第15話 腐敗する言葉たち

吐き出された言葉が

感情に縛られて降り積もり

そいつがつぶやきの大渋滞の原因らしい

もういっそ口を閉ざせば楽になるのだろうか

けれど沈黙は沈黙で金になるらしく

世間では黙秘や秘匿が流行り

どいつもこいつも黙り込み

言葉を噛み殺している


言葉が亡くなりそうだ

言葉が絶滅しそうだ


したたかに、しなやかに、しとやかな

言葉にならない言葉の群れたちをみた

あの感動をどこに置いてきたのだろうか


言葉の渋滞のなかで見えるのは

僕か或いは誰かの言葉の呟きで

苛々したりへらへら笑ったりと

見苦しいことこの上ない


言葉が無くなりそうだ

言葉が腐敗していく


SNSからもつぶやくゾンビたちが溢れ返り

世界はそんなもので侵食され

言の葉のゾンビは増殖していく

僕らは享楽的に滅びを突き進む


腐敗と感情に縛られた言葉たち


あゝ、僕はその言の葉のゾンビを

切り倒し、薙ぎ払い、叩きつけ


生きた言葉を

活きている言葉を

探しはじめたのだ


そうした沈黙と思索と熟慮が

深く深く自分を傷つけるとしても

僕らは豊穣の楽園をその身の内に

宿さねばならない


したたかに、しなやかに、しとやかな

言葉にならない言葉の群れが生きる

肥沃な大地

そんな今を生き明日を描くために

前のめりに倒れるのも

悪くはないのだろうか


そのとき気づくだろう

言の葉の死骸が腐敗し

地に還り

腐葉土となり

小さな言葉が

萌芽していることに

詩の芽が

天から注がれる

ひかりを浴びて

ひかりを放つ


地のあちこちに

ひかりが咲き

うっとりと咲き

しっとりと咲き

僕はそれを抱き

ただ震え

生きている

活きている


そうして渋滞の解消された道を

ほんのいっとき快適に走るのだ


ラジオから流れる

見知らぬ人が歌う讃美歌が

風を伝い

言葉の群れたちの

飛翔を助け

今こそ翔けと

唱和するのだ

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