめんっ!」


 僕はすぐさま手を退ける。

 しかし手には天海さんのちっぱいの……いや、犯罪の感触!

 愛莉とはまた違う、微乳から貧乳へとステップアップしているちっぱい……それは自分の知っている言葉だけでは言い表せないほどの感動と衝撃でした。

 その時、拓海は罪の意識と共にこんなことを考えていました。

 あぁなんて柔らかいんだ……ただ柔らかいだけではなくしっかりと張りもあり、何よりもサイズ的には手のひらに収まるものの、与えてくれた感動は両手を使ってもとてもじゃないが足りない。

 ありがとうちっぱい、ありがとう天海さん、そして何よりも天海さんを産んでくれた親御さんに感謝を……。



 …………その様子を見ていた二人の少女がいた。


 「今の……見ましたか?」

 「は、はい。あの距離から転んでしまう前に助け出してしまうなんて……」


 人も捕まってきて、牢屋番をすることになった村井華と平丘紬は信じられないものを見たような顔になっていた。

 それもそのはずだ、天海奈穂あまみなほと拓海の距離は離れすぎてはいないものの、普通ならば転びそうになったのを助けるなんて出来ないほどよ距離だったのだ。

 遠くから見れば足が速い……程度しか思わないだろうが、二人は生徒会長を務めるだけあって相当頭が切れる人だった。

 それゆえにあの場で起きたおかしなことを流すことは出来なかった。

 ……のだが、


 「もしかしたら……あの人がいれば」

 「……関係ない人を巻き込むのは気が引けますが、なんとかなりそうですね」


 二人は怪しげな笑みを浮かべた。




 その後、滞りなくケイドロは順調に進んだ。

 やはり追い掛けられる側は必死になってしまうため、転びそうになる人があの後も出てきて、その度に拓海は助けるのだが……助けたついでに貧乳タッチや、自分がバランスを崩し助けたロリが自分の腰の上に馬乗りになったり、しまいにはどうしてそうなったのかわからないけれどとにかく仰け反るように転びそうになった女の子をお姫様抱っこで助け、その拍子にその子の可愛らしいお尻を揉んでしまうなど様々なハプニングが。


 しかしそれは助けた時のハプニングであって違う時にはもっと沢山のハプニングが存在した。


 村井さんと同じクラス……つまり、中学三年生の年齢にしてはとても小さい女の子を壁に追い詰める一人の変態紳士ロリコンがいた。


 「ふっふっふっ……追い詰めちゃったよ子猫ちゃん」

 「今どき子猫ちゃんは古いと思うんだけど……あはは。それで、その可愛い子猫ちゃんにめんじて逃がしてくれたりとかは」

 「もちろん、しませんねぇ!」

 「ですよねー!」

 「だから早めに降参することをおすすめするよ♪」

 「あはは……そうやって急に優しくそう言われたらここの女の子はみんなコロッといっちゃいそうですね」


 苦笑いを浮かべる愛莉達、小学生組と対して身長に差はないものの、見た目にしては大きなお胸の存在感が増し、自然とそこに視線が引き付けられてしまうような、金髪の少女(幼女)。


 「君は……違うのかい子猫ちゃん?」

 「はい。私は、猫みたいに気まぐれなので……スキありですっ!!」


 そう言って子猫ちゃんは見事なサイドステップで僕の横を通り過ぎる!! ……はずだった。


 「逃がすかっ!」

 「えっ、きゃあっ!!?」


 僕は自慢の反射神経を活かし、そのまま子猫ちゃんの逃げる方へと手を伸ばす!!


 ──むにゅん。

 その瞬間、拓海の手のひらにとても柔らかい感触が広がった。

 これはつい最近感じたサイズよりは大分慎ましやかながらも、A……いや、C寄りのBはあるだろうそのおっぱいとちっぱいの狭間にいる……例えるならおちっぱい! ……はおかしいから普通におっぱいでいいとしよう。

 何はともあれ、この至福のひとときを与えてくれたこの子猫ちゃんには感謝と謝罪を…………って、


 「えっと、子猫……ちゃん?」

 「は、はいぃ……」

 「どうして……僕の手を掴んでいるのかにゃ?」

 「そ、それは……こうすることで、解消が……出来、んっ……そうだから……ですよぉ……ああんっ!」

 「えーっと、解消って……何を?」

 「……情です」

 「えっ?」

 「発情ですよぅ……わた、しっ! 男の方に胸とかを、触られると発情してしまう体質らしいんです……」

 「…………」


 僕はこの時、とんでもない地雷を踏んでしまったと確信した。

 目の前で胸の上に手を置いている僕の腕をまるでここから動かしてはダメと言わんばかりにがっちり腕を掴む子猫ちゃん。

 この子は〜あれだ、きっと男性が触れてしまってはいけない類の女の子だ。

 しかし、時すでに遅し……僕の腕はこの子の解消……つまり自慰行為のために使われてしまっている。

 あぁ、やめて、そのお胸様を僕の腕に擦り付けないで……と、突起が……色々と分かりたくないことまでわかっちゃうから!!

 やめれえええええええええっ!!!!


 僕は心の中で叫んだ。



 それから無事に解放された僕は、その後順調にロリ達を捕まえ、残り時間もわずかで残すところは愛莉と紗々ちゃんだけになっていた。

 しかしそれももう終わり……二人共壁を背に徐々に距離を詰める僕と睨み合う形になっていた。


 「もう逃げられないよ可愛い泥棒さん♪」


 僕は指でピストルの形を作り、バッキューンとピストルを撃つ仕草をする。


 「可愛い泥棒さんだからこそ逃がしてくれないかなお兄ちゃん」

 「ダメです。可愛くても泥棒さんは泥棒さんだからお兄さんがしっかりと捕まえちゃうよ」

 「……兼元さん」

 「うん、わかった愛莉」

 「?」

 「さん……に……いち……」

 「「いまっ!!」」


 愛莉と紗々ちゃんは目配せをしたかと思うと、掛け声と共に僕の両脇をくぐり抜ける!!

 が、


 「紗々ちゃん捕まえた!!」

 「ううっ!」


 僕の自慢の反射神経により、紗々ちゃんは呆気なく捕まった。

 愛莉は紗々ちゃんより足が遅かったがためにギリギリ捕まるのは逃れられたのだが…………


 「さ〜て、残りは愛莉だけだね」

 「そうですね……流石にこれは少しばかり諦めたくなります」

 「ふふん、それならもう逮捕しちゃってもいいかな?」


 僕は足を前にゆっくりと進める、しかし注意は正面ではなく左右へと向ける。


 「愛莉さん頑張ってー!」

 「朝武ともたけさん逃げてー!!」

 「愛莉ちゃん、拓海君になんか捕まらないでよ!」


 牢屋の方から様々な人が愛莉を応援している。

 ……なんか一名味方だったはずの人が寝返ってる気もするけど。


 「仕方ありません、これはあまり使いたくなかったのですが」

 「ん、まだ何かあるのかな?」


 僕は全神経を愛莉の注意へと向ける。

 正直ちょっと踏み込めば間違いなく捕まえられるが、愛莉の作戦が見たいがためだけに少しずつ前進。


 「拓海さん……」

 「うん?」

 「いえ、お兄ちゃん……私の大好きなお兄ちゃんは私のこと……見逃してくれるよね? もし、見逃してくれたら……後でご褒美あげちゃいますよ。例えば、キ、キス……とか」

 「…………」


 頬を桃色に染めて、大きな瞳で上目遣い……少しいじらしくしている姿に僕は────

 吐血寸前だった。


 こらえろ、こらえるんだ僕よ! ここで吐血なんてしてしまったら間違いなく逃がしてしまう……それだけは回避したい。

 し、しかし……。


 僕は危険だと察知して逸らしていた意識を愛莉の方へと向ける。


 「お兄ちゃん……お願い♪」


 こ、今度は満面の笑みで責めてきただとぅ!!?

 流石は彼女と言ったところか、僕の萌え萌えポイントを的確についてきている!

 こんなことされたらうっかり逃がしてしまいそうになるじゃないかっ!!

 僕が心の中の自分と戦っていると、突然牢屋の方から声があがる。


 「愛莉、今だよ!」

 「はいっ!」

 「しまっ──」


 その声によって、迷いが吹っ切れたのはいいのだが、愛莉は既に僕の横を通り過ぎようとしていた。

 僕は逃がすものかと、華麗なステップで愛莉の前へ!!


 「た、拓海さんっ!?」

 「愛莉、捕まえた──?」


 ──ずさぁぁ!!

 滑り込む音がグラウンドに響く。

 いきなりすぎて一瞬何が起こったのかわからなかったが、恐らく無理に愛莉の前に出たせいで愛莉を受け止められずにそのまま倒れ込んだ……といったところか。

 それにしても滑り込んだ時に起こった砂埃のせいで、目が開けられない。

 愛莉は大丈夫か、と思ったが僕の身体の上に少しばかりの重さを感じるからきっと僕がクッションになっているはずだから大丈夫だろう。

 ただ一つ気になるのは……さっきから家で使っている石鹸の良い香り、さっきから息が当たっているのか定期的に訪れる風、そして口元辺りに感じる柔らかくて温かい感触。

 僕はこれに似た事を何回か体験したことがある……その経験に基づくのならこれはキスだ間違いない。

 …………キ、キス!?


 「っ!!?」


 僕は目を大きく開く。

 すると本当に目と鼻の先……というか既に一部分接触している僕の彼女、愛莉の顔があった。

 最近は色々忙しくて中々出来ていなかったキス……まさかこのタイミングですることになるとは思ってもみなかったが、やはりキスはいいものだ。

 ただ唇を重ねるだけのはずなのに、重ねたところから身体全身に熱が広がっていくみたいだ。


 「ん、んん……」


 と、そこで愛莉も目を開く。

 愛莉は僕と同じように何が起こったのかわかっていなかったようだが、すぐに今の状態を理解すると、普段からは考えられないスピードで僕から離れる。

 キス自体もう馴れっこなのでそれに対しての恥ずかしさではなく、みんな見てる中してしまったということに対しての恥ずかしさでお互い顔が耳まで真っ赤になる。

 牢屋の方からも「え、今……キスしましたか?」とか色々と聞こえてくる。


 「拓海さん拓海さん」

 「ん?」

 「その、続きは……帰ってからお願いしますね」


 顔を赤くしながらも、精一杯の笑顔を浮かべる愛莉に、カワイイを見過ぎたせいでキャパオーバーした僕は無言は頷くことしか出来なかった。

 全くこの可愛い泥棒さんはとんでもないものを盗んでいったな……。

 え、それが何かって?

 ……僕の心です。





 「えー、色々ありましたが、この勝負、警察側の勝利です」

 「よしっ!」

 「やったね♪」


 こうして終了時刻ギリギリになったが、無事に全員捕まえ僕達が勝利した。


 その後、キスに関しての質問が耐えなかったがそれはそれで楽しかったということで…………。

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